南半球はワインの銘醸地である。気候と土壌に恵まれ、豊かなブドウが育ち、技術レベルもどんどん向上している。もしまだ未経験であれば、ぜひ3,000円以上のワインを試してほしい。必ずやその品質に驚くことになる。ブドウ品種も、有名無名から独自品種までバラエティに富んでもいる。国際品種でも、国によってこんなにも違うのか、と興味は尽きない。南半球格上ワイン特集、オーストラリアに次いでご紹介するのは、ニュージーランド。

ここ30年の急激な成長には理由がある!

オーストラリア大陸から北西に2000km離れた、ふたつの島からなるニュージーランド。冷涼、温和な気候と環境のもと、高品質なワインがここ30年でつくられるようになった。

文 : 松木リエ(ワイン講師)

消費者に寄り添ったワイン造り

ニュージーランド(以後NZ)ほど、この30年間で急激に成長したワイン産地はないだろう。今日の国際市場では、この国のソーヴィニヨン・ブランはその品種のスタンダードと言われ、ピノ・ノワールの赤ワインも年追うごとに存在感を増している。

急成長には理由がある。

NZはワインの世界では「新世界」と呼ばれる。ヨーロッパのようなワイン伝統国に対する後発国として、消費者が何を求めているかをよく考え、彼らに寄り添ったワイン造りを行ってきた。だから大成功を収めることができた。

2018年のワイン生産量は約3003万ヘクトリットル。世界の総生産量の1%強にしか満たないが、その8割が輸出されており、2018年には17億NZドルに達した。1990年の輸出金額が1800万NZドルだったことから、いかに国外での人気が急成長したかがわかる。

30年前には100軒以下だったワイナリー数も今では670軒以上にも及んでいる。

1819年、宣教師によって北島のケリケリという場所に100本ほどのブドウの苗木が植えられたが、ワインがつくられたという記述は残されていない。1960年代までは酒精強化ワインやバルクワインが主だった。

1980年代に世界のワイン審査会で南島マールボロ地区のソーヴィニヨン・ブランが最優秀賞を獲得したことがワイン産業を活性化した。その品種の個性を見事に表現できるテロワールがあると世界に知らしめたからだ。

時代が移り変わるなか、自然志向が強い国柄がNZ人気を維持している理由のひとつと言えよう。地球温暖化などで環境問題に敏感になった消費者はワイン選びにもその志向が影響する。

95%におよぶ畑がサステイナブルの認証を受けている。。さらにワインの99%がスクリューキャップを使用し、瓶の軽量化など、輸送時にCO2排出量を抑えることももちろん考えられている。その時々の潮流を敏感に読み取ったワイン造りを行っていることがわかるだろう。

ファイン・ワインを生む土地

ファイン・ワインを生む土地という見方では、NZは日本と同じ島国で、南北に長い。ただ周辺を海が囲むので急激な温度差はなく、非常に過ごしやすい海洋性気候だ。南北の島にはそれぞれ中央に山脈が伸び、島の東側に広がるブドウ畑を雨から適度に守っている。他国にあるような水不足の問題は少なく、灌漑なしでのブドウ栽培が可能だ。

国全体で約33,600ヘクタールの畑の規模はブルゴーニュとほぼ同じで非常に小さい。ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールでその75%を占めている。どちらの品種も冷涼な環境を好み、その環境のある地に植えられポテンシャルを発揮している。温暖な気候を好むカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーは北島のホークス・ベイでつくられているものに定評がある。

ほかにもシャルドネやピノ・グリなど様々なブドウの高品質なワインを見つけることができる。

〈北島〉

オークランド

シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、シラーで質の高いワインを造っている。NZ初のマスター・オヴ・ワイン(MW)、マイケル・ブラコヴィッチMWがつくるクメウの「クメウ・リヴァー」、オーナー兼ワインメーカーのジェイムズ・ヴルティッチがマタカナでつくる「プロヴィダンス」、サム・ハロップMWがワイケヘ島でつくる「セダリオン」などが有名。



ホークス・ベイ

ベイという名前だが栽培地はいくぶん内陸で海からの影響は少ない。日照量がニュージーランドの中でも一番多く、年間2220時間に及ぶ。光が多く当たる分だけ暖かい気候に適するメルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、シラーに向く。何千年もかけて5つの川が湾に流れ込み、多様な土壌を形成。それゆえ多種のブドウが植えられているが、ピノ・ノワールのような寒地に適する品種は向いていない。



ワイララパ地方&マーティンボロ

NZのトップランカーのピノ・ノワールをつくる産地。北島の一番南にあたために非常に風が強く、ブドウは多くのポリフェノールをつくるため黒系果実の香りがするのが特徴。ストラクチャーがしっかりあり、気骨に富んでいる。「アタランギ」ワインは特筆ものだ。



〈南島〉

マールボロ

北・西・南と山に囲まれた地域。前述の通り、急成長の立役者となったソーヴィニヨン・ブラン産地。今では国全体の65%以上の植樹率と70%以上のワイン生産量を誇る。山の西側に雨が落ちるのでホークス・ベイに並ぶくらい日照量が多いが、暑すぎず、温和な気候でエレガントなスタイルのワインを造る。ピノ・ノワールの評価も高くなっている。



セントラル・オタゴ

ここだけ海に面していない、大陸性気候。南島の南西の端は年間3000mmの降水量で屋久島ほどあるが、山を挟んだ東側のセントラル・オタゴは逆に国内で最も降水量の少ない土地となり、乾燥して暑い。日較差があり、気候区分ではプルゴーニュと近似性がある。地域を挙げてピノ・ノワール産地として発信し、瞬く間に世界中に認知されるようなった。

あるワイン評論家はNZワインを「価格と品質の調和において期待を超える誠実なワイン」と評したという。昨年末にTPP11が発効されたことにより、日本でもさらにNZのファイン・ワインを楽しむ環境が広がっていくことに期待したい。

日本におけるニュージーランドのワインと料理店のオススメへとつづく

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WINE-WHAT!? 編集部
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