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紫貴あき × 柳 忠之によるシャンパーニュ・テイスティング 【ブリュット編】

大手メゾン30アイテムを一挙比較試飲しました

ピノ・ノワール主体の7アイテム

 さて、これからのグループは、ピノ・ノワール主体で基本がステンレス貯蔵のもの。7本続きます。

紫貴 「メゾンマム」(13)は、きちんとピノ・ノワールならではのストラクチャーを表現していますね。それより、ロースト系の香ばしさが特徴的なのが「パイパー・エドシック」(14)。

 「カナール・ドゥシェーヌ」(15)からはキャラメル香を感じますよ。えっ、これってフランス国内第2位のシェアなの? 正直、今まで飲む機会がほとんどなかったけど、試飲して納得。見直しました。

紫貴 フランス人の心に刺さるシャンパーニュなんですね。「ドゥ・ヴノージュ」(16)と「ボワゼル」(17)は、どちらも瓶内熟成期間が長く、熟成感を堪能するタイプ。

 熟成にもいろいろあって、醸造時のドサージュ(糖分を含むリキュール添加)の影響もあるんですよね。ドサージュの量が多いと、若々しさは保つけれど、メイラード反応(色素が褐変し独特の香りを生み出す反応)の可能性が高くなる。

紫貴 ドサージュだけの勉強会があるくらい、深いんですよね。

 また、長期熟成中に起こるオートリシス(酵母菌の分解)から加わる風味もあります。そこを判断しながら我々は試飲をしていくわけで。さて、「デュヴァル=ルロワ」(18)はどうでしょう。

紫貴 女性醸造家が造っていることが関係しているのか分かりませんが、丸みのある味わいですね。

 ふくよかなのに、重くはない。西京味噌味に合いそう。

紫貴 さわらの西京焼?

 いや、パーティ料理を挙げているのに、西京焼はないか。肉汁がジュワッとくる料理も合うので、合う料理は豚カツにしましょう。

紫貴 それもまたパーティ料理になるか微妙な一品ですが。次の「エドシック・モノポール」(19)は、ピノ・ノワールが70%。どんどん比率が上がってきて、さらにパワフルに。

 パワフルなのは、醸造によるものかもしれません。ドサージュが多そう。さて、ここでピノ・グループが終了したところで、ひとつ特殊なシャンパーニュを試飲しましょう。「シャルル・エドシック」(20)は、瓶内熟成が最低4年。以前は6年熟成させていたこともありました。リザーブワインを40%も使い、もうクリュグのレベルかと。

紫貴 さきほど試飲した「パイパー・エドシック」(14)と同じグループ企業ですけど、あちらはよりカジュアルで、こちらはかしこまって飲みたいタイプ。

 リザーヴワインはステンレスタンクで貯蔵しています。

13 メゾン マム

マム グラン コルドン NV

紫貴 ピノ・ノワール主体ならではのストラクチャーを感じる。熟成期間20カ月とやや短めだからか、フレッシュ。

 世界的デザイナー、ロス・ラブグローブの手掛けたボトルは赤い帯部分が立体的で、パーティウケ抜群。ただ、おかげで醸造現場ではルミアージュを特別なプログラムに変えたとか。焼鳥なら白レバーを塩で。

