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ラングドックワインは毎年10%売上が伸びる

ラングドックワイン委員会のプレス向けのランチから

ラングドックワイン委員会が、東京 六本木のEdition Koji Shimomuraにてプレス向けのランチョンを開催した。スパークリング、白、赤、デザートで合計8本のワインが登場したこのイべントから、ラングドックワインのことをあらためて紹介したい。

AOCラングドック、および、IGPシュッド・ド・フランスのマーケティングマネージャー クリスティーヌ・モリーヌさん

オーストラリアの14倍くらいある産地 ラングドック

ラングドックワイン委員会が、東京 六本木のEdition Koji Shimomuraにて、プレス向けのランチョンを開催した。

ラングドックのワインについては、これまでWINE WHAT onlineでも何度かとりあげてきている。だから、もしかしたらおさらいになるかもしれないけれど、ラングドック地方はフランスの南の産地で、ワイン産地としては、ラングドック=ルシヨンと呼ばれる。ここは、ワイン大国フランスで、一番の生産量をほこるワイン産地。その数、一年に15億本。世界のワイン生産量の5%に相当する量だそうだ。

なぜ、これほどまでにラングドックは大規模か、といえば、環境が良い。年間320日以上が晴れ、というほど日照に恵まれ、地下水が豊富なため、水も不足しない。かつ、北からは山から吹き下ろす涼風がブドウを病気からまもり、南からはブドウの成熟に適した地中海からの湿った風が吹く。22万4千haにもおよぶ栽培面積なので(オーストラリアの13.7倍だそうだ!)気候条件や土壌はさまざまだけれど、寒暖差は十分にあり、土壌は、石混じりの場所が多く、粘土石灰質、片岩、砂岩が主たる地質として紹介される。

チリ、アルゼンチン、南アフリカなどの産地と比べても約10倍の栽培面積。かつ、オーガニックを含め、持続可能な農業に積極的。10年後はラングドックのブドウ畑の60%を持続可能な畑にする計画がある

そして、AOCによるとはいえ、全体としては許可されている品種も極めて多い。世界のワイン生産量の95%は十数品種のブドウが占めているのにフランスでは最多の234品種が公的に認められる

かくして、この地は紀元前600年ごろからワインの産地であり、1531年に現在のブランケット・ド・リムーの先祖となるスパークリングワインが誕生し(シャンパーニュ地方よりも早い)、18世紀中盤から19世紀にかけては、その供給量のおおさから、フランスの極めて重要なワインの供給地だった。とりわけ、ワインが水代わりに飲まれていたような頃には。

時は20世紀へ。テーブルワインの重要な産地だったアルジェリアがフランスから独立したあと、量を支える産地として注目されていたラングドック。ところがその時代も、今日のEUに至るヨーロッパ間の経済の自由化が進むと終わってゆく。他国との価格競争に苦戦するようになり、さらに、さすがのフランスも、ワインが水代わりというライフスタイルではなくなった。1980年代、ラングドックはアペラシオンを発展させてゆき、量から質へとシフトしていった。そして、かつてはフランスのどこよりも安いワインを産出していたラングドックは、近年、蔵出し価格でいえば、フランスの他のワイン産地との間に、おおきな差はないほどまでに、質における評価を向上させた。

この20年ほどのあいだでの成長はすさまじいという。2010年から2018年までの成長は、輸出額で見た場合、+88%=9900万ユーロも増加している。毎年10%くらいの成長なのだ。この勢いはまだつづくかもしれない。最大のマーケットはアメリカ、そこに中国がつづく。

ワインのスタイルも変化している。30年前、ラングドックの9割は赤ワインだった。ところがいまや、赤ワインは74% ロゼは16% 白10%。日本や中国はいまだに赤ワイン偏愛のマーケットだけれど、とくに先進国ではロゼと白が売れる。それを反映しての数字だ。

といったことを来日したAOCラングドック、および、IGPシュッド・ド・フランスのマーケティングマネージャー クリスティーヌ・モリーヌさんは語った。

この日のランチョンでは、生産者も参加していて、同席したラングドックを含む、南フランスのブドウを買い、醸造する協同組合(自社畑もある)「レ・ヴィニョーブル・フォンカリュー(Les Vignobles Foncalieu)」のアジア・パシフィック担当ディレクター アントニ・フィン氏によると、同組合の生産量はなんと60%がロゼなのだそうだ。理由は、アメリカにニーズがあるから。ロゼワインといえば、のプロヴァンスとくらべ、ラングドックのロゼは量も豊富で安い。品質は安定している。その事実が知れると、あとは「雪だるま式に」ロゼが売れてゆく、と氏は言うのだった。

