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「ショウ・アンド・スミス」のデイヴィッド・ルミアーMWによるセミナー「アデレード・ヒルズの魅力」

フライング・ワインメーカーとマスター・オブ・ワインがつくる冷涼なオーストラリアワイン

さる8月30日(金)、東京・表参道で「ショウ・アンド・スミス」の営業/マーケティングを担当するデイヴィッド・ルミアーMW(マスター・オブ・ワイン)のセミナー「マスター・オブ・ワインが語るアデレード・ヒルズの魅力」が開かれた。「ショウ・アンド・スミス」はマーティン・ショウさんとマイケル・ヒル・スミスMW、いとこ同士のふたりの青年が1989年にオーストラリアで世界一のワインをつくろう、という高いこころざしをもって立ち上げたワイナリーである。

マーティン・ショウとマイケル・ヒル・スミス

左から、デイヴィッドさん、大澤さん、カヴィータさん。

今回のセミナーは、「ショウ・アンド・スミス」の輸入元となったモトックスが開いたもので、講師は冒頭に記したようにデイヴィッド・ルミアーMWと、ショウ・アンド・スミスのアンバサダーのカヴィータ・フェイエーラさんがつとめた。通訳は、モトックスのマーケティング部ブランドマネージャーの大澤貴子さんによる。

デイヴィッド・ルミアーMW(以下デイヴィッド)「本日は、『ショウ・アンド・スミス』と『トルパドル』、ふたつのブランドを紹介させていただきます。

まず、オウナーのご紹介です。ちっちゃい毛のない方と大きい毛のない方がいらっしゃいます。彼らはいとこで、長い間お互いを知っている間柄で、ふたりとも異なるところでワインに関わっていて、ふたりの長年の夢であるワインをつくろうと、1989年に立ち上げました。

実際にやろうと決めたのはフランスのパリでランチをとっていて、1本目のワインが終わり、2本目のワインが終わる頃に決断していたそうです。

マーティン・ショウ

マイケル・ヒル・スミスMW

マーティン・ショウは醸造家として若くして地位を築き、フランス、スペイン、チリ、オーストラリア、ニュージーランド、イタリアでコンサルタントをしています。いわゆる『フライング・ワインメイカー』です。世界中のワイナリーの施設を見て回ったので、ショウ・アンド・スミスの設備にも大きな影響を与えました。私どもの醸造設備が清潔で、素晴らしい環境なのはそのお陰です。

マイケル・ヒル・スミスはイギリス人以外で初めてMW(マスター・オブ・ワイン)の資格をとりました。いま、世界30カ国にMWがいますが、そのトビラを開けた人です。現在、世界中のワイン・コンペティションでジャッジの責任者をつとめる一方、オーストラリア・ワインを広める重責にあります。

ワイナリーをつくるにあたって、ふたりは冷涼な産地として知られるアデレード・ヒルズを選びました。ブドウの特性を出すには冷涼な環境がいい。シャルドネ、ピノ・ノワールは、バロッサのような暖かい産地では品種のよさが出てこない。アデレード・ヒルズだからこそ、素晴らしいワインがつくれると考えたのです。

アデレード・ヒルズの位置

ショウ・アンド・スミスには3つのキイがあります。

標高が高い、涼しい、雨が多い、の3つです。これがアデレード・ヒルズとほかの地区を分ける大切なカギになります。南東に70km、東西に30kmの細長い産地で、北に行くとバロッサ・ヴァレー、南に行くとエデン・ヴァレー、マクラーレン・ヴェイルがありますが、私たちの畑のほうが標高が高いので、これらを見下ろすことになります。

雨が多いのは、南西から吹く湿った風がマウント・ロフティ山脈に当たって雨を降らせるからです。標高の高い地域にあるレンズウッドという畑には、年間1200mm、そこより低いバルハナという畑には年間700mmぐらい雨が降ります。10kmしか離れていないアデレード市内は乾燥していて、降水量は年間500mmとかなり少ないのとは対照的です。

レンズウッドのブドウ畑

マウント・ロフティ山脈は750mぐらいの山の連なりで、標高が高いと夜間の気温が下がります。アデレード市内とは10~11℃違い、気温が下がると、ブドウが酸をしっかり蓄えながら成長できます。

アデレード・ヒルズは、ブドウ畑が点在しています。コート・ドール(ブルゴーニュ)だとブドウ畑だらけだけれど、どちらかというとシャンパーニュ地方のように、ひとつひとつの畑が離れています。

気温は暖かく、丘なので場所によって暖かさは変わってきます。涼しい場所は比較的ブルゴーニュに近い、とは言えます。

アデレード・ヒルズには、ふたつのブドウ畑、バルハナとレンズウッドがあります。標高も土壌も異なりますから、どのサイトで、なにを育てるのか、慎重に見極めています。

ここまでで質問は?

バルハナのブドウ畑

バルハナの土壌は、水はけの良いサンディ・ローム(砂壌土=砂土(さど)よりも粘土の多い土壌)土壌で、その下に粘土質があって、さらにその下に小石がたくさんある、非常に古い、5億年前の土壌です。栄養素がほとんどない、厳しい土壌で、ブドウの木の勢いを自然に抑えてくれます。

雨が降るので灌漑施設は必要ありません。でも必要に応じて雨水を使えるように池をつくっています。

バルハナでは、ソーヴィニヨン・ブランとシラーズを、より標高の高いレンズウッドではピノ・ノワールとシャルドネをつくっています。

バルハナ(左)では主にソーヴィニヨン・ブランとシラーズ、より標高が高くて冷涼なレンズウッド(右)ではシャルドネとピノ・ノワールが栽培されている。

私たちにとってもっとも重要なのは、ブドウ畑で作業し、卓越したブドウをつくることです。

斜面地にあるため、トラックは入れません。でも、問題ありません。ほとんどの収穫は手で行なっているからです。剪定も含め、すべての作業は手で行なっています。

いま、畑を良くするために、レイヤリングという作業をしています。古いブドウの木の幹から枝をとって、木と木の間に植える作業で、ブドウの株の数を倍にしているのです。

これまでは、1.5メーター間隔だったのを、現在、0.75メーターにしています。株は倍にしていますが、収穫高は半分にしています。この作業により、ブドウの房を小さくすることができると考えています。ブドウの房が小さくなるということは凝縮度が上げる。タンニンの量が増え、ブドウの皮とジュースの比率で言えば、皮が多くなります。

オーガニック、さらにはバイオダイナミックを取り入れています。バイオダイナミックはその哲学ではなくて、土壌環境を健康にするために一部、行なっています。微生物の活動を活発にしてやることが目的です。

栽培では、環境マネージメントに力を入れ、オープン・キャノピーというつくり方をしています。たくさんの葉っぱがつくと、カビの影響を受けたり、リスクが大きくなるので、風が通るようにしています。

ワインづくりでは、介入しすぎないことを重要視しています。私たちはブドウを栽培している土地をいかに表現するかを重視しています。トレンドに合わせたワインをつくろうとは考えていません。

あまり介入しないといっても、さまざな取り組みを行っています。樽、ステンレス、コンクリートの発酵槽があって、異なるクオリティのワインができることがわかっています」

このように、ショウ・アンド・スミスは論理的かつ王道的なアプローチでワインづくりに取り組んでいることが、デイヴィッドさんのお話からうかがい知れるのだった。

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