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グリューナー・ヴェルトリーナーの新章が始まる

オーストリア発プレミアム白ワイン「ニュー・チャプター」を試飲

グリューナー・ヴェルトリーナーと言われて、ピンとくるだろうか?

これは白ワイン用のブドウ品種の名前だ。産地はオーストリア。オーストリアの固有品種で、オーストリアでは最も重要な品種だと言われている。なぜなら、オーストリアのワインブドウ畑の栽培面積のうち、30%以上を、このグリューナー・ヴェルトリーナーが占めているから。オーストリアでは、最も広く、多く栽培されているこの品種。しかし、地元以外では、あまり知られていない。

「グリューナー・ヴェルトリーナーを世界に」

グリューナー・ヴェルトリーナーから世界トップクラスの白ワインを生み出すべく、ふたりの男が動いた。

オーストリアから世界へ

グリューナー・ヴェルトリーナーは、オーストリア原産にして、オーストリア国内では最も生産量が多い白ワインブドウだ。オーストリア全域での栽培が始まったのは1950年代。レンツ・モーザー博士という人物が、「ハイカルチャー仕立て」を開発して生産が拡大した。

ハーブやホワイトペッパーのような香り、爽やかな酸味を引き出したり、高い糖度を実現することもできる品種で、様々なスタイルのワインを造ることができるのだけれど、オーストリア国内、ドイツ語圏内で人気のため、そこから出るのはたったの10%に過ぎない。

グリューナー・ヴェルトリーナーの立役者、レンツ・モーザー博士を叔父にもつ、同じ名前のレンツ・モーザーは、このグリューナー・ヴェルトリーナーで、ワールドクラスの白ワインを造る、というプロジェクトを開始した。

レンツ・モーザー。17世紀からワイン業界に身を置くオーストリアの名門ワイン一族、モーザー家の15代目。叔父はレンツ・モーザー博士、父親はオーストリアにビオディナミを紹介した人物。地場品種 グリューナー・ヴェルトリーナーの伝道師だ。

レンツさんとともに、このプロジェクトを立ち上げたのが、マルクス・フーバー。マルクスさんはトライダンゼールのワイン生産者として10代目であり、2020年「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」でベスト白ワインメーカーに選ばれた注目の若手生産者。

オーストリアワインを牽引する、このふたりのプロジェクトから誕生した「ニュー・チャプター」というワインを試飲し、ふたりの話を聞くというウェビナーが開催され、WINE WHATは参加したのだった。

マルクス・フーバーとレンツ・モーザー。周囲に広がる、特徴的なブドウ樹の仕立てが、レンツ・モーザー式 ハイカルチャー仕立てだ。

畑はすべて東向き。唯一の石灰質

ニュー・チャプターの畑は丘陵の中腹にあり、すべて東向き。

マルクス・フーバーさんのホーム、トライダンゼールはグリューナー・ヴェルトリーナーのホームだ。

ニーダーエスタライヒ州のトライゼン川流域に広がる、このトライゼンタールは、グリューナー・ヴェルトリーナーの占有率65%という、オーストリア最大のグリューナー・ヴェルトリーナーの産地なのだ。

黄土で栽培されることが多いグリューナー・ヴェルトリーナーだけれど、ここの土壌は石灰質。石灰質土壌にグリューナー・ヴェルトリーナが植えられているのは、ここだけだ。冷涼な気候と相まって、ミネラル感があり、生き生きとして爽やかな酸のあるブドウが育つ。ふたりはここを、ニュー・チャプターのブドウの産地とした。

「私たちの畑ではグリューナー・ヴェルトリーナーが75%という高比率を占め、ニュー・チャプターにはプルミエ・クリュを含む最高の区画のものを使っています。畑は、オーガニック栽培で、畝ごとにクローバーやサンフラワーなど、25種類ほどのカバークロップを植え、畑を健全な状態に管理することも心がけています。」

