昨今の「新しい生活スタイル」で、ワインの楽しみ方も激変。ネガティヴな話題が多い今日この頃だが、しかし、こういう時期だからこそ、今までよろこびのシーンを彩ってきたワインの真価が発揮される。
普段は遠くで暮らしている友人と、楽しいひと時を共有するweb飲み会も、こんな時代だからこそのお楽しみ。コンビニやスーパーでワインやおつまみを買って……という人も多いことだろう。こうした状況は、スターソムリエ各氏も同じこと。日本を代表するトップソムリエが会するweb飲み会が、夜な夜な開催されているとか、いないとか。

彼らがいったいどんなワインを飲んでいるのか? どんなつまみを工夫しているのか? ワインラバーであれば誰しも覗いてみたい、世にも豪華なweb飲み会にお邪魔した。


登場するのはこの4ソムリエ

野村大智さん
福岡より参加。福岡 中洲のオーセンティックバーにおいて、バーテンダーとしてキャリアを開始。その後、東京で6 年間経験を積んだ後、故郷福岡へ。現在はグランアワーズに、ソムリエとして勤務。各種コンクールでも活躍。目下、再開しつつある福岡の町。町全体が活気を取り戻すよう、取り組んでいる。



谷川雄作さん
大阪より参加。スペイン料理の二つ星「スリオラ」にてシェフソムリエを務め、2016 年より「ティエリー・マルクス」シェフソムリエに。現在は「スガラボV」にてワインディレクターを務める。「JSAソムリエ・エクセレンス」、「ASI 国際ソムリエ協会ソムリエ・ディプロマ」の肩書をもち、さまざまなワインコンクールで活躍。現在は、万全の対策構築に従事する多忙な日々。



井黒 卓さん
東京から参加。ミシュランガイド2020において星三つを獲得するフレンチレストラン〈ロオジエ〉ソムリエ。フランスワインのみならず、世界のワインに通じ、多くのソムリエコンクールにおいても活躍。自粛期間の運動不足で、体調管理が目下の関心事。「ダイエットしなければ」。



太田賢一さん
東京から参加。ミシュランガイド2020において星二つを獲得するフレンチレストラン〈エスキス〉アシスタントマネージャー兼シェフソムリエ。ニューワールドのワイン産地にも幅広く、深い造詣を持つ。自粛期間は、ワインスクールのリモート講義や動画の作成などに従事。世界への情報発信を見据えている。

まずはビール? 物語性のある飲み物で盛り上がるweb飲み会

井黒 あれ、太田さんはビールですか?

太田 これね、「世界一予約が取れない」ことで有名だったスペイン「エルブジ」の天才シェフ、フェラン・アドリアのチームと、バルセロナNo.1 ビールメーカー ダム社のコラボから生まれたスペインビール、イネディット。以前、中華のお店にいた時に使っていた、汎用性が高い、よくできたビールなのですよ。



谷川 グラスもお洒落ですね。

太田 カラメル系のアタックに、コリアンダーやオレンジピールの香りと、味わいの印象としては、ほぼホワイトビールなので、グラスにもちょっとこだわってみました。リーデルのグランクリュ用のシャンパーニュグラス。一層香りが引き立ちます。

野村 料理、美味しそうですね。

太田 ジャーマンポテト。北海道の実家から送られてきた新ジャガで作ってみた。原価は、100円もかかっていない(笑)



谷川 ちょっとひねりのある、ワイン好きが好みそうなビールですね。

太田 なので、ジャーマンポテトもちょっと工夫して、キャラウェイ(ヒメウイキョウ)を効かせてみました。ビールの風味のひとつであるコリアンダーのニュアンスとの相乗効果が楽しいですよ。

井黒 スパイスをちょっと工夫すると、普段のおかずが急に、存在感のあるビールやワインにも寄り添ってきますね。

太田 レストランのお持ち帰りだったら、やっぱりスパニッシュに合わせたいなあ、このビールは。パエリアとか、壺の中で作るリゾットの……

谷川 メロッソ!いいですね。こういう物語のある飲み物は、ストーリーテラーになりやすいからweb飲み会には最適ですね。話もはずみます。


イネディット
生産国/地域:スペイン
希望小売価格:1,260円
輸入元:都光



大麦麦芽と小麦を用い、ラガービールとホワイトビールの長所を組み合わせて醸造。コリアンダーやオレンジピールも原材料とすることから、果実や花の香りに加えて、甘いスパイスなどの複雑な香りも。クリーミーで、ソフトで、繊細な泡立ち。柔らかなボディー、長く爽やかで心地よい苦味のある余韻は、風味のある野菜類、ビネガーを用いた味付け、乳脂系の旨味のある料理などと絶品のマリアージュを見せる。

ラベルと「色」を合わせたマリアージュで食卓を華やかに

野村 井黒さんは何を?



