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チリのアイコン・カベルネ「コノスル シレンシオ」を試飲

口に含んだ瞬間、味わいの複雑な構成と深さに思わず声を失う!

〝沈黙〟の意味

ソムリエやワイン・ジャーナリストなどのプロが集うブラインド・テイスティングで、常に圧倒的な強さを見せるコノスル。いや、これは本当の話。ワイン雑誌やい一般誌のワイン特集で、コスト・パフォーマンスに優れたワインを公平に試飲して決めるページをいくつかチェックすれば、すぐ明らかになる。実際、最後に銘柄の種明かしをした時点で、「また今回のコノスルのワインが高得点か……」とプロが呟くのを、今までに何度耳にしたことか。味わいのバランスがきれいにとれた上で、玄人受けする未来的なエッセンスを必ず秘める。とはいえ、それが恣意的であれば、ソムリエたちの心には響かない。コノスルのワインは実に憎いのである。

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コノスルといえば、オーガニックワイン愛好家の中でも評価が高い。
畑で働く人々の移動は、排ガスを出す自動車の代わりにエコな自転車を利用。
これがラベルのシンボルになっている。害虫対策もケミカルでなく、アヒルの食欲にお任せだ。
自然派の造り手にありがちな独善的な気負いが感じられないのは、すべてが環境に対する愛情ゆえの選択だから。

そのコノスルが、満をじして新たなるアイコンワインを生み出した。口に含んだ瞬間、味わいの複雑な構成と深さに圧倒されて思わず声を失うことから名付けられた、〝沈黙〟を意味する「シレンシオ」である。

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カベルネ・ソーヴィニヨン 98%、カルメネール 2%。収穫は手摘み。
フランス産の新樽を100%使用し、22カ月熟成。テイスティングを重ねたのち45樽から9樽だけを厳選して瓶詰を行う。
よく熟したプラムやベリー、黒こしょうのニュアンスがあり、タンニンは柔らかく舌触りがシルキー。
いますぐ飲めるスムーズさを持ち合わせているが、10年セラーで寝かせられるポテンシャルもあり、将来が楽しみだ。

南米のボルドー

北のリマリ・ヴァレーから南のビオビオ・ヴァレーまで、チリの優れたワイン産地を網羅してきたコノスルが「シレンシオ」の産地に選んだのは、マイポ・ヴァレーだ。

 細長いチリの中央に位置するマイポ・ヴァレーは、チリワイン発祥の地、スペインからやってきた入植者が開墾を進めた16世紀、首都サンティアゴの都市建設と並行し、近郊のマイポでワイン造りがスタートした。銘醸地への転換期は、19世紀だった。フランス帰りの人々が運び込むボルドー系品種が次々と植樹され、成功をおさめたのだ。いまやカベルネ・ソーヴィニヨンがマイポ・ヴァレーを代表する品種となり、時にマイポ・ヴァレー自体が「南アメリカのボルドー」と呼び習わされる。

もちろん、ボルドー地方とマイポ・ヴァレーはテロワールがまったく異なる。大西洋の影響を受け、雨がやや多い海洋性気候のボルドーに比べ、マイポ・ヴァレーは地中海性気候に分類される。非常に乾燥したエリアながら、標高の高い山々からの雪解け水が地中を走り、豊かなミネラルとともにブドウの健全な生育を促す。気温も、ブドウ栽培に味方する。昼夜の温度差が大きいほど良質なブドウとなるのはよく知られているが、夏には暑い昼と涼しい夜とで20℃以上の開きのある日も。

酸と果実味の両者を豊かに蓄え、高級品種のカベルネのポテンシャルが最大限に発揮できるエリアなのである。ゆえにチリワインのエキスパートが辿りついた決定的な産地と品種が、マイポ・ヴァレーであり、カベルネ・ソーヴィニヨンだったというわけだ。

とはいえ、「あのコノスルが、このマイポで、なぜカベルネなのか?」に対する答えは、ワインが饒舌に語ってくれる。我々は黙って、チリの大地の恵みに浸ることにしよう。

(文/山本真紀)

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