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シャンパーニュ エクストラ・ブリュット テイスティング 2021

エクストラ・ブリュット 24種を紫貴あきと柳忠之がテイスティング

WINE WHATのシャンパーニュ特集では恒例になっているワインジャーナリスト・柳忠之さんとソムリエ・ワイン講師の紫貴あきさんによる比較試飲による、そのシャンパーニュの本質を解説する企画。今回のテーマは「ドザージュ」。近年、低ドザージュのスパークリングを造りだしているメゾンも多く、人気も高い。「ドザージュ」はシャンパン造りでは最後の一手間とよばれる重要な部分。それを最低限にした「エクストラ・ブリュット」(1リットルあたり6g~0gの加糖)に分類される24本を試飲した。そこから、見えてきたことは……

ドザージュとそれによって変化する呼称について

ドザージュは、リキュールを添加することで糖分量を調整し、意図する味わいに仕上げる工程。ここで用いられるのは「門出のリキュール」と呼ばれ、ワインに蔗糖などを加えたものである。使用量ドゥーからエクストラ・ブリュットなど、仕上げのスタイルによって異なる。1リットルあたり糖分3グラム以下もしくはまったく加糖をしていないワインには「ブリュット・ナチュール」や「ドザージュ・ゼロ」などの表示をすることができる。


Doux(ドゥー) 50g/L以上
Demi Sec(ドゥミ・セック) 32~50g/L
Sec(セック) 17~32g/L
Extra Dry(エクストラ・ドライ) 12~17g/L
Brut (ブリュット) 12g/L以下
Extra Brut (エクストラ・ブリュット) 0~6g/L
※3g/L未満、または全く糖分を加えていないシャンパーニュにはBrut Nature(ブリュット・ナチュール)、Pas Dode(パ・ドゼ)、Dosage Zero(ドサージュ・ゼロ)などの表示が認められている。

まずはドザージュ ゼロのシャンパーニュから試す

さて、今回は超辛口シャンパーニュを集めてみました。

紫貴 ドザージュが1リットルあたり6グラム以下のエクストラ・ブリュットや3グラム未満のブリュット・ナチュールですね?

はい。最近はどのメゾンも低ドザージュ傾向で、ブリュットですら10グラム未満が当たり前。あえてもう一段階辛口のエクストラ・ブリュットをラインナップに加えたり、ドザージュゼロに踏み込むメゾンが増えています。

紫貴 なぜですか?

試飲からその理由を探るとともに、市場性についても考えてみましょう。しかし、これほどドザージュゼロが多いとは思わなかった。

紫貴 ほんとですね。24本中15本がゼロですか。

しかもシャルドネ100パーセントのブラン・ド・ブランまでゼロとは。10年前までならあり得ませんよね。ともかくそのドザージュゼロから見ていきましょう。

ラリエ
R.012N ブリュット・ナチュール NV

アイ村の小さなメゾン。R.012 は2012年の原酒がベースであることを表す。アイ村のロリドンという区画に自生する酵母で一次発酵。試飲したボトルは2019 年にデゴルジュマン。「口が乾くような辛口。酸は強いが、エキス分が多いせいかキリキリとはしない」(紫貴)。「キレが鋭く、シャープなイメージのスーパードライ」(柳)。
品種 ピノ・ノワール62%、シャルドネ38%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 6,840円
輸入元:ベリー・ブラザーズ&ラッド

フィリポナ
ロワイヤル・レゼルヴ ノン・ドゼ NV

「クロ・デ・ゴワス」で有名な、マルイユ・シュル・アイ村のメゾン。2015年ベースで2019年9月デゴルジュマンのボトル。オーク熟成のリザーヴワインが35%。「カッターで切りつけられるような鋭い酸。非常にタイトな印象」(紫貴)。「香りは閉じ気味。アタックから余韻まで酸とミネラルが支配する。まるで氷の微笑」(柳)。
品種 ピノ・ノワール6 5%、シャルドネ30%、ムニエ5%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 7,500円
輸入元 富士インダストリーズ

 

紫貴 うわっ、酸っぱい! 「ラリエ」も「フィリポナ」も酸が強い! とくにフィリポナが強く感じられますね。

あくまで比較論ですけど、「アルフレッド・グラシアン」はその前のふたつと比べたらと、酸が穏やかに感じられませんか?

