リュリィ Rully
Domaine Paul et Marie Jacqueson
ドメーヌ ポール エ マリー ジャクソン
https://jacqueson-vins.fr/
domaine paul et marie jacqueson

左から、ピエール、ポール、マリーのジャクソン家

ブルゴーニュワイン好きにこそ知ってもらいたい

リュリィは第一次世界大戦後に、戦争の影響から後継者不足に陥り、ワイン産地として忘れられかけていた。そのリュリィの代々の土地で1946年に、ドメーヌとしてワイン造りをはじめたアンリ・ジャクソンは、その時代のリュリィの先駆者のひとりだった。アンリさんがどんな人物だったかはわからないけれど、その息子のポールさんは、なんとも親切で気さくなおじさんだ。

「日本! 大好きな国だよ。日本のテレビがここに取材にきたことがあるんだ。でもそのとき、わたしは足踏みでピジャージュをやっていたんだ。下半身裸で」

とおどける。ジャクソン家ではピジャージュは発酵末期に1日1回やるという。

「それから、アルコール発酵とマセレーションは時間をかけて。それで、やわらかく、ピノ・ノワールの果実味を出すんです。わたしたちの畑では、リュリィの畑のものでも、メルキュレイの畑のものでもおなじ。熟成は樽で1年。25%くらい新樽を使います」

基本的にこのあたりのピノ・ノワールはリッチで、タンニンが強いのが特徴だ。特にメルキュレイはその傾向が強いされる。

「そうなんですか? うちのワイン飲みました?」

と、また、ポールさんがいたずらっぽく微笑むのだった。おっしゃる通り、力強くありつつもガチガチに筋肉質というのではなく、しなやかだ。

「シルキーで、グルマンで、フルーティーであること。これが私達のスタイルです。それから赤ワインはフィルターをかけません。卵白で清澄します」

と、ポールさんの娘にして、現在はこのドメーヌの当主、マリーさんがつづける。ちょっと早口で、サバサバした物言い。元銀行員だというのが頷ける。マリーさんがいう、ドメーヌの特徴は、白ワインから、特に雄弁に感じることができた。ミネラルなのだろうか、まろやかな舌触りはシルキーで、酸味と苦みはグルマン。果実の清涼感と甘い香りはフルーティーだ。

「あ、これでうちのワイン造りの秘密はすべてお話しました。明日から、同じワイン造りにチャレンジできますよ」

筆者はリュリィにもメルキュレイにも畑をもっていないので、ジャクソン家のワイン造りの秘訣を試す機会はなさそうだ。しかもジャクソン家の畑はプルミエ・クリュである。

ドメーヌ・ジャクソンの畑 1

ジャクソン家の畑のひとつ、「ラ・ピュセル」。1992 年に植樹されたプルミエ・クリュ

ドメーヌ・ジャクソンの畑 2

ジャクソン家のプルミエ・クリュ畑のひとつ「グレジニー」。1950 年にアンリ氏が植樹したシャルドネを育てる

現在、ワイン造りのトップは、マリーさんの弟のピエールさん。ディジョンで醸造技術を学んだ。

「とはいえ、この仕事は、父が、そしてなにより土地が先生です」

ちょっと斜に構えたピエールさんは、親から継いでいるものはアヴァンギャルドな精神だという。なにを聞いても、わかったようでわからない一家だ。ただ彼らはなにも秘密にはしていない。ドメーヌのホームページはとても充実し ていて、あらゆる情報が公開されている。あとは好みで決めればいい。日本でも、ジャクソン家のワインは手に入る。ブルゴーニュワインを飲み慣れている人ほどうならせる完成度だと感じる。

ちなみにブルゴーニュワインの初心者の筆者の好みはアリゴテだ。AOCの関係上、ブルゴーニュ・アリゴテとしか名のれないリュリィ産のものと、アリゴテで唯一AOCを名乗れる、ブーズロン産のものとを試飲させてもらったけれど、ブーズロンのほうは、「金のアリゴテ」と呼ばれる、実に美しい金色の液体。アロマティックだし、レモンのような黄色い果実の味だ。対するリュリィ産のブルゴーニュ・アリゴテは「緑のアリゴテ」。酸がピンとして、青リンゴのようなフレーバーがあり、けれども暖かみも感じる。この2本で、コース料理を食べたい!

ドメーヌ・ジャクソンのワイン

左からアリゴテ、シャルドネ、ピノ・ノワール。畑ごとに造り分ける

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WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
(『猫』の次は『三四郎』より抜粋。あ、中身とは関係ありませんでした……) 

三四郎は鞄と傘を片手に持ったまま、あいた手で例の古帽子を取って、ただ一言、
「さよなら」と言った。女はその顔をじっとながめていた、が、やがておちついた調子で、
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って、にやりと笑った。