ニュー・チャプターのスタイル

ふたりが目指したニュー・チャプターはグリューナー・ヴェルトリーナーで、世界の檜舞台で活躍できるワインだ。それは、世界の名だたる白ワインと、おなじカテゴリーに入るものでなければならない。

ふたりは、国内国外で成功しているトップのワインをテイスティングすることから始めた。

グリューナー・ヴェルトリーナーに弱点があるとすれば、どこか? ふたりはベンチマークとなるワインを少なくとも100以上試飲したという。

「ニュー・チャプター」のために試飲したワインの一部。ふたりが目指すワインのベンチマークであり、ライバルたちだ。

国際的に愛される白ワインはどんなスタイルなのか? ニュージーランドのクラウディー ベイは? フランス ペサック・レオニャンのシャトー・カルボニューは?

しっかりとした果実味、フレッシュさがあり、飲みやすい。一方で、オーストリア国内の高級なグリューナー・ヴェルトリーナーはどうか? 概ねコクがあり複雑さもあるが、非常に豊満なスタイルのものが多い。ふたりが発見した、グリューナー・ヴェルトリーナーの現在のスタイルと、国際的な白ワインとの違いは、豊満さだった。グリューナー・ヴェルトリーナーが目指すべき新しいスタイルは「パワフルだけれど豊満ではない」なのだ。

そこでふたりは、畑から見直すことにした。

「優れたワインは優れた畑から」の一歩先

「畑は、120の区画に分けられており、自分たちが思い描くスタイルのワインを造るためのグリューナー・ヴェルトリーナーをフレキシブルに選ぶことができます。」

収穫は、10月初旬から11月初旬。4週間をかけて行われる。早く摘まれたブドウには生き生きとした果実味、フレッシュさを、遅く収穫されたブドウには複雑さを求める。

多くのグリューナー・ヴェルトリーナーが、フィネスやエレガンスに欠けるところがあるという。収穫時期の調節は、それを克服するためだ。そらに、法律で許される範囲内で、わずかに(1パーセント程度)リースリングなどの他品種をブレンドした。

「オーストリアではブレンドに重きをおかず、一つの畑から、一つのワインを造る、という発想が一般的です。素晴らしいワインは、優れたブドウ畑から造られるという考え方です。私たちのニュー・チャプターの畑は、最高の畑ですが、さらに、区画ごとに収穫時期を変えたブドウを別々に醸造して、それらをブレンドすることで、自分たちの目指すスタイルを実現しています。」

その、ブレンドの素材となるワインには全房発酵を採用したものもあるという。発酵前のマセレーションは6~7時間。

熟成にはステンレスタンクとアカシアの木樽、さらに500mlのブルゴーニュ樽も使う。樽のニュアンスは、後味ですこしだけ、優しく感じられる。

また、ボトルデザインも従来のグリューナー・ヴェルトリーナーのワインとの差別化をはかり、力強さを強調することで新しいグリューナー・ヴェルトリーナを表現しているという。

Tomorrow’s Gruener, Today

「明日のグリューナー・ヴェルトリーナを今日飲んで欲しい」

と、ふたりは語る。それは、将来のグリューナー・ヴェルトリーナーのスタイルを、ニュー・チャプターはいち早く実現している、という意味かと思ったら、どうやら、それだけではないようだ。なぜなら

「いま飲んでさらにもう一杯のみたい、また飲みたいと求められるワインを造り続けていきたい。」

というからだ。ただ、明日になったら、飲みたいワインが変わっているかもしれない……

「私たちは、明日、消費者が何を求めるのか考え続けることが必要だ。」

2019年ヴィンテージをもって、欧州で発売した「ニュー・チャプター」。発売から約1カ月が経過した時点では、評判は上々。販売も予想を大幅に上回っているという。日本での発売は、未定とのことだけれど、日本発売のニュースが待ち遠しい。

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