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シャンパーニュ ヴーヴ・クリコ「ラ・グランダム」は今後ピノ・ノワール90%以上に

最新2008年ヴィンテージ公開

ドミニク・ドゥマルヴィルさん

ラ・グランダムの2008年ヴィンテージにおける変化

と、話がヴーヴ・クリコを離れてシャンパーニュ全体へと広がったところで、今回お披露目された「ラ・グランダム 2008」の方に戻ろう。はたして、そこに表れている「さらに良くなろうとする志」とはなにか。これは、今回の場合、ある決断にあらわれているので、わかりやすいといえるかもしれない。この2008年ヴィンテージ以降、しばらくのあいだ、「ラ・グランダム」におけるピノ・ノワールの使用パーセンテージが、90%以上になる、というのだ。これをドミニクさんは「瓶内の革命」と表現した。そしてその革命を以下のように紐解くーー

「ヴーヴ・クリコのシャンパーニュに必要な要素は、パワフルさ、インテンシティ、シルキネス、フレッシュネスです。ラ・グランダムは、このうち、シルキネスと、フレッシュネスを最大限まで高めたものです。ラ・グランダムは、最初のヴィンテージである1962年(発売は1972年)から、グラン・クリュ格付けのブドウのみを使用していますが、約60%を5つの村のピノ・ノワールから、約40%を3つの村のシャルドネから選択して造る、というのが基本的なバランスでした。つまり、ピノ・ノワールのパーセンテージが高いのが、ラ・グランダムの、そしてヴーヴ・クリコの特徴なのです。そこでーー

「ラ・グランダムをより個性の際立ったものにしようとした場合、ピノ・ノワールのパーセンテージをさらに上げるのは、ヴーヴ・クリコにとって自然な選択です。2008年はピノ・ノワールの出来の素晴らしくよい年でした。モンターニュ・ド・ランスの北向きの村、ヴェルジーとヴェルズネのピノ・ノワールはミネラリティ、フレッシュネス、そしてフレッシュなエネルギーを、南向きの村、ブージーとアンボネイはボディとインテンシティを、そしてやはり南向きのアイは、テクスチャーとストラクチャーを与えてくれます。アイ村はマルヌ川に面していることもあり、フレッシュネスもあります。これらを組み合わせることで、ミネラリティ、フレッシュネス、シルキネス、デリケートさのバランスがとれていて、深みのあるシャンパーニュができました。9年の瓶内熟成を経て、2018年1月にデゴルジュマンをしています。ドザージュはわずかに6g/リットルです」

2008年のラ・グランダムにおけるピノ・ノワールの割合は92%とのこと。すっかり、脇役になってしまったシャルドネ。もしかして育ちづらくなった、などという理由もあるのでしょうか? とドミニクさんに尋ねると

「ブラン・ド・ノワールを造るのが目的ではないので、シャルドネを0にするつもりはありません。主役がピノ・ノワールで、シャルドネはピノ・ノワールをさらに引き立てる存在、料理でいえば調味料のような役割、という感じです。自らは主張せず、素材の味を引き立てる調味料。シャルドネは、アヴィズ、メニル・シュール・オジェ、オジェのシャルドネを選ぶのがラ・グランダムのスタイルですが、今回はメニル・シュール・オジェのシャルドネを選んでいます。どのシャルドネをどう使うかはその年次第です。予定では今後、ラ・グランダムは2012、2015、2018年ヴィンテージで出します。いま2018年をどうするか考えている最中ですが、オジェのシャルドネが有望です」

「シャルドネは、ムニエ、ピノ・ノワールと比べた場合、より短い時間で成熟します。それは、果実が糖を蓄えるのが早い、ということです。しかし、早すぎると、果実は甘いのにフェノールが育つ時間が足りておらず、テクスチャーや深み、ストラクチャーがない、というものになりがちです」

「全体的に冷涼な年、特に夜の気温が下がり、時間をかけて糖度があがるようなときはシャルドネがよく、またシャルドネは貴腐菌にもピノ・ノワールやムニエと比べて耐性があります。一方ピノ・ノワールはその逆。日照があって湿度が低いとよいピノ・ノワールができます。シャンパーニュで質、量ともに素晴らしいブドウが育った2018年は、私はシャルドネよりもピノ・ノワールイヤーだったと思っています。ラ・グランダムのブラン・ド・ブランを造る予定はいまのところないので、2012年、2015年、2018年はピノ・ノワールイヤーなのです。いっぽう、シャルドネがよかったのは、2009年、2013年、2016年ですね」

つまり、ヴーヴ・クリコとしては、ピノ・ノワールをあらためて強調していく、ということなのだ。

ちなみに、筆者がこのとき味わった範囲でいうと、ラ・グランダム 2008にはヴィンテージシャンパーニュらしい、熟成された香ばしさと、洋梨やリンゴのような甘くフレッシュな香りがある。そして味も、その香りから感じられるイメージそのままだ。公式のテイスティングノートには「複雑さとストラクチャー、力強さの完璧なコンビネーション」という表現があるのだけれど、こういうシャンパーニュにしたい、という意図がはっきりしている、という意味でも力強く、それを丁寧に表現したシャンパーニュだと思った。

*ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム 2008の公式の情報はこちらです。

また、このとき同時にお披露目となった、「ラ・グランダム ロゼ 2008」のほうは、スパイシーで、苦味もある。これは、ドミニクさんによれば

「タンニンや苦味の要素は、マダム・クリコの畑、クロ・コランのピノ・ノワールから来ています。ラ・グランダム ロゼ 2008では、14%がクロ・コランのピノ・ノワールで造った赤ワインです」

とのことだ。

多くの場合において、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造るのは認められていないけれど、いくつか例外があり、その中でも最も有名なのが、白のシャンパーニュに赤ワインを混ぜてロゼをつくる、ブレンド法のロゼ・シャンパーニュ。マダム・クリコは、このブレンド法を生み出した人物であるとされているから、ヴーヴ・クリコのロゼはブレンド法で造られる。ラ・グランダムのロゼもラ・グランダムにピノ・ノワールの赤ワインをブレンドすることで造られる。ここにおいてもピノ・ノワールが強調されるのである。

思い出してみれば、イエローラベルについても、その50%以上を占めるのはピノ・ノワールだ。あらためて、それをヴーヴ・クリコは明確に打ち出した、というわけで、これが、現在の、シャンパーニュとはなにかの、自信たっぷりなヴーヴ・クリコの解答、ということになる。

「この選択、みなさん、なかなかうまくいっているとおもいませんか?」

と、ドミニクさんはにっこりと問いかけた。そして、この場に参加した人々は、筆者もふくめて、それに満場一致の拍手で応えたのだった。

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