サン・トーバン Saint-Aubin
Domaine Marc COLIN et fils
ドメーヌ マルク・コラン エ フィス
https://www.marc-colin.com/
ドメーヌ マルク・コラン エ フィスのダミアン・コランさん

ダミアン・コランさん

テロワールは清涼感だ

ドメーヌ マルク・コラン エ フィスは、ブルゴーニュを代表する白ワイン産地、モンラッシェのシャサーニュ・モンラッシェにも畑をもつ。

とはいえ、ワイナリーはサン・トーバンという村にあり、サン・トーバンに自信も誇りも持つドメーヌだ。サン・トーバンは南にシャサーニュ・モンラッシェ、北にピュリニー・モンラッシェが隣接し、サン・トーバン自体もプルミエ・クリュとして格付けされた20のクリマを持つ。そのわりにはモンラッシェほど知られていないのは、歴史も関係しているのかもしれない。

いまでこそシャルドネの栽培量が多くて、その評価も高いサン・トーバンだけれど、1985年くらいまではむしろピノ・ノワールで知られている産地だった。

サン・トーバンは、村を取り囲むように丘があり、斜面にブドウ畑が広がる

「全体で見れば、サン・トーバンのシャルドネは歴史が浅く、樹も若い。だから、今後まだ、伸びていくとおもいます」

というのが1999年から父のドメーヌを引き継いでいる、ダミアン・コランさん。4人姉弟の末っ子だ。姉は同じドメーヌでデスクワークをおもに担当している。兄二人はそれぞれ自分のドメーヌをこの近隣でやっているそうだ。

マルク・コラン エ フィスの今回試飲したワインは、いずれもプルミエ・クリュ。2015年はすでに売り切れ、2016年は生産量そのものが少なかったことから在庫なし。いまだボトリング前の2017年ヴィンテージでの試飲となったのだけれど、プルミエ・クリュは伊達であろうはずもなく、話は個々のワインの評価とはちょっと違う方向に進んだ。

マルク・コラン エ フィスの醸造所

醸造所は丘を下った村の中にある

domaine marc colin et fils boutail

2017 年ヴィンテージはボトリング前だったので、 写真はラベルが2016 年

マルク・コランの試飲ボトル

試飲はボトリング前の2017 年ヴィンテージにて

サン・トーバンの土壌は、基本的には石灰が多い。サン・トーバンの村は丘に囲まれた浅いすり鉢の底にあるような格好になるのだけれど、ピュリニー・モンラッシェと隣接する丘の上から、村の方に下ってゆくと粘土質が増えてゆく。そこから再び斜面をあがると、また石灰と粘土質の入り混じった土壌となる。

サン・トーバンの土壌 丘の上

モンラッシェに近い丘の上にいくほど石灰質が増え

サン・トーバンの土壌 丘の下

ワイナリーに近い、丘の下にゆくと徐々に粘土質が増える

サン・トーバンの斜面は白っぽい。それは石灰の色だ。シャサーニュ・モンラッシェ側、つまり南の方にゆくと粘土質が増え、石灰はピンク色っぽくなる。ワインへの影響では、石灰がミネラル感、フレッシュさ を、粘土がフローラルさとエレガンスを与える、と、理解しておいて良いようだ。表層的な理解ではあるけれど。

畑は父親の代で6ha。現在は12ha。ダミアンさんの話からすると、家族一人につき6haくらいがちょうどよいようで、「父は子供が4人いたから、6haでは足りないと、畑を少し買い足したのですが、結局、いまは姉と僕とで継いでいて、姉には子供がいなくて僕には2人。だから、子供が引き継ぐなら、このくらいのサイズのままなのがちょうどいいですね」とのこと。

ワインは畑ごとにラインナップしているものの、醸造においては、除梗も破砕もせず、しっかりと搾汁して、12カ月樽熟成、6カ月タンク熟成、バトナージュはしない、という造り方は共通している。SO2添加量もごくわずか。変数は新樽の比率だけだ。

「バトナージュをしないのは、ワインに厚みでなく清涼感を求めるからです。それがブルゴーニュのワインだと僕はおもいます。あるいは、テロワールを表すのは清涼感だといってもいいかもしれない」

しかし、そのフレッシュさの重要な要素となるであろう、酸味はしっかりとしているけれど、決して攻撃的なものではない。

「僕の言う清涼感は単に酸味が強いとかいったものではありません。酸味を抑え、厚みがあるワインが造りたいから、バトナージュをして、樽香もつけるとか、逆に酸味を強くしたいから、早摘みするとかいうのは単純な話で、そういう操作を加えるのであれば、現在の知見をもって、どのワインでも似たようなものにすることもできるでしょう。ブルゴーニュのワインとしては、そういうワイン造りはちがう、とおもいます。タイミングを見極めて、酸と糖のもっともバランスのよいところでブドウを収穫し、なるべく、人為的な操作は加えないで醸造する。こうして表現されるのが、清涼感であり、ワインごとのヴィンテージの差、テロワールの表現だと考えます」

ゆえに収穫のタイミングというのはとても重要なものになる。素材の味をストレートに表現する。現代フランス料理のようなスタイルは、ダミアンさんのスタイルなのだろうか。

「いえ。父の時代のワインのスタイルと大きなちがいはありません。これが、うちのワイン、ブルゴーニュのワインです。ただ、父の時代は気候的にもっとずっと冷涼で、いまほどブドウは熟さなかったので、酸味ではなく、熟度の見極め、糖度の見極めがテロワールの表現として重要でした。いまは温暖化していて、熟度、糖度はむしろ高くなりやすい。酸度をどう残してゆくかのほうが問題です」

2017年は、ダミアンさんにとっては、酸度と熟度のバランスに秀でた、素晴らしいヴィンテージだった。2018年は評価するにはまだ早いとしながらも、期待 値は高い。

将来的には、ダミアン・コラン エ フィスとドメーヌの名前も変えて、次世代にも、このスタイルを残してゆきたいですか?と質問してみると

「僕は、父の名を冠したこのドメーヌを受け継ぎたかったから、ここにいいます。だから父の名前を外そうというつもりはありません。その理由? 父のドメーヌがなくなったら寂しいからでしょうか。よくわかりません。それに子どもたちはまだ小さいですから、ワインを造るようになるかどうかもわかりません。彼らが大きくなったころには気候も今とはちがって、そうすればワインのスタイルも変わるかもしれない。今、そこを考えるのは気が早すぎです」

今日も、ダミアンさんはワインを造っているにちがいない。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
(『猫』の次は『三四郎』より抜粋。あ、中身とは関係ありませんでした……) 

三四郎は鞄と傘を片手に持ったまま、あいた手で例の古帽子を取って、ただ一言、
「さよなら」と言った。女はその顔をじっとながめていた、が、やがておちついた調子で、
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って、にやりと笑った。