イギリスはテイストの裁定者だ。世界の名品の歴史を紐解けば、そこにイギリスあり。そしていまや、イギリスは 名品の造り手でもあるではないか。いまこそ、英国に酔おう!
英国憧憬 

ワイン英国の、ただならぬ関係

日本と同じ島国であり、ヨーロッパ大陸とは海を隔てて位置するイギリス。今でこそイギリス王室が領地内で自前の王室ワインを造るまでになったが、もともとブドウを栽培するには気候が厳しく、ワインよりウイスキーやエールの生産国として知られている。

手っ取り早く酔いたい労働者階級がウイスキーやエールを好み、西インド諸島からキニーネを運ぶようになってからはジンもポピュラーに。一方、ワインは長らく他国から輸入するばかりで、上流階級向けの飲み物であった。

ワインがイギリスで愛されるようになったきっかけは、12世紀にさかのぼる。

ヘンリー2世が現フランスの西半分を支配下に置き、すでに名声を高めていたフランスワインがイギリスへと運ばれ、貴族たちが愛飲するようになった。ヘンリー2世の父親が征服した土地と、結婚した奥方の土地が合わさり、「濡れ手に粟」状態で入手した所領だったが、ワインの運送や関税で金が動き、大陸とイギリスをつなぐワインビジネスの筋道が形作られていくことになる。

ただ、残念ながら英仏間の百年戦争後、大陸の土地はフランスが奪還。以降もフランスとの戦は続き、ワイン銘醸地を再び手中に収める夢はかなわないまま今日に至っている。

さて、フランスとのワイン交易は不安定な最中でも、ポルトガルとは600年にも及ぶ同盟関係を保ってきて安泰。18世紀にシェリー、ポルト、マデイラが登場して以来、イギリス人がこぞって高品質のアイテムを選りすぐった上で取り寄せている。

18世紀はちょうど、イギリスが大金も船も意のままに動かせる貿易大国になったタイミング。ロンドンに人口が一極集中していたイギリスは、消費と商業規模のパワーで他国を圧倒。ワインの世界でも一気に存在感を強めていくことになる。

同時に、植民地の拡大にも力を入れ、コモンウェルス(英連邦)に所属するオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのほか、チリやアルゼンチンも19世紀にはイギリスの経済支配下に。現在どの国も新世界の代表的なワイン産地となったのは、儀式でワインを必要とするキリスト教の影響に加え、ワインを愛するイギリス人の情熱に支えられた結果と考えることもできるだろう。

ところで、イギリス発祥のスポーツが多々あるのはご存じだろうか?

ラグビー、サッカー、クリケットなどは上流階級のジェントルマンたちがルールを作って整備したもので、時間を守り厳密に事を進めるゲルマン民族のイギリス人は、商取引の世界でもルールを作り流通システムを構築するのがとても上手。昔も今もジェントルマンたちのたしなみであり喜びでもあるワインならば尚のこと、さらなる労力を払って業界に秩序をもたらし、世界中のワインの品質向上に貢献したことは想像に難くない。