おすすめ:焼鳥

品種構成:ピノ・ノワール45%、シャルドネ30%、ピノ・ムニエ25%
輸入元:ペルノ・リカール・ジャパン
希望小売価格:6,150円

14 パイパー・エドシック

エッセンシエル エクストラ ブリュット NV

紫貴 燻製や、ローストしたような香ばしさあるので、ローストビーフにピッタリ。数年前までキャラメルコーヒーも香っていたが、今はだいぶ穏やかになった。

 都会のクラブで流行っていたバブル時代を経て以降、造りはかなりシリアスになった印象あり。焙煎的な香りのニュアンスは、焼鳥のソリレスにも合うはず。

おすすめ:ローストビーフ

品種構成:ピノ・ノワール50~55%、ムニエ20~25%、シャルドネ15~20%、リザーヴワイン15~20%
輸入元:日本リカー
希望小売価格:6,500円

15 カナール・デュシェーヌ

キュヴェ・レオニー ブリュット NV

紫貴 ハーブやスパイスがクッキリ香り、ストラクチャーもきちんと構築しているところにピノ・ノワールらしさを感じる。焼鳥なら塩で、あえて胡椒を振りたい。

 酸が尖っておらず、穏やかで丸みがある。ドサージュによるのではない、果実がもともと持っていた甘味があり、余韻はキャラメルのよう。とろみのあるチーズと。

おすすめ:チーズ

品種構成:ピノ・ノワール50%、ピノ・ムニ エ25%、シャルドネ25%
輸入元:徳岡
希望小売価格:6,000円

16 ドゥ・ヴノージュ

ドゥ・ヴノージュ・コルドン・ブルー・ブリュット NV

紫貴 メイラード反応によるキャラメルっぽさが、ほかの味わい要素と絶妙な塩梅を保つ。照焼系の料理に合わせたい。

 ドサージュが6.1。あと0.1減ったらエクストラ・ブリュットで、キリッとしていないわけがない。3年の瓶内熟成によって、熟成感を加味した面白い個性に到達している。照焼味の焼鳥なら、つくねを。

おすすめ:焼鳥

品種構成:ピノ・ノワール50%、シャルドネ25%、ピノ・ムニエ25%
輸入元:ヴィレッ ジ・セラーズ 
希望小売価格:6,800円

17 シャンパーニュ・ボワゼル

ボワゼル・シャンパーニュ ブリュット トラディション NV

紫貴 泡がやさしめ。36カ月瓶内熟成を行うことによる熟成感をバッチリ感じる。キラキラと勢いのある人たちが集まるパーティにふさわしいキャラクター。合わせたい料理はエイジングビーフ。

 色が濃いめで、きのこが香り、熟成をひとつの個性としている。ローストビーフなら、ゴージャスにトリュフソースを添えて。

おすすめ:ローストビーフ

品種構成:ピノ・ノワール55%、シャルドネ30%、ピノ・ムニエ15%
輸入元:ピーロート・ジャパン
希望小売価格:8,520円

18 デュヴァル=ルロワ

ブリュット・レゼルブ NV

紫貴 やわらかくふくよか。黒ブドウ比率が高く、アフターに苦みを感じる。肉料理と。

 メゾンのあるヴェルテュはシャルドネの名産地、コート・デ・ブラン内に位置するが、この一帯だけ重い粘土質土壌で、本来はピノ・ノワール向きだった。原点回帰でピノの比率を高めたのがこちら。まろやかでソフトでジューシー。

おすすめ:豚カツ

品種構成:ピノ・ノワール60%、ピノ・ムニエ30%、シャルドネ10%
輸入元:アイコニック ワイン・ジャパン
希望小売価格:6,300円

19 エドシック・モノポール

ブルートップ ブリュット NV

紫貴 とてもトースティな風味で、ピノ主体のなかでは最もパワフル。テクスチャーがリッチでなめらか、しかもトロっとした舌触り。寒い季節、トロトロとろけるリッチなチーズと合わせ、高めの温度で飲みたい。

 ふくよかで丸みあり。このとろみのあるテクスチャーに、みそ田楽など赤みそ系の料理を合わせたくなる。

おすすめ:チーズ

品種構成:ピノ・ノワール70%、シャルドネ20%、ピノ・ムニエ10%
輸入元:ヴランケン ポメリー ジャパン
希望小売価格:6,400円

20 シャルル・エドシック

ブリュット レゼルヴ NV

紫貴 最低熟成期間4年と聞いていたが、予想以上に若々しい印象。キャラメル香ももちろんあるけれど、酸が活き活きとしてフレッシュ。パーティといっても立食でなく、きちんと座って飲みたい。

 過去リリースされたものより、熟成感は控えめ。味のバランスがよく、奥行きもある、ガストロノミーのためのシャンパーニュ。

おすすめ:スモークサーモン

品種構成:シャルドネ40%、ピノ・ノワール40%、ムニエ20%
輸入元:日本リカー
希望小売価格:8,000円

大樽リザーヴワイン使用の5アイテム

 いっぽう、次の5本は、リザーヴワインに大樽を使用しているものをグループにしました。最近は、NVのブリュットでも樽を使うものがこんなに多くなったのだな、とあらためて感じます。

紫貴 大樽熟成のシャンパーニュは、醗酵も樽を使うところが多いですか?