井黒 ポ ール・ジ ャブレ・エネのコ ート・デ ュ・ ローヌ パラレル45 ビオ ブラン2017。なかなかローヌの白って飲む機会が無いからチョイスしました。パリからT G Vで約2時間半、 南ローヌ地方は、「このあたりからが南フランスですよ」と掘られた石碑もあるところ。暖かく乾燥した地中海の気候で太陽を燦燦と浴びたブドウを、早摘みしてフレッシュさを際立たせた、生き生きした一本 です。品種でワインを選びがちですが、これは4 品種をブレンドしたスタイルで、深みのある味わいがあります。

太田 なんだか、思い入れが深いなあ。天才。

井黒 カロリーヌ・フレイさんという美人醸造家が造っているから(笑)。

野村 合わせているのはカルパッチョ?

井黒 ブリ刺に、フレッシュバジル、チューブニンニクとオリーブオイルをプロセッサーかけたソースをかけてます。メキシカンライムやコリアンダーのニュアンスの中に、若干の塩気を感じる爽やかなワインなので、難しく考えずに、ラベルの色に合わせ、フルーツトマトも添えてみた。色やラベルの雰囲気で、ワインを料理と合わせるやり方も、ありだと思う。食卓の雰囲気が盛り上がるわけでしょう?



太田 一般の方にとっては、ワインを買う時の手がかりはラベルですものね。

井黒 味本意でマリアージュさせるのだったら、こういう爽やかかつ複雑なワインには餃子がいいな。

野村・谷川・太田 賛成!

井黒 フレッシュレモンを絞り、胡椒はミルで砕く。そのひと工夫で、餃子は瞬く間にワインに寄り添います。


ポール・ジャブレ・エネ
コート・デュ・ローヌ
パラレル45 ビオ ブラン2017

生産国/地域:フランス/ローヌ
品種:グルナッシュ・ブラン50%、マルサンヌ20%、ヴィオニエ20%、ブールブーラン10%
希望小売価格:1,740円
輸入元:三国ワイン



ゴールドがかった麦わらの色合い。青リンゴや桃、白い花の香りに加え、メキシカンライムやコリアンダー、ディルなどの爽やかなニュアンスも。さらには、綺麗な酸とかすかな塩気が、太陽を一杯に浴びたボリューム感をキリリと引き締め、地中海を髣髴とさせるニュートラルな味わいに。魚介や鳥料理、香り高い野菜料理とは全般的に相性が良いが、餃子や焼売などの点心系の料理にも。フレッシュレモンや挽きたての胡椒で。

web会は情報交換の場としても稀有の機会



谷川 野村さんはまた色が綺麗ですね。

野村 ロシュ・マゼのメルロー ロゼ。流石、フランスで一番消費されているブランドですよね。消費者の求めている味わいを研究し尽くしている。どんなシチュエーションでも楽しめる、家のみにはぴったりのロゼです。

太田 味わいは?

野村 ラベルにね、「ソフト&フルーティー」って書いてある。

太田 ああ、それなら一般の方でもラベル見ただけで分かりますね。

野村 「果実の印象をストレートに」など果実がどんなふうに表現されているかがあると、伝わりやすいかと思います。

井黒 料理は何を?

野村 タコとヒラメのセビーチェです。味付けは、塩とレモン汁、少しのニンニク、好みで、パプリカかハーブ。メルローのハーブのニュアンスに合わせたのですが、正直いってこのワインは、魚でも肉でも、マカロンのようなデザートにでも合ってしまう。



谷川 はじめは冷蔵庫から出したばかりのキンキンで、温度をあげてメインに合わせる……と、一本で重宝しますね。

太田 このワインはIGP ペイドックですがボルドー品種で作られていますね。

井黒 今は多様化しているようですよ。たとえば、早摘みのブドウで、淡い色合いのロゼを造ったり。

太田・谷川・野村 へ~え。

井黒 場所によっては、ロゼ用と赤ワイン用に、二段階で摘んでいるところもあるんじゃないかな?