アルフレッド グラシアン
ブリュット ナチュール NV

小樽発酵の原酒にこだわるエペルネのメゾン。マロラクティック発酵はなし。リザーヴワインは平均40%。「固くて太い酸。アフターには苦味に似たミネラルが感じられる。力強い」(紫貴)。「香りはゴールデンデリシャス。溌剌とした酸味だが、樽発酵の影響か、指を切り裂くようなシャープさはなく、幾分丸みが感じられる」(柳)。
品種 シャルドネ50%、ムニエ25%、ピノ・ノワール25%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 7,700円
輸入元 nakato

ピエール・ジェルべ
ロダス・ブリュット・ナチュール NV

コート・デ・バールのセル・シュール・ウルスにあるNMながら、実質は自社畑のブドウを100%使用。2015年収穫のブドウで2019年8月にデゴルジュマン。AMPELOS認証。亜硫酸無添加。「濃い黄金色。スミレ、摘みたての赤い果実。トーストなど酵母由来のフレーバーが強い。滑らかな印象」(紫貴)。「これまでの3 本と比べてはるかにマイルド。しっかりした骨格」(柳)。

品種 ピノ・ノワール100%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 8,000円
輸入元 豊通食料

 

紫貴 果実味が勝るのか、やや大柄、英語で言うとボールドな印象です。

樽発酵の影響かと思いましたがフィリポナもリザーヴワインは樽なんですよね。フィリポナは敢えて究極のフレッシュさを狙ったのか? 秋冬よりも春夏に飲みたくなる酸です。

リザーブワイン ブドウ果実の成熟度、酸度、糖度は作柄により毎年異なる。そこで、シャンパーニュ業界では、各生産者に優れた品質のブドウが収穫された年のストック、リザーブワインの保存を義務付けている。不作の年にもクオリティを維持できるよう補填に使用される。複雑なアッサンブラージュの行程を経るだけに、どれだけストックを持っているかは、メゾンの力の証明。古いものなら僅かに加えるだけで味わいの複雑味が一挙に増すという。

紫貴 「ピエール・ジェルベ」はピノ・ノワール100パーセントのブラン・ド・ノワール。次の「ボーモン・デ・クレイエール」はムニエ100パーセントのブラン・ド・ノワールです。

ブラン・ド・ブラン & ブラン・ド・ノワール ブラン・ド・ブランは「白の白」を意味するフランス語。シャンパーニュの用語では、白ブドウ、シャルドネのみで造られたアイテムのことを言う。いっぽう、「黒の白」を意味するブラン・ド・ノワールは、黒ブドウ品種のみ、ピノ・ノワールかムニエ、またその両方で造られるシャンパーニュ。ほのかに黒ブドウのタンニンを感じる奥行きのある味わいと骨格を持ち、幅広い料理と合わせられることで根強い人気を誇っている。

ピエール・ジェルベは南ならではの熟度で、口当たりがマイルド。ボーモン・デ・クレイエールのムニエも熟成の進みが早いので、ドザージュゼロでもまろやかに感じられます。

シャンパーニュ・ボーモン・デ・クレイエール(CM)
ボーモン・デ・クレイエール フルール・ド・ムニエ ブリュット・ナチュール 2012

珍しいムニエ100%のブラン・ド・ノワール。しかもドザージュゼロ。試飲したボトルのデゴルジュマンは2019年11月22日。「黄桃や熟れたリンゴなど甘いフルーツの香り。ブリオッシュも。酸は穏やか。発展した感じが徐々に出始めている」(紫貴)。「蜜リンゴのよう。ドザージュゼロでもきれいなバランス。フルーティ」(柳)。
品種 ムニエ100%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 8,300円
輸入元 モトックス

ビルカール・サルモン
ブリュット・ナチュール NV

2014年ベース。13年から08年まで遡るリザーヴインが49%も占める。瓶内熟成期間は48カ月。「固い青リンゴ、スイカズラ、パン・ド・ミ。ブラインドだと埋もれてしまいそうだが、バランスの良さはトップレベル」(紫貴)。「マルチレイヤード。シュール・リーによる旨味が強い。しっかりしたボディだがエアリー」(柳)。

