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ワインの故郷、ブルゴーニュ その6-2

シャン・ド・テミス(Les Champs de Thémis)

ブーズロン Bouzeron
Les Champs de Thémis

シャン・ド・テミス

公式Facebookページ
シャン・ド・テミス グザヴィエ・モワスネ

グザヴィエ・モワスネさん。元検事である

ブーズロンの新星

検事だったグザヴィエ・モワスネさんが2014年にはじめた、シャン・ド・テミスというワイナリーは、大体4.5haのアリゴテの畑をブーズロンに持つ。というか借りている。

2010年、ロマネ・コンティを脅迫する事件があった。この捜査にくわわった捜査官は、そのときの付き合いから、ロマネ・コンティの経営者、ド・ヴィレーヌ氏に夕食に招かれた。そこで「知り合いにワインを造りたがっている人物がいる」と、友人のグザヴィエさんの話をしたところ、ここに同席した、ドメーヌ フランス・レシュノーのマダムが、ちょうど誰も引き継いでいない土地と建物があるから、とグザヴィエさんに電話をしてきたのだという。

もともとはニュイ・サン・ジョルジュに畑をもっていたものの、フィロキセラの被害が起きた際に、すべて売ってしまったモワスネ家の出身のグザヴィエさん。家はワイン業界との付き合いが深く、幼い頃からワイン業界と面識があって、成人して検事になると、本業の傍らワインを学んだ。学べば学ぶほど、自分でワインを造りたいという情熱が燃え上がる。自分のドメーヌを持つ。そう決意するも、それで、はいどうぞと土地が見つかるほどブルゴーニュは閑散とはしていない。

モワスネ家は畑を売却後、ブドウ農家向けのズボンをつくっていた

モワスネ家は、ブドウ畑を売却後、ブドウ農家向けのズボンをつくっていた。その当時のイラストと写真が醸造所には飾られている

「ですから、信じられないようなビッグネームからの信じられないような提案でした。ただ、正直、え? ブーズロンとはおもいました。有名な産地ではないし、アリゴテはクセが強いでしょう」

しかし、実際に畑を見て気が変わった。小さな畑ではあれ、そこには1930年代、40年代のアリゴテが植わっていた。ブーズロン特有の金のアリゴテだ。

「アリゴテは本来は多産な品種で樹勢は強く、酸っぱくなりがちです。コントロールするのは大変ですが、ここは生産量が少なくなる古樹。しかもこのアリゴテはブーズロンならではの品種。まろやかで香りも素晴らしい」

aligote vieilles vignes

ワイナリーに隣接する畑の希少なアリゴテの古樹。1934 年に植えられたものが最高齢

グザヴィエさんは、畑の古樹を遺産と呼び、この株を母に、アリゴテを維持している。アリゴテのワインは酸がはっきりとしているのが特徴だけれど、グザヴィエさんのワインの酸味は攻撃的ではない。その酸味を基調として、栽培区画ごと、ヴィンテージごとに、シルキーさ、スパイシーさ、苦みなど、要素の強弱や、その要素を感じるタイミングが若干ことなる。驚くべきはブーズロンの「レ・コルセル」という1930年代の古樹を中核とした一本。2016年ヴィンテージ。柑橘系の果物のような印象だけれど、香りも味も、高貴で美しい。高級品ですよね? と聞いてみると。

「ちょっとだけですよ。ワインは専門家が眉間にシワを寄せて飲むのではなく、テーブルで楽しく飲んで欲しいですから」

アリゴテのイメージが変わった。

「ブルゴーニュらしい白ワインでしょう。こんなすばらしいアリゴテがあって、小さな村ですが、みなさん親切で。ここでやってよかったとおもっています」

念の為、いじめみたいなことはないのか聞いてみる。

「2014年は初年度で、栽培のほかに役所への届け出などもあって、大変でした。アリゴテをオーガニックでやっていますから、手がかかるんです。パンクしそうになっていたら、村の人たちが1週間、無償で手伝いにきてくれたんです」

シャン・ド・テミスの樽置き場の一角

シャン・ド・テミスの樽熟成庫の一角。グザビエさんの子供たちの遊び場でもある

オーガニック認証をとるには、3年間オーガニックを続けなくてはいけない。しかし、3年目の2016年は、ブルゴーニュ全体が天候不順に悩まされ、生活の維持のため、オーガニックを断念せざるを得なかった生産者も多い。

「歯を食いしばってやりました。生産量はごくわずかですが、早熟な果実と晩熟の果実の両極端に振れたことで、よいワインができました」

ちなみに、生産量とバリエーションを確保したいというおもいもあってメルキュレイにもピノ・ノワールの畑をもっているグザヴィエさん。メルキュ
レイのいかつさはなく、トマトとかプラムみたいな印象がある赤ワインだ。やさしいのはグザヴィエさんのスタイルなのだろう。

シャン・ド・テミスのワイン

シャン・ド・テミスのワイン。ブーズロンとメルキュレイ。場所はちがってもグザビエさんのスタイルはピノ・ノワールからも感じられる

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