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クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2020 デビュー

ドラマチックなヴィンテージを

ニュージーランドを代表する、そしてソーヴィニヨン・ブランを代表する一本といっても過言ではないであろう、クラウディー ベイの「ソーヴィニヨン ブラン」。今年も、その最新ヴィンテージが登場した。新型コロナウイルスの蔓延により、様々な変化の中で造られた、今年のソーヴィニヨン ブランはドラマチックだった。

クラウディーベイソーヴィニヨンブラン2020
アルコール度数 13.2%

pH 3.11

総酸度 7.15g/L

残糖 2.4g/L

容量 750ml

希望小売価格 3,750 円(税抜き)

メモラブルでユニークなヴィンテージ

新型コロナウイルスの蔓延によって、クラウディー ベイのテクニカル ディレクターにして大の親日家 ジム ホワイト氏の来日はかなわず、オンラインでの発表となった「クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2020」。そのオンライン発表イベントの幕開けはクラウディー ベイが用意した一本の動画からだった。

画像をクリックすると、動画が掲載されている、クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2020スペシャルサイトが開きます。

この動画、3分ほどで、公式ページでも公開されているので、見ていただければと思うのだけれど(https://www.mhdkk.com/brands/cloudy_bay/special/)内容をかいつまんで紹介すると、新型コロナウイルスの影響により、3月25日、ニュージーランド政府は国境を封鎖。収穫を目前とした、ジム ホワイト氏によれば「ポーカーでいえばフルハウス」という状態だった、完璧なブドウの収穫も、開始できるのかどうか、不透明な状況になってしまった。収穫スケジュールは変更せざるを得ない。

ワインにとってブドウの収穫というのは、何日の何時にどこ、というくらい厳密に行われるもの。ほんの数日のロスですべてを失う可能性すらある。幸いにも、ニュージーランド政府はワイン産業を必須産業とみなし(実際、ニュージーランドにおけるワイン産業は国の重要な産業だということは、たとえばこちらの記事をご参照ください)、収穫はできることになった。

さらに幸いなことに、クラウディー ベイは、「自己完結できる」ワイナリーだった。収穫やワイン造りをおこなう人は、どこかから呼び寄せなくてもよく、皆、作業可能な状態だったのだ。とはいえ、ウイルス対策はなさねばならない。「全く異なる労働環境」と、ジム ホワイト氏がいう、ソーシャルディスタンスを確保した上で、2020年ヴィンテージの「ソーヴィニヨン ブラン 2020」は造られた。

ビデオにつづいて登場したジム ホワイト氏は、「クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2020」を、メモラブルでユニークなヴィンテージだと表現した。

ワインの説明をするジム ホワイト氏

メモラブルなのは、新型コロナウイルスの影響下で造られた、というのはもちろんのこと、ブドウの出来栄え、ワインの出来栄えにおいても、という意味だった。

2019/2020年シーズンは、穏やかなシーズンだったという。2019年の終わり、つまりニュージーランドでの春には、ほどよく雨がふり、遅霜の心配はなかった。開花時期には、今年の収穫量が多くも少なくもないものになることがわかり、クリスマス後に雨があった後は、夏から秋にかけては乾燥した天候が続いた。その後も、雨はほとんど降らずに、順調にブドウは熟成。先述のようにロックダウンによる混乱はありながらも、理想的な状態のブドウが、ワイナリーに運び込まれたという。

こうして完成したワインが、筆者の手元にもあり、香りをかいでみてください、とジム ホワイト氏に促されてグラスに鼻を近づけると、レモンやグレープフルーツのさわやかな香りがする。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランらしい、そしてその代表的ワイナリーであるクラウディー ベイが得意とする、立ち上るアロマだ。

「ラブリーでクラシックなクラウディー ベイのソーヴィニヨン ブランの香りでしょう? 沢山のシトラス、ライム、レモンのキャラクター、ここに、ネクタリンなどが加わり、トロピカルなパッションフルーツの香りも感じられると思います。」

そして口に含むと、香りの印象はそのまま味わいにつながる。シトラス系の味わいが、口内に広がる。

「口に含むと、より、2020年ヴィンテージの特徴を感じ取れると思います。私からすると、フルーツが弾けるようなワインだと思います。さまざまなシトラス、ストーンフルーツ。酸味は口を潤すようで、リッチでまろやかな素晴らしいバランスになったと思っています。シトラス、ストーンフルーツのイメージは、ワインに力強く宿っていて、飲んだ後も、その印象が続いていく。こういったヴィンテージとなったことは、とても幸せです。」

レモンの果汁のようなイメージはあっても、それは酸っぱいというような単純なものではなくて、まろやかで、複雑性を秘めている。このワインが、少し温まってくるとより、その複雑な印象は顕著で、酸味の印象は弱まり、トロピカルフルーツやハーバルな印象も強まってくる。とはいえ、あまり温まらないほうが、おそらく、クラウディー ベイが意図したイメージに近い。ジム ホワイト氏のオススメは、6℃から8℃くらいの温度。