品種 ピノ・ノワール3 0 % 、シャルドネ30%、ムニエ40%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 8,500円
輸入元 JALUX

CM(コーペラティヴ・ド・マニピュラシオン)=協同組合員から仕入れたブドウを使い、自ら所有する醸造所で生産を行う造り手

紫貴 言われないとゼロとは思えませんね。ラリエやフィリポナが私にとってドザージュ・ゼロの典型的スタイルですが、こういうタイプもあるのかと。

「ビルカール・サルモン」はリザーヴワインが49パーセントの4年熟成。「ポル・ロジェ」のピュアもブリュットより1年熟成期間が長いはず。「ブルーノ・パイヤール」はリザーヴワインが50パーセント。ドザージュゼロにするキュヴェはいずれも、ブリュットより、リザーヴワインが多かったり、熟成期間の長いものが多いですよね。

ポル・ロジェ
ピュア(エクストラ・ブリュット)NV

手回しのルミュアージュにこだわるエペルネのメゾン。エクストラ・ブリュットの表示ながらドザージュはゼロ。「柔らかくなった洋梨、フィリング、白い花、火打ち石のようなミネラル。白レバーのパテと」(紫貴)。「スダチなど爽やかな和柑橘のアロマ。レースのようなデリケートさ。ミネラルという言葉がふさわしい」(柳)。
品種 シャルドネ33%、ムニエ33%、ピノ・ノワール33%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 9,000円
輸入元 ジェロボーム

ブルーノ・パイヤール
ドザージュ・ゼロ Multi VT(マルチヴィンテージ)

リザーヴワインが50%に及ぶマルチヴィンテージ原酒の大部分は樽発酵。リザーヴワインには瓶で10年以上寝かせたものも。2018年2月デゴルジュマン。「グレープフルーツに白檀のようなオリエンタルスパイスが香りセクシー。酒質が強く、複雑味が
ある」(紫貴)。「マルチディメンジョンで落ち着きが感じられる」(柳)。
品種 ムニエ50%、ピノ・ノワール25%、シャルドネ25%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 9,000円
輸入元 ミレジム

 

紫貴 そのようにボディの厚みや口当たりの柔らかさを出すことで、糖分を加えなくても調和が取れるようにしてるんですね。

先ほどのなぜ低ドザージュ傾向なのかという理由のひとつに、食のライト化が関係してると思うんですよ。クリームやバターを使わない、素材重視の料理が増えている。この3つのシャンパーニュは、そうした今風の料理に合いそうな気がします。

紫貴 ビルカール・サルモンだったら何を合わせます?

ヒラメの昆布締め。

紫貴 私の大好物!

さて、「ラルマンディエ・ベルニエ」と「エンクリ」はブラン・ド・ブランのドザージュゼロです。

ラルマンディエ-ベルニエ(RM)
テール・ド・ヴェルテュ ノン・ドゼ プルミエ・クリュ 2013

コート・デ・ブランのヴェルテュ村にあるビオディナミのRM。原酒はオーク樽による発酵。「レモン、グレープフルーツ、パン・ド・ミの香り。唾液が滴り落ちるような酸。オイスターに合わせたい」(紫貴)。「シャープな酸。タイトに締まり、テンションが強く感じられる。後口に旨味がじわり。てっさ、てっちりをポン酢で」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 9,500円
輸入元 木下インターナショナル

シャンパーニュ・エンクリ
エンクリ ドサージュ・ゼロ グラン・クリュ NV

2004年メニルに3haの畑を購入し、2005年に初リリースしたイタリア人のメゾン。畑はサロンとクリュッグに挟まれている。リザーヴワイン20%。「フレッシュなカリン、アーモンドの花、パン・ド・ミ。爽やかさが特徴」(紫貴)。「クリスタルのような透明感。メニルの厳格さも感じられるが、当たりは柔らか」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 11,000円
輸入元 都光

RM(レコルタン・マニピュラン)=レコルタンはブドウを収穫する人、マニピュランはシャンパーニュを醸造する人なので、自社畑で収穫されたブドウのみ用いてシャンパーニュを醸造する農家を指す。RMは、自社畑のブドウしか使えないため、年ごとのバラツキが大きい反面、土地の個性を反映させられ、個性的なスタイルのシャンパーニュを造ることができる。

 

紫貴 酸っぱ!