谷川 それは良い情報をうかがいました。


ロシュ・マゼ
メルロー ロゼ

生産国/地域:フランス/ペイドック
品種:メルロー100%
希望小売価格:1,100円
輸入元:国分グループ本社



煌めきあるサーモンピンクの美しい色合い。ストロベリーやラズベリーなど赤系果実香に加え、ピンクグレープフルーツやバラ、アカシアも。さらには、ロゼワインとして表現されることによって、メルローのグリーンノートが、ホワイトペッパーやコリアンダーシードのニュアンスに昇華し、複雑さを添える。ソフトな味わいは、野菜、魚介、肉料理からデザートまで幅広く寄り添い、逆に合わない料理を見つけることが困難なほど。

家飲みならではの「グラスの楽しみ」

井黒 太田さんはいよいよワインシーンに突入ですね?

太田 コノスルのピノ・ノワール、ビシクレタ クールレッド。「冷やして美味しい」というコンセプトで造られた赤ワインで、夏場でも楽しめる。亜熱帯化しつつある日本では注目の一本です(笑)



井黒 グラスも変えてる?

太田 はじめはニューワールドワイン向けの、リーデル・エクストリームのピノ・ノワールグラスを使ったのですが、香りが立ちすぎるような気がしたので、うすはりのロックグラスに変えてみた。



野村 家飲みは、そういうことができるのが面白いですよね。

太田 コノスルには全幅の信頼を置いているのですが、このワイン、価格が良い。なんと880円! アセロラなどの赤系果実のエキスが充実し、シナモンのようなニュアンスも。意外とエッジが進んでいるのですが、冷やすとフレッシュさが際立ち、料理との汎用性も高い。

谷川 料理がまた、凝っていますね。

太田 「鯖缶の煮込み」。いや、これ案外と簡単なの。鯖缶を汁ごと鍋に入れ、麺つゆと水で少しかさましして、木綿豆腐と長葱を入れて煮込んだだけ。仕上げに生姜と長葱の小口切り。



井黒・谷川・野村 美味しそう!

太田 最近、お持ち帰りの弁当を買う機会が多いのですが、よく焼き魚が入っているでしょう?「焼き魚には赤だな」というのがマイブームなのです。醤油をかけたり、そもそも味噌漬であったり、と焼き魚は日本の発酵系調味料で味付けされていることが多いですよね。その醤油や味噌の風味に、赤ワインのベリー系のエキス分が寄り添いやすい。特にこのピノとの相性は、抜群ですよ。


コノスル
ピノ・ノワール ビシクレタ
クールレッド

生産国/地域:チリ
品種:ピノ・ノワール
希望小売価格:880円
輸入元:スマイル



チェリー、ブラックベリー、プラムなどの果実香に加え、シナモンのフレーバーも。味わいにも果実のエキス分充分なチリらしいピノ・ノワール。まるでフレッシュなアセロラやラズベリーを齧ったような、活き活きとエレガントな酸が印象的。「冷やして美味しい赤ワイン」というコンセプトの通り、低めの温度帯がおすすめ。爽やかさが一層引き立つうえ、旨味の濃い料理に見事に寄り添う。味噌、醤油などの発酵調味料とも相性良し。

折角の機会に「普段できない議論をしてみようか?」

谷川 井黒さんのボトル、カッコいいですね。



井黒 いいでしょ。IGT ルビコ ーネ。州だとエミリアーナ・ロマーナです。今回僕がもってきたワインは 2 本ともオーガニック栽培。ブドウ自体のpH が低くなって、酸味がより爽やかに生き生きと出てくる――という研究結果があります。このワインも酸味がフレッシュチェリーのような酸味があり、チャーミング。暑いときには冷やして飲みたい。

太田 オーガニック認証をとっていると安心で美味しいというお客様は結構いらっしゃいます。でも、アンチの方も。ビオ・ディナミのことを調べていくと、「不衛生で嫌」など。

井黒 谷川さんはアンチナチュラル派?(笑)

谷川 やめてくださいよ、勘違いされるから(笑)。ビオ・ディナミやオーガニックは必要十分条件ではないと思っています。ソムリエの務めはワインの個性を把握し、レストランにとって適切でお客様の望むワインを選べること。

井黒 ナチュラリストの野村さんは?(笑)

野村 確かにナチュラルワインはクセのあるワインもありますよね(笑)。でもナチュラルワインにも様々な味わいがありますし、オーガニックをあまり苦労なく実現できる産地もありますから。一方、社会的な理由から選ぶ方もいらっしゃいますね。そういう傾向は強くなるのかな。

井黒 僕の2本のワインは、栽培こそオーガニック認証を受けていますが、人の手をしっかり加えて、美味しく仕上げている。オーガニックだから味が良いじゃなくて、結局「誰を選ぶか」、生産者が大事なんですよって言いたかった。

野村 おつまみは何を?

