WINE WHAT 2020年5月号にて特集したイングリッシュワイン。世界的に、そして、ここ日本でも選択肢が拡大中の注目の産地だ。このページでは、スパークリングワインのみならずイングリッシュスティルワインも日本で楽しめるケント州のワイナリー「ハッシュ・ヒース・エステート」のワインたちを、おなじみ、紫貴あきさんが一挙にテイスティング!

ハッシュ・ヒース・エステートとは?
ロンドンから車で1時間半ほどの距離にある、農業の盛んなケント州のワイナリー。
イギリスには意外と外国人の手によるワイナリーも多いのだが、こちらはオーナーも醸造家もイギリス人。ロゼ・スパークリングは2012 ロンドン・オリンピックの公式スパークリングに選ばれ、豪華列車オリエント・エクスプレスに採用。チャールズ皇太子やボリス・ジョンソン首相も愛飲している。栽培は生物多様性に配慮し化学肥料を使用せず、ブドウはすべて手摘み収穫。

イギリスはワイン通である

イギリス人を対象としたとあるアンケートによると、国民の9割が「自分はワイン通である」と自負しているとか。そんなお国柄のイギリス国内で造られたワインは、ワイン通のプライドがかかっていて大いに期待できます(笑)。

スパークリングから評価

さて、今回私が試飲したのは、ハッシュ・ヒース・エステートのスパークリング5種とスティル4種。このワイナリーが一躍脚光を浴びるようになったのは、ロゼ・スパークリングからだとか。これ、ブリティッシュ・エアウェイズのファーストクラスでサーブされた初のイギリス産スパークリングなんですね。ブリティッシュ・エアウェイズは、ワインの選定が非常に厳しいことで知られています。イギリスはマスター・オブ・ワイン(MW)の本拠地で名だたるMWを輩出している国。厳しくならないはずがありません。

私が個人的に惹かれたのは「スカイ・ブラン・ド・ブラン2014」。深みを出すのが難しいとされるブラン・ド・ブランですが、シャンパーニュを意識したかのような、「負けてられるか!」という気合が伝わってきます。同じ石灰質土壌ながら、シャンパーニュとイギリスも同じ大陸性気候。いちど並べて飲み比べてみても面白いですよ。

紫貴あきによるテイスティングコメント その1 スパークリングワイン編




バルフォア レスリーズ・リザーブ
BALFOUR LESLIE’S RESERVE

品種 ピノ・ノワール/シャルドネ/ ピノ・ムニエ
価格 6,000円

穏やかな泡立ち。レモンやグレープフルーツの柑橘、パンドミーのようなオートリシス(酵母の自己分解)からくるフレーバーが穏やかに香る。味わいはリザーブワイン3年分を使っているにもかかわらず、フレッシュさ健在。食前・食中のどちらにも使える万能な1本。

左から2番目
バルフォア スカイ・ブラン・ド・ブラン 2014
BALFOUR SKYE BLANC DE BLANCS

品種 シャルドネ
価格 9,000円

白桃などの有核果実ほか、パン・デピスなど酵母由来の香りが強く感じられる。時間の経過とともに蜂蜜の香りも現れ、深みと複雑味が楽しめる。口当たりはリッチでスムーズ。洋風ならバターを使ったクリーミーな料理、和風ならゴマだれを使ったリッチな料理を。

右から2番目
バルフォア 1503 ロゼ
BALFOUR 1503 ROSE

品種 ピノ・ノワール/シャルドネ
価格 4,000円

色調は非常に淡いロゼで、泡はきめ細やか。木いちご、野いちご、バラが香り、フレッシュでチャーミング。味わいも、いちごを頬張っているようなヴィヴィッドで若々しい印象。わずかにピンク・ペッパーのニュアンスも。サマーパーティーの最初の乾杯にうってつけ。


バルフォア ブリュット・ロゼ
BALFOUR BRUT ROSE

品種 ピノ・ノワール/シャルドネ/ピノ・ムニエ
価格 9,000円

サーモン系の色調からも熟成感が見てとれる。やや甘いレッド・チェリー、トースト、スパイスが香り、味わいにはストラクチャーあり、若さと熟成感が交互に迫ってくる。全体に力強いので、ローストビーフや、ソース・ポワブラードを添えたジューシーな赤身肉の料理と。

バルフォア 1503 クラシック・キュヴェ
Balfour 1503 Classic Cuvee

品種 ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ
価格 4,000円



淡い黄金色。数珠玉のように連なる泡が美しい。洋ナシ、レッドチェリーにエルダーフラワー、アップルパイを思わせるイーストオートリシス(酵母の自己分解)も華やぎを添えている。フルーティさとリザーブワイン由来の深みはまさにブレンドの賜物。この微妙なさじ加減に思わず唸らされる。乾杯からメインディッシュまで通して楽しめる1本だ。

ハッシュ・ヒース・エステートのスティルワインは?