 醗酵自体はたいがいステンレスですね。「ドゥヴォー」(21)は、35%が大樽でのリザーヴワインで、5年の瓶内熟成を経ているのですが、味がまったく落ちていなくて造りの上手さが伝わります。

紫貴 「ロデレール」(22)は、ブリュットばかりを飲み比べてみると、その素晴らしさが引き立ちます。

 味わいのレイヤーが何層にも渡っている。大御所の貫禄ですね。次の「ジャクソン」(23)は、醗酵・熟成、ともに樽を使っている珍しいパターン。

紫貴 これ、「いえーい」と騒いで飲むシャンパ―ニュでは、けっしてありませんね。

 ええ、そこを意識してくれる人と飲むべき1本です。次の「ランソン」(24)は、シェフ・ド・カーヴが代わってから大きな変革の時期を迎えています。以前はステンレスタンクしか使わなかったのが、今はもう大樽を使うは、ビオはやるは。そして、読者の皆さんにぜひ見直してほしいのが、「ヴーヴ・クリコ」(25)。 こちらも2008年から大樽熟成をスタートさせています。

紫貴 華やかなイメージに若い女性は惹かれがち。でも、じつはかなり通向けの味わいという。(21)~(25)の大樽リザーヴ・グループは、好き嫌いが分かれそうなものもチラホラありましたが、どれもバリューは高いと思います。

21 ドゥヴォー

キュヴェ D NV

紫貴 トースト香がして、長期熟成により口当たりがなめらかに。火が通っていない葉巻のニュアンスも。9、10°Cほどのやや高めの温度で、大きめのグラスを使って飲むと、良さがさらに際立つ。

 いいブドウを 選りすぐって造られるキュヴェD。炒った アーモンドの香ばしさ、シャルドネのフ レッシュさが感じられる。

おすすめ:ローストビーフ

品種構成:ピノ・ノワール50%、シャルドネ50%
輸入元:国分グループ本社
希望小売価格:9,000円

22 ルイ・ロデレール

ルイ・ロデレール ブリュット・プルミエ NV

紫貴 フレッシュ感と熟成感がいい具合で共存。リザーヴワインをあえて木樽で行っているメリットがきちんと伝わる。このよさを理解できる人と一緒に飲んでほしい。

 リザーヴワインも門出のリキュールも、プレスティージュのクリスタル用に造ったものを使用しているからこその味わい。非の打ちどころがない。

おすすめ:ホタテ

品種構成:シャルドネ40%、ピノ・ノワール40%、ピノ・ムニエ20%
輸入元:エノテカ
希望小売価格:7,200円

23 シャンパーニュ ジャクソン

Champagne Cuvée #742 NV

紫貴 ヘーゼルナッツが香る、玄人好みのスタイル。静かな環境で飲み進めたい。酸化的なニュアンスが苦手な方は低めの温度で。

 2014年産をベースにアサンブラージュし、3年熟成。ドサージュは1.5と、ほぼないに等しい数値。イベリコ豚の高級生ハムを食べるなら、あえて温度を高めにして飲み、脂の融点に近づけても。

おすすめ:生ハム

品種構成:シャルドネ50%、ピノ・ノワール25%、ピノ・ムニエ25%
輸入元:ヴァン パッシオン
希望小売価格:10,000円

24 ランソン

ランソン・ブラックラベル・ブリュット NV

紫貴 酸が伸びやかで、キリリと引き締まる緊張感がある。酸化的ニュアンスはなく、全体からクリーンな印象。脂ののった魚料理と。

 ピノ・ノワール比率の高さからくる力強さを持ちながら、マロラクティックをしないことによるキレのよさ、フレッシュネスもあり、さらに大樽のリザーヴワインからくる複雑味も加わる。

おすすめ:ブリしゃぶ鍋

品種構成:ピノ・ノワール50%、シャルドネ35%、ピノ・ムニエ15%
輸入元:アサヒビール
希望小売価格:6,000円

25 ヴーヴ・クリコ

イエローラベル ブリュット

紫貴 パワフルながら重すぎないのは、全体をまとめるフレッシュな酸があるから。かすかに酸化熟成のニュアンスもある、かなり玄人向けの造りのわりに、キャッチーなプロモーションやイベントばかり注目されがちなのがもったいない。

 実際に、品質はめちゃくちゃ高い。ボディには厚みがあり、ふくよかでパワフル。

おすすめ:フライドチキン

品種構成:ピノ・ノワール(50~55%)、シャルドネ(28~33%)、ピノ・ムニエ(15~20%)
輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
希望小売価格:7,250円

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