ドメーヌ アンリ・ルパート(Domaine Henri Ruppert)はひたすらに品質を追求する、独立系ワイナリーだった。

ブドウ栽培農家としては8代目となるアンリ・ルパートさん。ラベルにも描かれているワイナリーの前で。ルクセンブルクの著名な建築家フランソワ・ヴァランティーニの2008年の作品。愛犬の名前はピノ

ブルゴーニュのドメーヌのように

ドメーヌ アンリ・ルパートのワインは傑出している。

ルクセンブルクのワイナリーとしては大きいけれど、そうはいっても合計19haのブドウ畑で、ピノを中心とした品種を育てる栽培醸造家アンリ・ルパートさんは、あたかもブルゴーニュのドメーヌのように、栽培から醸造までを徹底的に管理し、ひたすらにテロワールに向き合った高品質ワインをうみだすための仕事をしている。

「残念ながら、ここの土壌にはシスト(石灰質)がない。しかしそれもルクセンブルクのテロワールの個性だ」と語り、土壌、畑の向きなどに応じて、栽培区画を細かくわけ、ときに20hl/ha代、あるいはそれ以下になるほどに、収量を制限して、凝縮し、熟したブドウを収穫する。

畑はほぼ、フランスとの国境のシェンゲン地区にある。醸造所の目の前の、急峻な斜面においても、丘の上と下とでは違うテロワールだとして、育てるブドウも、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ピノ・ブランと変えている。収穫されたブドウは、大切にプレスしたあとに、直下に位置するタンクに入って醸造。熟成はタンクと樽を使い分ける。

クリーンな樽熟成庫の上がテイスティングルーム。また、大きなワイナリーにはイベントホールもあり、結婚式会場となることも

ワイナリーの形を模した絵がラベルに描かれるアンリ・ルパートのワイン。左の樽熟成のピノ・ノワールは「マ・ターシュ(私がすべきことの意)」という洒落が聞いた名前。花冠をもった金の女性はルクセンブルク市の中央にある慰霊碑の上に立つシンボルで、ゲレ・フラといい、このクレマンも「キュヴェ ゲレ・フラ」という。ピノ・ノワール80%、ピノ・ブラン20%で心地よい樽香のついたロゼ

「2017年は、冷涼で好きなヴィンテージです」と、出してくれた、まだできたばかりのピノ・グリは、雑味のない澄み切った酸に、洋梨のような香りがある。

これは高級なワインだ、と一口飲んで感じる。

また、限定的にしか売られていないそうなのだけれど、ルクセンブルクワインの常識を覆す、リースリングとオーセロワとのアッサンブラージュというワインも印象的だった。それは、軽やかなルクセンブルクのワインのなかでは、骨格のしっかりとしたワインで、レモンとトロピカルフルーツが組み合わさったような味わい。「ソーヴィニヨン・ブランっぽくないですか?」とアンリさんにいわれて、なるほど。

ピノ・ノワールも素晴らしくエレガントだ。果実はおそらくとても熟しているのだろう。それでも重厚にはならないのは、ルクセンブルクという冷涼な土地ならではの個性だとおもわれる。

アンリさんは家系でいえば、8世代目のブドウ栽培家にあたるという。

すぐそこがフランス。眼下にシェンゲン(ルクセンブルクに約百ある基礎自治体のひとつ)の町。橋を渡ればドイツ。ルクセンブルク側は急斜面にブドウ畑が広がる。下からピノ・ノワール、ピノ・グリ、ピノ・ブランと育てる

とはいえ「父の時代は畑は3ha程度。第二次世界大戦までは、ルクセンブルクでは3haは巨大といえるほどに、小さな栽培農家だらけだったんです。そして共同の醸造所でワインを造っていました」。

現在のアンリ・ルパートは、つまり、アンリさんが一代にて築き上げたもの。世界的にみれば、ファインワイン造り方とは、まさにアンリさんがしているような仕事を指す。

しかし、ルクセンブルクワインのごく一部しか知らない筆者だけれど、この地においてその姿勢は、際立って孤高にして求道的に見える。





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WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部

人生がうまくいかない時は「神様がくれた休暇」だと考えよう。



by 1996年のテレビドラマ「ロングバケーション」(北川悦吏子脚本)での木村拓哉演ずる主人公のセリフより。



10連休でロンバケって短くないですか。