ラルマンディエ・ベルニエですか? シャープにはシャープですが、僕は覚悟していたほど強く感じませんでした。だんだん酸に慣れてきたのかな(笑)

紫貴 こういうタイプがお好きな方って、マゾっ気があるんじゃないかしら?

2013年は涼しい年ですから、造り手も相当な覚悟で造ったんでしょうね。エンクリはどうですか? 厳格さで知られるメニル・シュール・オジェですが。

紫貴 身構えてましたが、ラルマンディエ・ベルニエほどきつくはなかったです。

シャープネスはありますが、とげとげしさは感じません。これならマゾでなくても飲めるでしょ(笑)

シャンパーニュ ジャクソン
シャンパーニュ キュヴェn° 743 NV

大樽発酵熟成にこだわるディジー村のメゾン。これは2015年ベースでリザーヴワインが20%。この#743でついにドザージュゼロ。2019年8月デゴルジュマン。「グレープフルーツ、青リンゴ、トースト、アーモンドが香る。口当たりにボディを感じ、熟成感も」(紫貴)。「酸化熟成のニュアンスがあり、マルチレイヤード」(柳)。
品種 シャルドネ 50% 、ピノ・ノワール25%、ムニエ25%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 11,000円
輸入元 ヴァンパシオン

シャンパーニュ・ボワゼル
ボワゼル・シャンパーニュ ブリュット ウルティム NV

エペルネにある中規模のメゾン。このキュヴェはリザーヴワインが40%。6~8年熟成させ、2019年1月デゴルジュマン。「酵母の自己分解による影響が大きく、ブリオッシュやペストリーのようなバターを含んだパン。アタックは柔らかく、リッチな口当たり。中盤から豊かな酸」(紫貴)。「熟成感があり、滑らかな食感」(柳)。
品種 ムニエ13%、シャルドネ37%、ピノ・ノワール50%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 11,550円
輸入元 ピーロート・ジャパン

 

紫貴 「ジャクソン」はすごくバランスが良いですね。滑らかな口当たりと、熟成感もありながら生き生きとしていて。これならドザージュ不要というのも納得です。

ベースが2015年という温かな年ですね。低ドザージュトレンドの理由その2ですが、やはりブドウの熟度と関係があると思います。温暖化でシャンパーニュ地方でも熟度の高いブドウが得られるようになりました。反対に酸は低くなる傾向にあるので、従来どおりのドザージュだと重くなってしまう。

紫貴 なるほど。元のブドウが完熟しているので、ドザージュでお化粧する必要はないというわけですね。

はい。ただドザージュゼロはまさにすっぴん。それを受け入れられるか否かは、飲み手の判断によりますね。

紫貴 柳さんはきっとすっぴんがお好きですよね?

「ボワゼル」はイースト香が強いですね。

紫貴 瓶内熟成6年だそうです。滑らかでリッチですが、酸が生き生きしています。これもドザージュ不要の素肌美人ですね。

瓶内熟成 シャンパーニュでは、酵母と糖を加えて瓶詰めしてから出荷まで、最低15か月の熟成が必要とされ、うち12か月は澱とともに瓶熟成が義務付けられている。澱とは、糖分を分解し終えた酵母が沈殿したものを指す。この澱が自己分解してアミノ酸を生み出すとともに、トーストのような香ばしい香りをワインもたらす。澱とともに熟成した期間が長いほど、シャンパーニュには複雑な香りが生まれるため、大手メゾンの多くは規定より長い熟成期間を設けている。

ドザージュゼロは残り3本。「ローラン・ペリエ」、「ルイ・ロデレール」、「ポメリー」とお馴染みの大手メゾンのキュヴェが続きます。

ローラン・ペリエ
ローラン・ペリエ ウルトラ ブリュット

トゥール・シュール・マルヌのメゾンで、ドザージュゼロのパイオニア。熟度が高く、酸が低めのブドウを用い、最低6 年の熟成。「女性でいうところの元祖素肌美人。緻密な酸だが、ギスギスはしていない」(紫貴)。「レモンを丸かじりしたような、フレッシュな酸。後口に心地よいほろ苦味。兵庫・坂越の生ガキと」(柳)。
品種 シャルドネ 55%、ピノ・ノワール 45%
ドザージュ 0g/l
参考価格 13,020円
輸入元 サントリーワインインターナショナル

