食事の前の一杯=アペリティフはすっかり定着した。
でも、「食事の後の一杯」=ディジェスティフはどうだろう?
ワインの余韻を楽しみたいあなたにオススメしたいブドウからつくられる食後酒。消化にもよいですぞ。

文:森田七海 / 写真:篠原宏明

826-1

フランスで「ディジェスティフ」と言われる食後酒には、大きく分けて蒸留酒と酒精強化ワインがある。ともにワインよりもアルコールは高めだが、これが胃の働きを活性化させ、消化を助けてくれるのだ。さらに食事の後に飲むものだから、多少強いお酒でも胃を痛めることがない。

味わいも、甘口から辛口まで幅広く、デザートやチョコレートで〆たい甘党でも、デザート代わりにチーズという辛党でも、必ず満足できる一杯に巡り合えるはずだ。もちろんシガーとの相性も抜群。食後酒にちょっと吸い口を浸して、シガーをくゆらすなんて、上級の技もある。

とはいえ、欧米人ほどお酒に強くない日本人。「ワインの後にお酒は、ちょっとハードかも?」と躊躇しがちだが、ここで食後酒3つのメリットを紹介しよう。

デザートでもチーズでもマッチする懐の広さ

和食と違い、フレンチやイタリアンではほとんど料理に砂糖を使わない。だからデザートで大量に糖分を補給するのだが、デザートよりチーズでしめくくりたい人も多いだろう。そんな時、ぜひ試していただきたいのがマデイラやポート、シェリーといった酒精強化ワインだ。チーズのこってりとした厚みや塩気を包み込む、甘やかな食後酒のうっとりするような包容力。熟成×熟成の生み出すマジックを、ぜひ体感してほしい。

大人のデザートとして、そのまま飲むのもいい。

甘口といっても、酒精強化によりハード系の要素がプラスされるため、いわゆる「甘口ワイン」とは一線を画した熟成由来の深い味わいが楽しめる。

ハード・リカー系をバーでいただくのはハードルが高いものだが、食後酒なら気軽に頼めるのもいい。デザートでもチーズでも、幅広くマッチする懐の深さこそが、食後酒の魅力なのだから。

ヴィンテージものでも、ワインの3分の1のお値段

生まれ年のワインは、誰にとっても特別な意味を持つ。でも、ある程度の年齢になってくるとかなりのお値段を覚悟しなくてはいけないし、バッドヴィンテージだったりすると生まれ年のワインを探すことすら難しくなってくる。

でも、ワインと比べ、マデイラをはじめ食後酒にカテゴライズされる酒精強化ワインは、かなりのヴィンテージものでもワインと比べればぐっと安く手に入る。たとえば、1950~60年代のものでも、ワインと比べ、3分の1ほどのお値段で手に入れることができる。

さらにうれしいのは、抜栓後も味わいが変わらないから、その日に飲みきる必要がないことだ。ヴィンテージ・ワインは飲み頃を見極めるのが難しいが、食後酒ならいつ開けてもおいしく楽しめる。自宅に一本あれば、抜栓後も毎晩少しずつ味わうことができるというわけだ。

蒸留酒系だとヴィンテージより熟成年数が表記される場合も多いが、長期熟成させたものでもウイスキーと比べれば、ずっとお得! ウイスキーではなかなか手が出ない20年熟成、30年熟成ものでも、ちょっとがんばれば手が届くのもうれしい。

少し勉強すれば、「通」になれる

世界に広がる産地、3000はあるといわれるぶどう品種に加え、村の名前から格付けまで、ワインには覚えなくてはいけないことがたくさんある。でも、食後酒に関して覚えるべきことはそれほど多くない。地域が限定されているため、生産者の数こそ少ないが、いずれも長い歴史を誇る選り抜きのブランドばかり。少し勉強すれば、すぐ食後酒の「通」になれるし、造りの違いを究めれば、さらに奥深い世界をのぞくことができる。

食後酒最大の魅力は、ワインよりずっと自由に楽しめることだ。

グラスの中で華やかに香る個性、時間が育んだ奥深い味わい。食後酒ほど、長い夜を締めくくるのにふさわしいものはない。デザートの代わりにチーズを楽しむように、コーヒーやお茶する代わりに食後酒を。素晴らしいワインを堪能した後は、大人にだけに許されたスマートでラグジュアリーな時間を過ごしてみたい。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
2017年11月号(通巻19号)ただいま発売中!
巻頭特集は、お好み焼きに合うワインを徹底研究。4人の料理人による創作お好み焼きにタベアルキストのマッキー牧元さんも唸りっぱなし。
柳 忠之さんの「新オーストラリアワイン紀行」、11月16日解禁「ボジョレー・ヌーヴォー」にも注目!
表紙の美女は女優・飛鳥凛さんです。もうお腹いっぱいだけど、おかわりしちゃおうかな〜。すいません、もう1冊ください!