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ワインセラーのある暮らし

自宅にウォークインセラーをつくった藤巻暁さんに聞く

自らの手で、大切なワインを育てる。ワイン好きにとっては憧れのワインセラーライフ。

ウォークインセラーという贅沢な環境を実現したプロのご自宅に伺い、そのセラー遍歴や設計上のこだわり&アイデアを教えてもらった。

自宅の建て替えを機に完成したウォークインセラーには、約1,500本のワインを保管する。

藤巻さんの「ワインストック」史

東急百貨店本店和洋酒売場に勤務するほか、スクールでも講師を務める藤巻暁さん。圧倒的な知識と経験値に裏打ちされた、初心者にもわかりやすい説明に定評があり、ワイン好きの間では頼れる兄貴的な存在として知られている。

藤巻暁さん
シニアソムリエ、WSET® アドヴァンスト・サーティフィケイト。東急百貨店本店 和洋酒売り場「THE WINE」でソムリエを務めながら、ワインスクールで数々のセミナーも担当。

藤巻さんは、大学時代にワインに興味を持ち、フランスを周遊。飲食店やワインバー勤務を経て現職に。

自身の深いワイン愛から、現在自宅に約1,500本を所有しているが、4年半ほど前、自宅を改築した際には、ついに自らの思想をたっぷり盛り込んだウォークインセラーを完成させた。とはいえ、長いキャリアのなかでは、実にアナログな方法からセラー導入まで、さまざまな経験を重ねてきた経緯がある。

「今ほど簡単にセラーが手に入らなかった昔は、ボトルをタオルで包み、日が当たらない部屋の押し入れ、しかも布団の間に押し込んでストックしていたこともあります。おススメはしないけれど、意外に失敗しないものでしたね(笑)」

藤巻流 セラー選択基準

その後、レストランに勤務していた90年代には、より良い環境を整えんと、セラーを購入した。

セラー選びのポリシーはシンプル。メーカーのフラッグシップ機種が、性能的に一番。また、容量が変わっても、設置に必要な底面積にはさほど大きな違いはない。だから後で入りきらなくなって後悔するくらいなら、家が狭いからこそ収納本数が多いものを買うに限る。

しかし、ついには寝室にも3台、メインのワイン部屋には120本収納のセラーが5台という事態に。

「ある日、ふと違和感を覚えて床にビー玉を置いてみたんです。すると、コロコロと転がってしまう。何と、セラーの重さで床が傾いてしまっていたんです(笑)」

120本セラーとなれば、本体だけで100キロ超。そこにワインを収めた状態が5台ともなれば、数トンという負荷が木造建築にかかっていたのだから、無理もない。そこで、建て替えを機にかねてから時間をかけて計画していたウォークインセラーを実現させた。

集大成としてのウォークインセラー

放射パネル内に冷却水を循環させるシステムを導入。風や振動を発生することなく、最適な温度を保つことができる。

念願のウォークインセラーを作るにあたり、まず採用したのは、放射パネル内に冷水を循環させるシステム。振動が起きないことはもちろん、コルクを乾燥させる原因になる風が発生しないのがポイントだ。

次に、ラックの仕様。地震が起きても飛び出して破損しないよう、かつ液面がコルクに触れている状態に保つために、ボトル底部を低く、角度14度に傾斜した状態がベストと判断。壁面には衝撃を吸収できるクッション性を持つ素材を使用している。

ラック上には、地震の揺れからボトルを守ってくれるスポン ジ状の素材を採用している。

セラー内の温度は常時、12〜15度で湿度が70〜80パーセント。湿度は重要だが、高すぎればカビが発生するため、ラックは吸湿性のあるオーストラリア産自然木のボルデックスを採用している。

湿度管理ができるよう、保水性が高い鹿沼土を湿らせ、備長炭、トルマリンとともにセラー内に設置。

「セラーを造ってよかった!」

あふれるワイン愛と経験のすべてを注ぎ込み、自らの集大成ともいえるセラーを完成させた藤巻さんに、どんなときが至福の瞬間なのかを聞いてみた。

「これといって用がなくても、毎日のようにセラーを覗きます。ひんやりしているので、ちょっと考え事をしたり(笑)。産地別に大まかな分類はしていますが、エクセル表での管理などはしていないので、もう飲んでしまったと勘違いしていたけど、『おお、このワインがまだあったか!』など発見して喜んだりしていますね」

ルバイヤートの「プティヴェルドー1996」とシャトー・メルシャン「北信シャルドネ1998」な ど、貴重なヴィンテージの日本ワインも。
お宝ワイン3本、右から、「ルロワ/ミジュニー1999」、「ドメーヌ・ルフレーヴ/モンラッシェ1996」、G.H. マ ムが1966 年~1985 年に生産していた「キュヴェ ルネラルー」の1979 年マグナム。

では、押し入れ収納から大型セラー導入で自宅の床を傾かせてしまったりと稀有なエピソードを持つ藤巻さんにとっての、セラーを持つ意味とは?

「大げさかもしれないけれど、ワインがあると気持ちが豊かになる。ワインがなければつながらなかったであろう人と親しくなれたり。でも、決して気取ったものではないんです。ワインとは5〜10年を経て明らかな変化が現れ、味わいの豊かさ
が増すもの。記念日を楽しみに、大切に育てたり、いつかあの人と飲みたいと思ってストックしておいたり、時間を重ねるという経過にワクワクできる。そんなワインの醍醐味を自らの手で実現できるのが、セラーを持つ意味ではないでしょうか。」

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