ルイ・ロデレール
ルイ・ロデレール ブリュット・ナチュール・ブラン フィリップ・スタルク 2012

ランスのルイ・ロデレールがデザイナーのフィリップ・スタルクとコラボして生み出したブリュット・ナチュール。ブドウはビオディナミ栽培。原酒の15%が樽発酵。マロラクティック発酵なし。「洋梨のタルト、オレンジの花、コーヒーのような香ばしさも。口当たりは滑らか」(紫貴)。「口中でじわりと広がる旨味」(柳)。
品種 ピノ・ノワール55%、 ムニエ25%、シャルドネ20%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 15,000円
輸入元 エノテカ

 

紫貴 やはりベースのヴィンテージや熟成期間で、酸味の感じ方が大きく変わってきます。この3つ、最初の方で見られたレーザーシャープな酸とは違う。なおかつ、味わいに深みが感じられます。ポメリーはデゴルジュマンの後、だいぶ寝かせてるんでしょうか。メイラード反応による香ばしさや、シャンピニヨンのニュアンスも出てきてますね。

デゴルジュマン ボトル内に溜まった澱を、瓶口に集めるルミアージュという作業のあと、集まった澱を取り除く作業。倒立した状態のボトルの瓶口部分のみをマイナス27度の冷却液に漬け、澱の部分を瞬時に凍らせる。続いて栓をした王冠を抜けば、瓶内のガス圧の影響によって凍った澱の塊部分が飛び出す。

ローラン・ペリエが最低6年、ルイ・ロデレールも同じくらい、ポメリーに至っては約15年の瓶内熟成です。その分、お値段も高めなわけですが、それだけ時間をかけて、素肌を磨いてるってことですね。

ポメリー
キュヴェ・ルイーズ・ナチュール 2004

ポメリーのプレステージ・キュヴェのドザージュゼロ版。「リンゴタルト、キャラメル、ペストリーの香りに加え、シャンピニヨンやコーヒーなど、熟成した風味が感じられる。スケールの大きなシャンパーニュ」(紫貴)。「これはもう別格。フレーバーは複雑で秋のイメージ。ヴェルレーヌの「秋の歌」。松茸の土瓶蒸し」(柳)。
品種 シャルドネ65%、ピノ・ノワール35%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 31,500円
輸入元 ヴランケン ポメリー ジャパン

ポール・ローノワ
モノクローム グラン・クリュ NV

メニル・シュール・オジェのRM。長く協同組合にブドウを売っており、シャンパーニュ醸造は2015年から。2016年ベースでリザーヴワイン30%。「1g/l でもドザージュされると、香りのニュアンスを感じやすくなる。フレッシュな青リンゴと焼きたてのパン。ピュア」(紫貴)。「青い空、草原を駆け回る麦わら帽子の少女」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 1g/l
希望小売価格 8,000円
輸入元 ヌーヴェル・セレクション

紫貴 ドザージュゼロと言っても酸味がとてつもなくシャープなものから穏やかなものまであって幅広い。何を基準に消費者はドザージュゼロを選べばよいのだろうかと、疑問に思いました。

売り手にそれなりの商品知識がないと、難しいアイテムですね。

さて、ここからはドザージュしたものになります。「ポール・ローノワ」はドザージュ1グラム。紫貴 わずか1グラムですが、香りが抑制されていたものの多いドザージュゼロに対して、これは香り立ちが良いですね。 やはり門出のリキュールにはそういう効果もあるのかな?