さて、ラングドックだけで23のAOC、14の補助的地理的呼称が存在し、IGPシュッド・ド・フランスも含めた場合、16の地域名IGPと3つの県名IGPが加わる。ブルゴーニュなどよりはよほど少ないとはいえ、あたらしいAOCが誕生したりもしている、若く、活力ある産地だから、プロになろう、資格を取ろう、という意欲でもないことにはなかなか覚えようとはしないのではないだろうか。

そこで、今回はこのランチに登場したワインを紹介してゆきたい。ちなみにWINE WHAT onlineと雑誌のWINE-WHAT!?にも、ラングドックのワインはたびたび、登場しているので、ご注目されたし。

今回のランチョンの8本。左から紹介します

最初はクレマン・ド・リムーの「ル・クロ・デ・ドモワゼル2016」。ワイナリーはドメーヌ・ジ・ロレンス(Domaine J.Laurens)」。1980年代にシャンパーニュの造り手、ミッシェル・ドゥヴァンが立ち上げた、スパークリングワイン専門のワイナリーだという。キュヴェとよばれる、最初にしぼった果汁のみを使用する。職人気質な造り手だ。AOCではクレマン・ド・リムーとなる。冷涼なリムー産。

「ル・クロ・デ・ドモワゼル2016」は、シャルドネ60%、シュナン25%、ピノ・ノワール15%だということで、南フランスの強みのひとつ、よいシャルドネがたくさん収穫できる、が活かされている。シャルドネをこれだけ使って希望小売価格2,850円というのだから、魅力的だ。甘みのあるシャルドネの香り。シャンパーニュ同様の造りからくるものだろうけれど、ほどよい酵母の香りと熟成香にピノ・ノワールによるものか、ちょっと苦味もある。とはいえ、後味はスッキリで、スタートの一杯に向きそうだ。

つづいて、シャトー・リヴ・ブランク(Château Rives-Blanques)の「リムー オクシタニア 2016」。こちらはモーザックを100%使う、やや珍しい白ワイン。リムーは白ワインも樽での熟成が義務付けられているので、樽香がある。果実の熟した感じはあるものの、ヘヴィーではない。

13世紀から存在するという老舗ワイナリー「シャトー・ド・カステルノー(Château de Castelnau)」のヴィンテージ2018はピクプールという品種100%の白ワイン。ピクプールというのはそもそも、フランス語で舌をさす刺激、というような意味をもつ、ピックからきているそうだ。AOCはピクプール・ド・ピネといい、畑の南西側にはトー湖があり、そこは牡蠣の産地。牡蠣に合いそうな、酸味強めのワインかとおもったら、一瞬スパークリングワインのようなピンとした刺激があるものの最初だけで、若いワインながら、酵母由来と思われる旨味やまろやかさも感じられる。温暖な畑だそうで、夜間の収穫で、ちょうどよい熟度での収穫をしているようだけれど、プレスの優しさや低温発酵というワードもテクニカルシートにはあり、そのあたりが、上質さをあたえているのだろう。

白ワイン2種と合わせられた料理は、前菜 ジャガイモのヴルーテ/コンソメジュレ/帆立貝/キャビア

こちらはつづく赤ワイン2種と。魚 鮎/ブルターニュ産蕎麦粉/黒梅と黒糖のクーリ。ラングドックの高級赤ワインと鮎、という組み合わせです

このあとには赤ワインがやってくる。

最初はWINE WHAT online shopでも取り扱っている、ドメーヌ・デュ・パ・ド・レスカレット(Domaine du Pas de L’Escalette)の上級ワイン「ル・グラン・パ」。2015年ヴィンテージ。2014年にAOCとして認められたばかりのテラス・デュ・ラルザックという山中の産地にて、2003年からワイン造りに挑んでいる造り手の作だ。ワイン造りはロワールにて身につけているのだけれど、こういった人が、自分のドメーヌを持ちたい、と考えて、その地を求めるのがラングドック、ということが起るのも、自由にして広大な、そしてブルゴーニュなどよりはよほど土地も見つけやすいワインの産地、ラングドックの特徴。グルナッシュ、カリニャン、シラーのブレンドからなる「ル・グラン・パ」は、スパイシーさ、ミネラル感と熟した果実の甘みが共存する、今どきの高品位なワインだ。

