マルサネ Marsannay
Domaine Jean Fournier
ドメーヌ ジャン・フルニエ
ドメーヌ ジャン・フルニエ

ローラン・フルニエさん。マルサネを牽引する生産者のひとりだ

マルサネを物語るアリゴテ

フルニエ家はマルサネでももっとも古いワイン生産者一家だ。2003年からドメーヌを引き継いでいるローランさんに何代目? と質問したら「フランス革命前の資料は燃えちゃったからなぁ」との答え。ずっとこの地でやっている、とおもってよさそうだ。

「30年前はグラン・クリュやプルミエ・クリュの連中から見下されたものです。でも素晴らしい土地です。たとえばクロ・デュ・ロワというクリマ。コンブランシアンという水はけがとてもいい石灰質の土壌の小さな区画です。ブルゴーニュ大公の畑でもあった伝統的な土地を、祖父は1930年代から注目し、荒れた土地を耕し、ブドウの樹を植えました。いまや、買いたくても買う余地もないほどに人気のリュー・ディです」

今回は、このマルサネのクロ・デュ・ロワのピノ・ノワールとシャルドネを試飲させてもらったけれど、ピノ・ノワールは、フルーティーさのなかに、スモークとかコーヒーのようなニュアンスがある。なんとも独特。これって樽ですか? と質問すると、ローランさんはしたり顔。

「みなさんそういうのですが、それが、この土地の味なのです。2016年ヴィンテージは確かに25%新樽を使っているのですが、樽を使わない年でも感じられる特徴ですよ」

ドメーヌ ジャン・フルニエの外観
ドメーヌ ジャン・フルニエの醸造所

シンプルなドメーヌの外観と、醸造所

そして、このおなじマルサネのクロ・デュ・ロワのシャルドネは、かなり感動した。さわやかでみずみずしく澄み切っている。皮に由来するとおもわれるほのかな苦みもまた食欲を刺激する。

「そうですか? こちらはまだもうちょっと熟成させても美味しいかとおもいます。例えるなら、エッフェル塔。骨組みは美しいのですが、肉がついていないようなイメージです」

筆者、鉄塔好きでした。造り方は、破砕し、低温で清澄(デブルバージュ)したあと樽発酵させる。厳密な温度管理をするほか、樽による酸化の効果を得ながら、樽香はつけないように、わざわざオーストラリアのオーク材を使うという。

「いっぽう、マルサネのロンジェロワという畑は、土壌にケイ素や鉄分を含み、南向きの日照に恵まれた場所。シャルドネはふくよかでクリーミーなイメージです」

筆者はちょっとはちみつのようなニュアンスも感じた。

このロンジェロワというクリマのピノ・ノワールは、リッチで力強く、桑の実やプルーンの香りがする。

「このクロ・デュ・ロワ、ロンジェロワ、そして、エ・シェゾという我々の持つ畑が、今後、プルミエ・クリュとなる見込みです」

マルサネのもつ潜在能力は歴史が証明している。これを引き出すのは、人の力だ。祖父の代から受け継いだ真面目なワイン造りの姿勢、優れた畑と優れたブドウ樹がフルニエ家にはある。そこに、ローランさんの父親のジャンさん、そしていまローランさんが、現代の知見を加えて、より前へ前へと推し進めている。

「本当は、ブルゴーニュ・アリゴテももっと試してもらいたいとおもっていたんです。マルサネがスイスと縁があるおかげで、私はスイスで最高のワインの教育を受けましたが、スイスのシャスラがテロワールを反映する品種であるように、ブルゴーニュではアリゴテが、テロワールを映し出すと私はおもっているんです」

今回は、シャンフォレというリュー・ディのブルゴーニュ・アリゴテだけしか試す時間がなかったけれど、ピンとした酸、はちみつのような甘い香り、心地よいすっぱさと塩気のある後味。たしかに他所のアリゴテとはちがうキャラクターだった。

「10年、15 年と熟成させると、表層的な特徴は弱まります。そのとき、雄弁にマルサネのテロワールを物語るとおもいます」

その頃は、ローランさんの息子が、きっとマルサネの名声をさらに高めていることだろう。

ドメーヌ ジャン・フルニエのワインを、その土壌のサンプルとともに、以下、紹介します

ドメーヌ ジャン・フルニエ ヴィエイユ・ヴィーニュ

ル・シャピートル ヴィエイユ・ヴィーニュ
畑の土壌は魚卵石灰岩

ドメーヌ ジャン・フルニエ クロ・デュ・ロワ

マルサネ クロ・デュ・ロワ
土壌はコンブロンシアン

ドメーヌ ジャン・フルニエ レ・ロンジェロワ

マルサネ レ・ロンジェロワ
畑の土壌は柔らかい石灰岩。シリカ、ケイ素、鉄分を含む

ドメーヌ ジャン・フルニエ エ・シェゾー

マルサネ エ・シェゾー
土壌はいわゆる牡蠣殻石灰

ドメーヌ ジャン・フルニエの土壌のサンプル

ワイナリーでは、さまざまな土壌のサンプルをカンター横に展示

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
(『猫』の次は『三四郎』より抜粋。あ、中身とは関係ありませんでした……) 

三四郎は鞄と傘を片手に持ったまま、あいた手で例の古帽子を取って、ただ一言、
「さよなら」と言った。女はその顔をじっとながめていた、が、やがておちついた調子で、
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って、にやりと笑った。