紫貴 ビルカール・サルモンやこのあとのシャンパーニュ J. ヴィニエと同じコート・デ・ブランのブラン・ド・ブランですが、1グラム違うだけで、酸味の強さも変わってきます。

「シャトー・ド・ブリニ」はアルバンヌやプティ・メリエなどマイナー品種も含めた6品種のブレンドという変わり種。1.7グラムのドザージュです。

シャトー・ド・ブリニ(RM)
シャンパーニュ・シャトー・ド・ブリニ・クロ・デュ・シャトー NV

南部コート・デ・バールのRM。シャンパーニュの認定7品種が植えられた0.9ha の区画で、ピノ・グリを除く6品種から造られている。「時間の経過とともに、グレープフルーツ、カリン、アセロラ、トースト、カルダモンなどさまざまな香りがグラスから立ち上る」(紫貴)。「フレッシュさと複雑さが混在。個性的な存在」(柳)。

シャンパーニュ ドゥヴォー(CM)
ウルトラD NV

南部コート・デ・バールのメゾン。大部分をオークの小樽で熟成させたリザーヴワイン35%。最低5年の熟成。「香り華やか。ゴールデンデリシャス、栗、スモーク。メイラード反応も」(紫貴)。「軽やかさの中に酸化熟成による複雑味。アタックは丸みを帯びる。味醂のようなニュアンスが感じられ、煮物と合わせてみたい」(柳)。
品種 ピノ・ノワール55%、シャルドネ45%
ドザージュ 3g/l
希望小売価格 10,000円
輸入元:国分グループ本社

 

紫貴 いろいろな表情をもつ、個性的なシャンパーニュですね。

新鮮な風味と熟れた風味が、グラスの中でせめぎ合ってる感じ。続いて3グラムの「ドゥヴォー」ですが、メイラード反応でしょうか。味醂っぽく感じません?

メイラード反応 糖とアミノ酸に熱を加えた時に生じる褐変反応。キャラメルやナッツ、カカオなど香ばしい芳香成分が生成される。メイラード反応は常温でも長時間経てば生じる。

紫貴 そうですね。煮付けとかに良さそう。

「ランスロ・ピエンヌ」はクラマン拠点のRMで、ドザージュが3.5グラム。ピュアですね、さすがに。

ランスロ ・ピエンヌ(RM)
ターブル・ロンド NV

クラマンを拠点とするRM。このキュヴェはクラマン、アヴィーズ、シュイィのシャルドネからなる。2015年ベースで2019年にデゴルジュマン。「青リンゴやマルメロに、ナツメグやクミンのようなスパイシー
さ。酸の固さは和らぎ、ほろ苦い後口」(紫貴)。「ハーブのような爽やかさ。旨味、滋味が感じられ、クリーミー」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 3.5g/l
希望小売価格 7,200円
輸入元 フィラディス

シャンパーニュ ジャカール(CM)
モザイク・エキストラ・ブリュット NV

ランスに本拠を置くメゾン。リザーヴワインが全体の1/3。ブリュットの3年に対し、5年の瓶内熟成。「バラの花弁のようなフローラルさ。スパイシーさもアクセント。しなやかな口当たりで、親しみやすい」(紫貴)。「浮遊感のあるエアリーな印象。ピュアなすっぴん顔。気さくに話しかけてくれるフレンドリーさ」柳)。
品種 シャルドネ40% 、ピノ・ノワール35%、ムニエ25%
ドザージュ 4g/l
希望小売価格 9,000円
輸入元 国分グループ本社

 

紫貴 固さがほぐれて、スパイシーさが感じられます。

「ジャカール」は4グラム。これくらいドザージュすると、はるかに飲みやすさは増しますね。

紫貴 本当に飲みやすい。フレンドリーです。松田聖子みたい。

どういう意味ですか?

紫貴 誰からも愛される。

聖子ちゃんてアンチもいませんでした? あっ、話が逸れましたね。次に進みましょう。「パイパー・エドシック」のブラン・ド・ブランで、ドザージュは4グラム。デゴルジュマンが2017年です。

パイパー・エドシック
ブラン・ド・ブラン エッセンシエル NV

ランスのパイパー・エドシックが近年リリースしたブラン・ド・ブラン。リザーヴワイン35%。2014年にティラージュ、2017年10月にデゴルジュマン。「柔らかな白桃など甘い果実に、キャラメルやローストなどメイラード反応」(紫貴)。「ピュアでフレッシュな酸。後口にミネラルの旨苦味。典型的ブラン・ド・ブラン」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 4g/l
希望小売価格 7,500円
輸入元 日本リカー