ジャラール・ベルトラン(Gérard Bertrand)の「クロ・ドラ」は、参考上代26,500円の今回一番の高級品。このワインの産地、ミネルヴォワ ラ リヴィニエール(Minervois la Livinière)はラングドックで最高級のワインがうまれる地だ。このワインはブドウ栽培家の父を持つワイン一家の出で、ラグビーフランス代表でもあったジェラール・ベルトランが造っている。評価が高い造り手で、かつ、オーガニックにも積極的。このワインもビオディナミ認証をとっている。今回は、まだまだ固い、とのことでダブルデカンタージュしている、とのことだったけれど、2014年ヴィンテージでもまだ、熟成させたほうが、より実力を発揮するかもしれない。とはいえ、重たいワインではなく、まろやかな舌触りで、さわやかでありながら複雑な味わいだ。

ここからの2種の赤ワインとは肉を。仔羊のロースト/白インゲンとチョリソのラグー

つづいて筆者が同席した、アントニ・フィン氏が所属する「レ・ヴィニョーブル・フォンカリュー(Les Vignobles Foncalieu)」の赤ワイン、ラ・リュミエール。筆者としては、フィン氏と同席したから、というわけではなく、もっとも好きなワインだった。AOCは1985年にAOCに認定されているコルビエール。リムーから西にいったところだ。このワインは2008年にうまれていて、今回のヴィンテージは2014年。それぞれ1haの畑を担当する3人の生産者のワインを等分にブレンドしたもので、4,800本から5,000本しか造られない希少なワインだという。シラー70%、ムールヴェードル30%。口当たりは軽やかで、味には苦味、旨味、奥ゆかしい酸味がある。100%新樽熟成。

それから、マス・ド・ドマ・ガサック(Mas de Daumas Gassac)の赤ワイン、「マス・ド・ドマ・ガサック ルージュ」2011年ヴィンテージ。今回、このワイナリーを経営する、ギベール家のバジル・ギベールが来日した。バジルは4人兄弟の一人、ワイナリーは父親が始めたものだ、と説明。アニアーヌという村のガサック峡谷に、ドマ家が所有していた農家(マス)に惚れ込んだ両親が、そこのブドウで造り始めたワインでスタートし、南仏の高級ワインの造り手として、いまや大変評価が高い。生産量はごくわずか。今回のボトルもバジルが持参したものだ。創始者にしてバジルの父、エメ・ギベールがボルドーワイン好きだったこともあり、カベルネ・ソーヴィニヨンが中核。完熟したブドウのジューシーさ、ハーバルな風味、とろりとした口当たりなど、上質なカベルネ・ソーヴィニヨンだ。巷では、ボルドーの名門シャトーと比較されることもあるのだけれど、バジルも自信たっぷりだった。参考までにこちらの2017年ヴィンテージの参考上代は9,180円だそうだ。

左が「レ・ヴィニョーブル・フォンカリュー(Les Vignobles Foncalieu)」のアントニ・フィン、右がマス・ド・ドマ・ガサック(Mas de Daumas Gassac)のバジル・ギベール。AOCラングドック、および、IGPシュッド・ド・フランスのマーケティングマネージャー クリスティーヌ・モリーヌを挟んで

最後はデザートワインとしてジャン=クロード・マス エステーツ&ブランズ(Jean Claude Mas Estates and Brands)というワイナリーのD.A.ミュスカ デザートという、ミュスカ100%のライチのような風味のデザートワインが登場した。

以上が今回の、ランチで登場したワインたち。

冒頭に名前を出したAOCラングドック、および、IGPシュッド・ド・フランスのマーケティングマネージャー クリスティーヌ・モリーヌさんは、ラングドックのワインはそれぞれに個性的だ、と、個性を強調したのだけれど、筆者は、それは、この産地の若々しさにあるのか、と思う。産地も広ければ、生産本数も多い。品種も多様。造り手も様々。質へと舵を切ったことで、それぞれが自由に、思い描くワインを求めている。あんまり権威的にならないほうが、ここは面白いのかもしれない。あえていうのなら、ボディのしっかりした濃厚のワイン、というのは今回なかったから、暑い時期には爽やかなチョイスとして、ラングドックのワイン、いいのではないだろうか。東京の酷暑が、もうちょっと落ち着いたら……

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