スティルワインへ移りますと、珍しい品種として目に付くのがバッカスとレゲント。バッカスはリースリングなどを掛け合わせた交配品種です。リースリングの個性を残しつつ、より耐寒性があり、早熟です。レゲントのほうは、交配品種同士をかけ合わせた、ドイツ発の比較的新しい品種。「バルフォアナネッツ・ロゼ」にブレンドされています。

このブレンドという作業が、じつはイギリスワインを語る上で重要なポイントです。バッカス100%の「バルフォアリバティーズ・バッカス」でも、単一品種ながら7つのタンクを使い、それぞれ違う酵母で醗酵させた上でブレンドしています。自由度の高いブレンドで、バランスのとれた味わいをいかに実現するか? 造り手の技量とセンスが問われます。また、ハッシュ・ヒースでは、栽培の世界で知らぬ者はいないステファン・スケルトンMWが監修。栽培の巧みさも品質にきちんと表れていると思います。

紫貴あきによるテイスティングコメント その2 スティルワイン編




バルフォア スカイズ・ブレンド 2018
BALFOUR SKYE S BLEND 2018

品種 バッカス/シャルドネ/ピノ・ブラン
価格 3,500円

ライム、シダのようなグリーンノートとミネラルをしっかり感じる。味わいは酸がフレッシュでキレがいい。わずかにシュールリーのテクスチャーもあり、なめらかさに貢献。豚しゃぶなどポン酢を添える料理と。サンセールが好きな方は、一度こちらを飲んでみてほしい。

中央
バルフォア リバティーズ・バッカス  2018
BALFOUR LIBERTY S B ACCHUS 2018

品種 バッカス
価格 3,500円

淡いレモングリーン色。ピュアなマスカット、エルダーフラワー、コリアンダーシードが香る。樽醗酵を行っているが、香りからはまったくそれを感じさせない。酸は良質でしなやか、アフターにはわずかに心地よい苦みあり。白桃のカプレーゼなど、フルーツ入りのサラダと。


バルフォア ナネッツ・ロゼ  2018
BALFOUR NANETTE S ROSE 2018

品種 レゲント/ピノ・ノワール/シャルドネ /ピノ・ムニエ
価格 3,500円

いちご、レモンスグラスが香る。わずかにえぐみに似た苦みがあるのがポイント。海沿いの産地ゆえのオーシャン・ミネラルを感じる。最近流行りの淡いロゼに比べるとよりパワフルで、ボルドーのクレレに近いイメージ。苦味にリンクする春野菜の天ぷらやラタトゥイユなどと。

バルフォア ルークズ ピノ・ノワール
Balfour Luke’s Pinot Noir

品種 ピノ・ノワール
価格 4,500円



淡いラズベリーレッド、リムはわずかにピンクがかっている。アセロラ、ハスカップ、スミレの花。かすかに香るビーツや皮革っぽさがアクセントになっている。柔らかく滑らかなタンニンに生き生きとした酸とフレッシュな果実味が心地よい。伸びやかな余韻には心地よいミネラルが伴う。フレッシュチーズはもちろん赤身魚を漬けにしたものにも◎

イングリッシュワインの将来を占う

今後、イギリスはニュージーランドと同じ現象が起きるのでは。 「産地として後発な分、経験豊富な他国のいいとこ取りができる」「最初から計算した上で畑や品種を選定し、キャノピー・マネージメントを行える」「多くのMWの英知が集結」と好条件が揃っていますし、気候条件のおかげで「ブドウのハングタイムが長い」というアドバンテージもある。あっという間にトップへ躍り出るはずです。なかでもハッシュ・ヒースはどのワインもエレガント。2002年に植樹したブドウで、すでにこれほど高いクオリティなのですから、さらに樹齢が高まる将来も楽しみになりました。



シャンパーニュは当然知っているような玄人の集まる持ち寄りワイン会に、イギリスのスパークリングを持っていくと「あ、この人はワインを知っているな」と思われますね。通な自分をアピールしたいときには、ぜひ(笑)。

価格はいずれも税別です