チリワインの関税は2007年に締結された日本とチリのEPA(経済連携協定)によって、2019年には完全にゼロになる。となれば、再び注目されること間違いなし。なぜチリのワインは安くて美味しくて、さらにプレミアムなワインまで生まれているのか? ワインナビゲーターの岩瀬大二さんが紹介します。

文・写真 : 岩瀬大二

オーガニック、ビオディナミの生産者が増えている

西に太平洋、東は高峰が連なるアンデス山脈。南北は4329km、対して東西は平均175kmと、海岸線に沿って細長い土地。地図を見ればその国土は実に印象的だ。

そして、この国土はワインにとって幸せな状況をもたらす。

地理的なメリットとしては、北の砂漠、南の氷、西の太平洋、東のアンデスと隔絶された環境、またおおむね乾燥している気象状況と、徹底した植物の検疫が功を奏し、ブドウ栽培の大敵であるフィロキセラ、ベト病が存在しない。そのためオーガニック栽培に適した土地でもあることから近年、オーガニック、ビオディナミに舵を切る生産者も増えている。

ワイン産地は首都サンチアゴを中心とした中央部が軸になる。日照時間が多く、特に収穫時期に雨がほとんど降らないという格好の気象条件。ワイン産地を大きく分けると、北のコキンボ地方、中央のアコンカグア地方とセントラル・ヴァレー地方、南のサウス・ヴァレー地方となる。

以前は、東西を輪切りにするよう形でエリア分けがされていたが、その中でもアンデス山脈に近い場所から、冷涼な沿岸部まで幅広い環境が混在し、より狭い範囲の渓谷単位でも個性が変わり、栽培されるブドウ品種もそれぞれ特徴があるため、ワイン生産の最北端であるエルキ・ヴァレー、リマリ・ヴァレーから最南端のマジェコ・ヴァレーまで細分化されている。

新しいアドレスをあげるとすれば、沿岸地帯「コースタル」と南部の「マウレ」「イタタ」。どれも冷涼地域という共通点があるが、これらが注目されているのは、チリにおけるワイン造りやブドウ品種の広がりとも密接な関係がある。

エドゥアルド・チャドウィックのベルリン・テイスティング

日本で認知されているチリの代表的な白品種は、ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ。赤ではカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ワイン好きの方の中ではカルメネールもその名が挙がるだろう。これらが従来のチリワインを押し上げ、世界的な評価も高めてきた。

一方で、その大きな成功は、「安価な定番ワイン」という固定概念と先入観を生み、チリにはそれだけしかないというレッテルにもなってしまっているようだ。そこで新たなチリの旗頭となりそうなのが、この3つのエリアというわけだ。

まず、太平洋に面したコースタルエリアは、南極からの寒流であるフンボルト海流の影響でかなり冷涼なエリア。土壌も複雑なため、良質でエレガントなピノ・ノワールやシラーが生まれ始めている。特にこの地域での可能性を世界に示しているのが、チリワイン業界だけではなく世界的な大物であり、「ヴィーニャ・エラスリス」と「ヴィーニャ・セーニャ」の当主エドゥアルド・チャドウィック氏だ。2004年、氏が仕掛けた「ベルリン・テイスティング」により、チリワインはプレステージクラスのワインとしての評価を高めてきたが、氏のフロンティアがこの地の冷涼ワインで、すでに高い評価を得ている。

マウレでは、大小のワイナリーが参画し「カリニャン」というブドウ品種を育て、広げるユニークな活動(「VIGNO」)が行われ、これも着実に成果をあげている。カリニャンはむしろチリでは伝統的でありながらここ25年ほどの国際化の中で知られていなかった存在。

同様にイタタ地域のモスカテル・デ・アレハンドリアやパイスといったブドウも、かえって日本では新しい存在だろう。オフドライのゆったりとした気分に誘ってくれるモスカテルに、山ブドウのような素朴さでありながら洗練されたスパークリングワインでも人気が高まりつつあるパイスは、これからのチリに彩りを加えてくれるだろう。

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WINE-WHAT!? 編集部
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