井黒 知人が勧めてくれたお店で買ってきたラザニアです。こういう親しみやすいシンプルなワインには、分かりやすく美味しい料理が合います。



井黒氏がテイクアウトした、ラザニアは東京都中央区八丁堀のビストロ「レトノ」のもの
http://www.lestonneaux.com


タヴェルネッロ
オルガニコ サンジョベーゼ

生産国/地域:イタリア
品種:サンジョヴェーゼ
希望小売価格:1,010円
輸入元:サントリーワインインターナショナルワイン



熟したチェリーやプラム、スミレ、甘いスパイス香など、親しみやすく、複雑なアロマを持つ。舌触りはやわらかく、果実味とまろやかな渋味、そしておだやかな酸味が、絶妙の味わいを形成。全体的に、フレッシュでチャーミングな印象。アルコールも125%と抑制的で、心地よく、スイスイと飲めてしまうのはオーガニック由来か。肉料理全般と相性よく、また、パスタ、ラザニア、ピッツアなどのイタリアンとは王道のマリアージュ。

困難な状況を逆手にとってチャンスに

太田 谷川さんのグラスは?

谷川 木村硝子のサヴァシリーズで、E ギガルのコート デュ ローヌ ルージュを飲んでいます。



太田・井黒・野村 おお、いいですね!

谷川 E ギガルは、ローヌ渓谷北部を代表する生産者で、産地を代表する造り手として本気で取り組んでいる姿勢が、このリーズナブルなワインからも窺えます。このレンジでありながら、18 か月熟成させてリリースしている。そのせいでしょう、縁にはチェリーレッドのニュアンスがあり、赤系果実、スミレ、アニス、腐葉土、グラファイトなど複雑なアロマがあり、スワリングすると、かすかに生肉のニュアンスまで。なめらかで、ボリューム感があり、繊細なタンニンがドライな後味を演出する――これで税込2,200円。

井黒 とても2000円台のワインのコメントじゃあないなあ。1 万円オーバーワインのコメントだ(笑)



谷川 合わせるのは、大阪ではどこでも買えるお好み焼。お好み焼は、甘味、塩味、酸味、果実味など複雑な味わいをもつ食べ物。12 ~14℃くらいに冷やし、できればブルゴーニュタイプのグラスを使っていただくと、家庭でも再現性の高いペアリングになります。東京のもんじゃ焼は、クールレッドのピノ・ノワールに合いそうですね。


E ギガル
コート デュ ローヌ ルージュ

生産国/地域:フランス/ローヌ
品種:シラー50%、グルナッシュ40%、ムールヴェードル10%
希望小売価格:2,000円
輸入元:ラック・コーポレーション



熟成に由来する色合いは、中心が黒く、縁がややチェリーレッド。ブラックチェリー、プラム、スミレ、アニス、腐葉土、グラファイトなど、複雑な香りが溌剌と勇躍する。アタックはしたたかで、やがてなめらかに。ボリューム感があるが、ミンティーなニュアンス、心地よい酸とタンニンが、ドライな後味へといざなう。肉料理全般にはよく合うが、濃厚で、複雑な味つけの料理と特に相性が良い。包容力が非常に高いワイン。


野村 楽しいなあ。この4 人が顔を合わせる機会なんて、1 年に一度あるか無いか。さらにお酒を一緒に飲むなんて、スケジュールが合わず、なかなか無いよね。

井黒 情報交換もできたしね。

太田 良い機会を与えてもらったことに感謝。またやりましょう!

全員 是非!






そして、今回4人のスターソムリエが選んだワインに合う料理を、食トレンド発信メディア「おうちごはん」で活躍する4人のインフルエンサーさんに考えてもらいました。

簡単で、美味しく、バエるレシピを以下よりご確認ください!

ロシュ・マゼ メルロー ロゼ by ぺぺさん(@pepe39)
https://ouchi-gohan.jp/2715/



タヴェルネッロ オルガニコ サンジョベーゼ by かおしさん(@cao_life)
https://ouchi-gohan.jp/2726/



コノスル ピノ・ノワール ビシクレタ クールレッド by 青山金魚さん(@kiyomi_aoyama)
https://ouchi-gohan.jp/2727/



ポール・ジャブレ・エネ コート・デュ・ローヌ パラレル45 ビオ ブラン2017 by SHIMAさん(@shima_no_ouchicafe)
https://ouchi-gohan.jp/2728/