シャルトーニュ・タイエ(RM)
キュヴェ・サンタンヌ ブリュット NV

マッシフ・サンティエリーのメルフィに本拠を置くRM。このボトルは2018年8月にティラージュ、2019年12月にデゴルジュマン。「軽やかな口当たり。酵母の影響の少なさが、返って好ましい。畑の格付けを超えた素晴らしいワイン」(紫貴)。「エアリーだがマルチレイヤードで複雑。酸味もとげとげしくなくバランス」(柳)。
品種 ピノ・ノワール45% 、シャルドネ45%、ムニエ10%
ドザージュ 5-6g/l
希望小売価格 6,400円
輸入元 フィラディス

 

紫貴 キャラメルっぽい風味がしますが、ドザージュ後の期間が長いので、メイラード反応が起きたのでしょうか。

その可能性はありますね。ブラン・ド・ブランとしてとても良いバランスです。

紫貴 この後はエクストラ・ブリュットとしてドザージュ上限の5〜6グラムですね。 はい。メルフィのRM「シャルトーニュ・タイエ」、クラマンのRM「J・ヴィニエ」、そして最後にエペルネの大手メゾン「モエ・エ・シャンドン」です。

シャンパーニュ J. ヴィニエ(RM)
オラ・アルバ グラン・クリュ NV

クラマンに本拠を構えるRM。セザンヌにも畑をもつ。このキュヴェはクラマン、シュイィ、オワリーのブドウをブレンド。最低6年の瓶熟成。「焼きリンゴ、栗、アーモンド、トーストなど複雑な香り。やや苦味が強いが、熟成感を楽しみたい方に」(紫貴)。「ブラン・ド・ブランらしいテンションと熟成による複雑味が調和」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 5g/l
参考価格 6,800円
輸入元 出水商事

モエ・エ・シャンドン
モエ・エ・シャンドン グランヴィンテージ 2012

モエ・エ・シャンドンのグラン・ヴィンテージは、以前からドザージュ6g/l 未満だったが、表示はブリュット。2009年ヴィンテージ以降、エクストラ・ブリュットに。「まろやかで酸もきつすぎず端正な味わい。さすが『世界で一番愛されるブランド』だ」(紫貴)。「王道の中の王道。低いドザージュでも包容力を備えている」(柳)。
品種 シャルドネ41%、ピノ・ノワール33%、ムニエ26%
ドザージュ 5g/l
希望小売価格 9,600円
輸入元 MHDモエヘネシー ディアジオ

 

紫貴 シャルトーニュ・タイエは熟成期間が短いですけど、その分、フレッシュさが際立ちますね。逆にJ. ヴィニエは熟成感が強く出ていて、モエ・エ・シャンドンはさすがの安定感。

酸の強いシャンパーニュを口にしたので、歯のエナメル質が溶けちゃいました。今晩の歯磨きが怖い。

エクストラブリュットの試飲を終えて

紫貴あき
エクストラ・ブリュットというと悶絶するような酸っぱさをどこか想像していた。しかし実際は品種、リザーヴワインの使用、瓶熟成期間によって印象が大きく変わり、スタイルに幅があることが分かった。まさに造り手の「匠の技」と納得。食のライト化、地球温暖化も手伝い、これからさらに低ドザージュのシャンパーニュは増えるだろう。飲み手はその「幅」を楽しむことができる一方、売り手はそのスタイルを消費者に正確に伝える知識と経験が求められそうだ。

柳 忠之
シャンパーニュのトレンドである低ドザージュ化は、昨今の温暖化の影響を鑑みるに必然とも言える。また、多くのメゾンがリザーヴワインの比率を増やしたり、熟成期間を長くとり、素の状態の品質を高めているため、ドザージュに頼る必要もないのだろう。素材重視の食のトレンドも、シャンパーニュの低ドザージュ化と符合する。ただ、ドザージュゼロの中には香りが開かず、酸がかなり強く感じられるものも多かった。こうしたタイプは真夏のリゾートで活躍しそうだ。

この記事を書いた人

WINEWHAT
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