2018年6月にキリンが発表したデータによると、2017年の日本のスパークリングワインの輸入数量は約3.6万キロリットルで、2010年以降8年連続で拡大。国別輸入量第1位は、シャンパンの生産国でもあるフランスで、全体の37.8%を占めている。ということで、泡好きのための基礎知識を、シャンパーニュ専門webマガジン「シュワリスタ・ラウンジ」編集長の岩瀬大二がシュワッと注入します。

Daiji Point 1

気分と場面に合わせてチョイス!
記念日ディナーや和食はシャンパーニュの出番かもしれませんが、カジュアルなBBQ、気の置けない友人との家飲み、普段の夕食に普段の食事、夏のビーチやエキゾチックな各国料理と合わせて、そしてみんなの懐具合…。実は、それぞれの場面や気分によって選べる幅が広いんです。夏の太陽の下、クリスマスパーティのチキンとともに、仕事帰りのおつかれの乾杯。その時にちょうどいいアロマと強さとテイストの泡をどうぞ。



Daiji Point 2

世界中からチョイス!
基本的にはワイン造りがされているエリアならスパークリングワインも造られていると考えてよいでしょう。代表的な産地や特徴については別項を参照いただくとして、たいがい国や地域のキャラクターや文化とスパークリングワインのキャラクターは似ているので、それぞれの国がお好きならぜひその国のものも試してみてください。各国の前菜的なモノやおつまみ的なフードとは特に相性がいいですよ。



Daiji Point 3

造り方でチョイス!
泡の造り方はさまざま。シャンパーニュや各国の代表的なものは「瓶内二次発酵」。単純にいうとワインに糖分と酵母を加えもう一度瓶の中で発酵させます。すると密閉空間の中で炭酸が発生。これが繊細な泡になります。リーズナブルなものでよくみられる後から炭酸を注入する「シャルマ方式」、単純だけれど素朴な風味の「瓶内一次発酵」など、どれが優れているかというよりもそれぞれ持ち味が違いますのでお好みを。



Daiji Point 4

味わいの違いでチョイス!
酸のきれいなエレガントタイプ、複雑味と深みのプレステージュタイプ、果実味たっぷりのシュージータイプ、切れ味のあるドライタイプ、甘やかなテイストのオフドライやスイートタイプ……とかなり幅広いバリエーションがあります。軽やかなフィンガーフード、前菜、メインの肉、デザートまでいろいろなスパークリングワインをペアリングで楽しむ。これってかなり素敵な楽しみ方ですよ。



岩瀬大二 Daiji Iwase
シャンパーニュから、チリ、ドイツ、国内ワインと幅広く取材を手掛ける。ワインに限らず日本酒にも造詣が深く、取材と称しての飲み歩きは全国に及ぶ。シャンパーニュ専門webマガジン「シュワリスタ・ラウンジ」編集長。



スパークリングワインは楽しい!

いきなり軽い見出しですいません。

そのついでにここはそのまま軽い感じで書かせていただきますね。

まずスパークリングワインは日常でも非日常でも晴れやかな気分をもたらしてくれます。その理由はむちゃくちゃシンプルなんですが「泡」があること。スティルワインには泡はありませんって当たり前? 

いやいやこの泡という要素がもたらす効果は絶大。

まず、グラスに注いだ時、泡が広がり、そしてグラスの中を立ち上る泡を見ているだけで気分が上がるでしょう?

細かさ、繊細さ、数、逆に快活さやおおらかさなどいろんな個性があるんですよ。宇宙の銀河がそれぞれ違うように、それぞれの銀河がグラスの中にあるわけです。みなさん気がついていないようで、この泡の要素で無意識に感じるものがあるんじゃないでしょうか。

休日の昼なら大らかな泡、たとえばニューワールドのナイスプライスなカジュアルなスパークリングワイン。

夜、いいムードで夜景を2人で……だったら繊細に立ち上る泡。やはりここはシャンパーニュの出番。この泡と共に香りも広がるわけですが、これが不思議に、ああ、この泡っぽいなあって感じるんです。

ここで気づきました?

この泡、勝手に上がっているわけではなく、造り方によって変わるんです。良い造り手のスパークリングワインは自分で狙った泡を生み出す匠を持っているんです。

そのスパークリングワイン、泡が繊細なら酸も繊細、泡が大らかなら果実味とアロマもたっぷり。そんな個性も一緒に出てきます。これがスティルワインにはない魅力のひとつなわけです。

明るくて楽しいけれど、その裏は深かったりする。そこを探り始めたら……そこからがこの世界の本当の扉。

ようこそスパークリングワインの世界へ。



世界のスパークリングのごく一部。右から時計回りに。カ・デル・ボスコ フランチャコルタ キュヴェ・プレステージ(イタリア)、ボッテガ アカデミア ブルー プロセッコ(イタリア)、そしてエウダルド・マッサナ・ノヤ ブルット・ナトゥーレ ファミリア(スペイン)。



