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「ショウ・アンド・スミス」のデイヴィッド・ルミアーMWによるセミナー「アデレード・ヒルズの魅力」

フライング・ワインメーカーとマスター・オブ・ワインがつくる冷涼なオーストラリアワイン

これまでで一番懸命なことはトルパドルの畑を買ったこと

マーティン・ショウさんとマイケル・ヒル・スミスMW。トルパドルの畑にて。

カヴィータ「では、さらに寒いところでつくっているタスマニアの紹介に移ります。タスマニアを訪れたことがある人は? 1人だけ? みなさん、オーストラリアにホリデイでいらっしゃっらなければ!

タスマニア島はオーストラリアの最南端になります。この下は南極です。2011年、(マーティン・ショウとマイケル・ヒル・スミスMWの)ふたりが、最近タスマニアが話題になっているから、行ってみよう、ということで出かけました。このときはブドウを買うとか、まさか畑を買うとか考えていなかったんです。ふたりは北から南に向かって、あちこちのワイナリーを訪ねて、いろいろと試飲しました。で、これは『トルパドル』から収穫されたワインだ、これが最高だ、とどこのワイナリーでも言われました。

魔法のことば『トルパドル』の畑を見に行かなければ、とふたりはタスマニア南東部のハワードという街から20分ぐらいで行ける畑に行ったんです。トルパドル畑は1988年に栽培が始まっていて、品種はシャルドネとピノ・ノワールのみです。2011年までは栽培農家で、ワインはつくっておらず、ほかのワイナリーにブドウを売っていました。

で、この畑に到着して2分、クルマ止めがあって、坂をあがる小道があって、その坂から畑を見て、2分後にはマーティンとマイケルは、『これは買わなければ』と、本当に瞬発的に買うことになりました」

新しい神話の誕生にふさわしいエピソードである。『トルパドル』の最初のヴィンテージは2012年。カヴィータさんによると、タスマニアのワイン業者の間ではトルパドルが卓越した畑であることは有名だったけれど、消費者は知らなかった。いま、消費者にもわかるようになったのは、ショウ・アンド・スミスによって、その名前がラベルに書かれるようになったからだ。

トルパドルはタスマニア島の南端にある。

カヴィータ「この栽培地域は、コール・リバー・ヴァレーというサブリージョンで、南タスマニアのなかでもっとも南で、寒い地域です。

通常寒い地域は雨が降るんですが、ここは雨が非常に少ない地域になります。この寒い地域で栽培するには、いかに熟成させるかという課題があります。寒い場所は雨が降るので、病気の脅威からいかに守るかという問題にぶち当たる。ところが、ここは乾燥しているので、完璧に成熟するまで栽培することができる。なので、最高の状態にまで成熟することができる最高の場所ということになります」

タスマニアの地図を見ると、中央部に大きな山脈がある。これによって雨の降る場所が限定され、南東部は乾燥して年間500mmしか雨が降らないのだという。

かのジャンシス・ロビンソンが、「マーティンとマイケルがこれまでやった一番賢明なことはトルパドルの畑を買ったことだ」と言っています。そう、カヴィータさんは誇らしげに付け加えた。

トルパドル ヴィンヤード シャルドネ 2018
これぞトルパドルのシャルドネ・スタイル。しっかりした酸、テクスチャーの軽さとフレイバーの強さのコンビネーションを特徴とする。2018年はレモン・シトラス、レモン・ソーダの香りを伴う、期待通りのナチュラルな酸がある。希望小売価格6800円

トルパドル ヴィンヤード ピノ・ノワール 2018
これぞトルパドルのピノ・ノワール・スタイル。アロマティックで、ミディアム・ボディ、フレッシュな酸と熟したタンニンがある。レンズウッドのピノ・ノワールがブルゴーニュでいうとビラージュ級なのに対して、「グラン・クリュかプルミエ・クリュ」とデイヴィッドさん。希望小売価格8000円

カヴィータ「では、テイスティングしましょう。

『2018年のシャルドネ、トルパドル』です。オーストラリアでは今日が発売日になります。オーストラリアでタスマニアのワイン生産量はたったの1%。そのなかで、トルパドルは3%に過ぎません。

このワインを飲むと、土壌をものすごく反映していると感じます。砂岩質の土壌でシリカを含んでいる。キラキラした酸を感じます。この地域はヴィンテージのバリエーションがあり、年々の特徴が出ます。どのヴィンテージにも特徴的なのはきれいで長い色調の酸です。この畑は、酸が高いのです。醸造面でそれを保つために100%マロラクティックにしています」

デイヴィッド「私には、ブラン・ド・ブランのシャンパーニュと似ているように感じられます。卓越した酸がある。その酸がエレガントで、少しビスケットのような要素もあります。さらに柑橘系の果実のような味わいが出ている。凝縮したエネルギーが満ち溢れたブドウですので、228リットルの小樽を使います。その分、酸素との接触を多くして、バランスを保ってあげる。ただ、樽の要素が果実の要素を隠すことはない。果実自体が強いから、樽をぜんぜん感じない。すべて樽発酵で、30%フレンチオークの新樽を使っています。『樽をまったく感じない。本当に樽を使っているんですか(笑)』とおっしゃるかたもいます」

カヴィータ「私がアマン東京で、日本の住んでいたとき、シェフから日本にはダシという素晴らしいものがあるということを知りました。トルパドルのシャルドネからはダシとの共通点を感じます。ダシというのは、軽やかなボディなのに非常に複雑で凝縮度のあるフレイバーがあります。いいシャルドネは軽やかさがあって複雑さがあって恐縮感がある。素晴らしいダシと同じような要素があるのです。これは私たちのワインだけではなくて、いいワインにつねに感じることです。いいダシは、なにがなにかと限定することはむずかしい。いいシャルドネも同じです。これは何%オークだとか、ブドウはどこからきているのかとか、いいものであればあるほど、限定しにくいものです」

「メチャクチャうまい!」としか記者が表現できないのもむべなるかな。

カヴィータ「最後にトルパドルのシングル・ヴィンヤードのピノ・ノワールについて。先ほどのアデレード・ヒルズのピノ・ノワールに較べるとぜんぜん違います。トルパドルは、非常に凝縮感とフルーツの強さと複雑味が出てきます」

デイヴィッド「アデレード・ヒルズのピノ・ノワールには赤系の果実ーーストロベリー、クランベリーとかラズベリーが見えますが、トルパドルは、よりラズベリーの要素があって、ブルーベリーのようなもう少し濃い果実の要素が出てきます」

カヴィータ「ピノ・ノワールは人気のあるブドウ品種で、フルーティさがあります。でも、そのフルーティさは、深みがない、複雑味がない、というネガティブにもなります。オーストラリアでは、フルーティの要素をつけるのは簡単です。でも、私たちが目指しているのは、落ち着いたエレガンス、酸があって繊細さがあるピノ・ノワールです。複雑さとエレガンスがあってこそ素晴らしいと考えている。そこで、トルパドルは50%全房発酵を行なっています。

この畑がいかにすぐているのかは、1日でも話尽くせない。ぜひ飲んでいたただいた皆さんの主観で判断していただきたいと思います。タスマニアから、こんなに離れた日本で飲んでいただける機会を設けられたことを光栄に思っています。どうでしょう、ワインを楽しんでいただけたでしょうか」

最後にモトックスの大澤さんから供給量について説明が加えられた。それによれば、「ショウ・アンド・スミス」のシングル・ヴィンヤードものは年間200〜250本、「トルパドル」は200〜400本ということである。すぐになくなっちゃうかも……。

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