ヴィレ・クレッセ Viré-Clessé
Domaine de la Bongran
ドメーヌ ドゥ・ラ・ボングラン
Domaine Emilian Gillet
ドメーヌ エミリアン・ジレ
Domaine de Roally
ドメーヌ ドゥ・ロアリー
http://www.bongran.com/
ボングランのジャン・テヴネさん

ジャン・テヴネさん

白ワイン仙人あらわる

ラ・ボングラン、エミリアン・ジレ、ロアリー、という3つのドメーヌを擁するテヴネ家は、ヴィレ・クレッセにて品質を追求したワインを造る数少ない生産者のひとつだ。この地のAOC化にも多大な貢献をした。

ワイナリーは大きい。醸造所には大型の、そして今回の旅では、はじめてみたホーロー製のタンクが並び、セラーにはボトルがうず高く積まれている。ヴィンテージものも多い。その前には、広い作業スペー ス。片隅に出荷用のダンボールが積み上がる。別棟には、こちらも巨大な、そして高級な、コカール社の大型プレス機があった。

ボングランの本拠地

1989 年に立てられた現在のワイナリーは巨大。歴史的にいえばブルゴーニュのブドウ農家は20 世紀くらいまでは、石切業も営んでいたという

パッキングヤードの猫

入ってすぐが出荷作業場となっていた。テヴネ家の3つのドメーヌ、それぞれ、たくさんのダンボールが用意されている

「ヴィレ・クレッセというAOCは1998年に認められました。96年、97年にINAOのメンバーが審査にきていたのですが、ヴィンテージワインをもっているのは、うちくらいなもので、グレートヴィンテージの1989年は評判がよかったですね。古いものだと、これは私の父のワインですが、1935年と1929年も出しました。審査員は1929年を1954年、1935年は1945年ヴィンテージだとおもったようで、驚いていました」

とニコニコわらうのが、79歳のジャン・テヴネさん。「息子のゴーチエが当主ですから、私は従業員です。さっさと譲らないと、名残惜しくなっちゃうでしょう」。自身のファーストヴィンテージは1972年だ。

「白ワインが長期の熟成に耐えないとか、酸がないと熟成しない、とかいうのには賛同できませんね。現在の酸への過度の傾倒も好ましいものとはおもっていません。ワインはバランスが重要なのです」

それはうちのワインが証明している、という発言を言外に含ませて、ボングランの最新ヴィンテージをグラスについでくれた。2018年11月現在、それは2014年である。リリースまで時間をかけるし、参考までにと試させてもらったのは2005年ヴィンテージだったのだけれど、とても魅力的だった。両者とも、やさしい甘みと土のような香りがあって、成熟していてチャーミングだ。

「土じゃなく、キノコ。トリュフの香り、と言って欲しいですね。フランボワーズの香りになるヴィンテージもあります」

2014年ヴィンテージには、すこし海っぽい香りも感じた。

ドメーヌ エミリアン・ジレ 2015

ドメーヌ エミリアン・ジレ

ドメーヌ ドゥ・ラ・ボングラン。 ハーフサイズのボトルは2006 年 に天候の影響からできた貴腐ワ イン。名称はそのまま「キュヴェ・ ボトリティス」

ドメーヌ ドゥ・ラ・ボングラン。ハーフサイズのボトルは2006年に天候の影響からできた貴腐ワイン。名称はそのまま「キュヴェ・ボトリティス」

ドメーヌ ドゥ・ロアリー

ドメーヌ ドゥ・ロアリー

「良いワインには、よい土地と熟した果実が必要。そして量を追わないこと」

甘みとまろやかさは、熟したブドウを摘んでいる証拠だろう。果汁は可能な限り澄んだ、混じりけない液体であるのが好ましい、という。特にカリウムが多く入ると酸を吸着してPh があがり、バランスが崩れる。コカール社の搾汁機を導入したのはそれゆえだ。

別棟に2階層をまたいで設置されているシャンパーニュ地方、COQUARD製の搾汁機。壁がせり出してくるような動作でやさしくブドウを潰す。絞りすぎて、カリウムが多くなると酸っぱくなる

「本当は、人の手で潰すのが一番いいんです」

清澄(デブルバージュ)には2日かけ、透明になったら果汁をホウロウのタンクにいれる。ここからボトリングまで、樽は使わない。樽が嫌いなのだ。

テヴネ家のホウロウタンク

スイスから手に入れたホウロウ製のタンク。樽は嫌いなので、樽香がつかないように徹底的な処理を施した古樽ですら、行き場のない果汁を一瞬避難させる程度にしか利用しない

「樽の香りは白ワインには欠点でしかないとおもいます」

 発酵温度はピークでも18度と低い。それは、発酵によってアルコールだけでなくアロマも生み出される温度があり、そこを狙って管理しているから。

「というわけで、私の秘密はすべて話しちゃったかな」

実は、ジャンさんのワインは、この信念のために、2002年までヴィレ・クレッセというAOCを名乗れなかったという。

「その当時の規定で評価した場合、私たちのワインは残糖が多すぎたのです」

とはいえ、テヴネ家は自分たちのワインの造り方を変えなかった。後に、規定が変わり、いまはAOCを名乗るけれど、この大きなワイナリーを見て、ここのワインを飲むと、テヴネ家の信念に一途な姿勢は尊敬され、支持されているのだろうと感じる。

「2018年のブルゴーニュはよいヴィンテージだといいますが、私は難しい年ではないかとおもいます。糖と酸のバランス、適切な熟度。きちんとした判断ができた人はどれほどいたでしょうね」

ジャンさんのようなワインには、今回の旅では出会わなかった。果たして2028年に、テヴネ家のワインとほかのブルゴーニュのワインとを飲んだら、どんなちがいがあるだろう。筆者はぜひとも、それを知りたい。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部

人生がうまくいかない時は「神様がくれた休暇」だと考えよう。



by 1996年のテレビドラマ「ロングバケーション」(北川悦吏子脚本)での木村拓哉演ずる主人公のセリフより。



10連休でロンバケって短くないですか。