フランス

シャンパーニュだけじゃない

代表的なものといえばやはりシャンパーニュ。これは
1.フランスのシャンパーニュ地方で、
2.シャンパーニュ産の決められたブドウ(主なものではシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエ)を、 3.シャンパーニュで決められた製法(瓶内二次発酵、決められた最低熟成期間その他)で造られた、
もののこと。
フランスの他の地域で造られている物はシャンパーニュではなく、また、シャンパーニュ製法で造っただけでもシャンパーニュとは名乗れません。
フランス国内では、一般的なスパークリングワインは「ヴァン・ムスー」と呼ばれ、いろいろな地域で造られています。その中で「クレマン」という選ばれた地域で造られたものがあります。たとえばアルザス地方で造られた良質なものは「クレマン・ド・アルザス」と呼ばれます。ほかにもボルドーやブルゴーニュなどいくつかの場所があり、高品質な泡としての高い評価があります。



イタリア

多彩な個性の泡王国

フランスと並んで伝統的に発泡性ワインの文化がある国です。一般的なものは「スプマンテ」。
同様に特定地域のものではシャンパーニュと同様に厳選されたミラノ近郊の「フランチャコルタ」、ヴェネト州の爽やかで気軽な「プロセッコ」、柔らかい甘やかさがあるピエモンテ州の「アスティ・スプマンテ」、エミリア・ロマーニャ州からは珍しい赤泡の代表格「ランブルスコ」などがあります。
さらに微発砲でアルコール度数が低く柔らかさと爽やかが持ち味の「フリッツアンテ」も人気です。
スプマンテでは北イタリアのトレントには最大手の生産者フェッラーリ社があります。イタリアは郷土料理の宝庫ですが泡もやはり郷土色豊か。ぜひ各地の料理と合わせながら楽しみましょう。



スペイン

気軽と本格の進化系

代表的なものでは「カバ」。中心地はカタルーニャ州ですが、場所ではなく決められた製法による認証のためバレンシア、ナバーラ、ガリシアなど現在は8つの自治州で造られています。
製法はシャンパーニュ同様の瓶内二次発酵で、最低熟成期間は9カ月。ブドウ品種はチャレッロ、マカベオ、パレリャーダが主で、シャルドネやピノ・ノワール、ロゼではガルナッチャやモナストレルなどの赤ワインが加わります。豊かな柑橘と果実、飲みごたえのある泡と骨格、親しみやすさとコストパフォーマンスの良さで世界的にも人気で、年間1億5000万本以上が輸出されています。
当初は気軽な泡として日本でも広がりましたが、現在ではより品質が向上したプレステージなものも入手可能です。



日本

そういえば泡好きの国

炭酸飲料、ビール、サワー、最近はハイボール……日本ではもともと発泡性の飲料が好まれているので多種多彩なスパークリングワインが生まれるのは必然とも言えます。
世界でも評価を受ける本格的なスパークリングワインから、果実が甘やかで度数も低く炭酸の軽やかなもの、自然な風味も楽しい微発砲のペティアン(3気圧以下の微発泡性ワイン)、シンプルで素朴な風合いになりやすい瓶内一次発酵によるものなどまで、全国各地のワイナリーで積極的に取り組んでいます。
ブドウ品種も昔ながらのデラウェアやキャンベルアーリー、コンコードから欧米品種のものまで幅広く使用されています。
現状はシャンパーニュやカバといった認証、イタリアのようなその土地ならではの呼称があるわけではないので自由闊達なチャレンジの時期といえます。



そのほかの欧州

やはり泡の本場
ドイツは日本ではあまり知られていませんが、世界中の発泡性ワインの4分の1近くを生産する泡大国です。人気は一定の基準を満たすと名乗れる「ゼクト」が代表格。
近年ではイギリス南部でも高品質のスパークリングが生まれ評価を受けています。もともとシャンパーニュと似た土壌があり、近年の温暖化や才能ある生産者が集まるなどの要因もあり評価が高まっています。



南北アメリカ

注目のフロンティア
チリ、アルゼンチンなどスティルワインでも人気のエリアにはカジュアルから上質なものまで幅広い泡があり、日本でもよく見るようになりました。
チリからは昔ながらのブドウ品種パイスの泡がじわじわ人気と評価を高めています。近年ではゆるっと明るいテイストが特徴のメキシコやブラジル、美しさと繊細な酸を感じられるニューヨークなど注目の産地が増えています。



シャンパーニュ ╳ ニューワールド

魅力と魅力が手をつなぐ
シャンパーニュの名門メゾンが海外に生産拠点を求め、そこでシャンパーニュの上質を各地域の個性とあわせたというスパークリングワインがあります。
たとえばモエ・エ・シャンドンのオーストラリアでのプロジェクト「シャンドン」やルイ・ロデレールのカリフォルニアでの「ロデレール・エステート」、同じくテタンジェのカルフォルニアでのジョイント・ベンチャー「ドメーヌ・カーネロス」など。
シャンパーニュのエレガンス、それを生み出す技法や哲学、DNAを、恵まれた気候や規模の大きな畑のもとで生かすことで現れる新しい世界。もともとニューワールドでも泡に定評、文化があった豪州やアメリカですからますますコラボは広がりそうです。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
(『猫』の次は『三四郎』より抜粋。あ、中身とは関係ありませんでした……) 

三四郎は鞄と傘を片手に持ったまま、あいた手で例の古帽子を取って、ただ一言、
「さよなら」と言った。女はその顔をじっとながめていた、が、やがておちついた調子で、
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って、にやりと笑った。