「私達がやりたいのは、畑でつんだばかりのソーヴィニヨン・ブランの味わいをワインに残し、みなさんにお伝えることです。実際は醸造において、テクスチャーのまろやかさ、力強さをあたえるために、わずかに樽も使っています。しかし、それに気づくことはほとんどないと思います。収穫の日のピュアでフレッシュなソーヴィニヨン・ブランが口の中ではじける、そういうワインになったと私は感じています」

ニュージーランドのワインにはヴィンテージにあまり大きな差がない、クラウディー ベイのワインも、ヴィンテージにあまり強く左右されないのが特徴だ、とかつてジム ホワイト氏は言っていた。しかし、昨年の、ややほっそりした印象のあった「ソーヴィニヨン ブラン」と比較して、2020年ヴィンテージはより、力強い。

昨年のソーヴィニヨン ブランとの比較をジム ホワイト氏はこう語る。

「2019年も素晴らしかった。どちらの年も、収穫は早めで乾燥した年でした。ただ2019年は、2月、3月が暖かく、新鮮な酸味を残すために2020年より少し早めに収穫をはじめました。その結果、シトラスのなかでも、緑のシトラスのイメージが出て、ストーンフルーツの印象も、完熟したというよりは、歯ごたえのあるような印象になったと思います。2020年は2019年と比べると涼しくて、ブドウが熟すのを待つことが出来た。結果、黄色いシトラスやより熟したストーンフルーツの特徴がでていると思います。2020年はですから、いますぐ飲んでも、まろやかさがあります。2019年は、同じタイミングでは、もうちょっとラフな印象になったのではないでしょうか。」

クラウディー ベイの生まれたところ

クラウディー ベイのワインの多くは、ニュージーランド南島の北端、東側にあるマールボロで育てられたブドウから造られる。ニュージーランドの75%のワインブドウが育つ地域だ。

マールボロはMARLBOROUGHと綴る。マールボロのほかに、セントラル・オタゴでも、クラウディー ベイのブドウは育てられている。

この地のソーヴィニヨン・ブランが世界的に有名になったのは1980年代。その初頭、この地にソーヴィニヨン・ブランが植えられてまだ10年ほどしかたっていなかったころは、ワイナリーはまだ4軒しかなかったという。そのときのワインが、西オーストラリア州のマーガレット・リバーに渡り、今日、オーストラリア屈指の銘醸地として知られるマーガレット・リバーの名声の礎を築いたデイヴィッド・ホーネンが設立したワイナリー、「ケープ メンテル」に至る。デイヴィッド・ホーネンは、この個性的なソーヴィニヨン・ブランの可能性を見抜き、ニュージーランドでソーヴィニヨン・ブランのワインを造り、これを世界に広めたいと願うようになった。ホーネンは畑も醸造所もないにもかかわらず、ニュージーランドでブドウを買い、地元のワイナリーで醸造をすることで、1995年、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランのワインを世に送り出した。これがクラウディー ベイの原点だ。

以来、デイヴィッド・ホーネンが衝撃をうけたソーヴィニヨン・ブランを受け継ぎ、マールボロが巨大なワインの産地となっても、ワイラウ川の周囲、ワイラウバレーの限られた畑で、ワインを造り続けているのが、クラウディー ベイだ。クラウディー ベイの名前は、この、ワイラウバレーのごくそばにある、クラウディー ベイという湾に由来している。

今や大きなブドウの産地となったマールボロのなかでも、クラウディー ベイが持つ畑はごく限られている

画像の下にながれているのがワイラウ川。左上に見える湾が、クラウディー ベイだ。

そういったわけで、クラウディー ベイにとって、畑はとても意味深いもので、クラウディー ベイは、15年ほど前には、サステナブルワイングローイングニュージーランドの初期メンバーとなり、認証を取得した。国のスキームだけではなく、自分たちでもサステイナブルな取り組みを強化している。たとえば、除草剤の削減などは、率先して行っているワイナリーだ。

マールボロにクラウディー ベイがもつ畑は、川沿いの土地ということもあって石が多く、管理が難しい。ニュージーランドは島国で、大陸のように人手に恵まれているわけでもない。そこで、無人の自動トラクターを導入するなど畑への独自の投資を続けている。クラウディー ベイは、セントラル・オタゴにも畑をもち、こちらのブドウは、より少量生産のワインに使われているけれど、その畑はすでにオーガニック認証をとっている。そのノウハウは今後、マールボロにフィードバックされるとジム ホワイト氏はいう。また、単に畑だけではなく、畑周辺の生態系の保全にも乗り出している。

石の多い畑とそれに合わせて造られた自走式トラクター。25ヘクタールの畑が現在、除草剤ゼロでの栽培に取り組んでいるという。

畑のみならず、周辺の環境においても行われている、生物多様性を確保する試み。

ジム ホワイト氏は、もともと、畑を管理する人だ。その彼が、テクニカル ディレクターとして、よりワイン造り全般に関わっている現在のクラウディー ベイは、今後ますます、ピュアなワイン、ヴィンテージごとにユニークで、メモラブルなワインを造るようになるのかもしれない。

気が早いけれど、来年のソーヴィニヨン ブランにも期待したい。そして来年はまた、ジム ホワイト氏とともに、日本で、新ヴィンテージを祝えるようになることを、期待したい。

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