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ベルモットのカクテル復活!

創業260年のチンザノの高級ライン「1757」はBARにある

アメリカーノとネグローニ

というようなことで、チンザノは今までの「クラシック」ラインに加えて、「1757」という創業年をネーミングとするクラフトベルモットを業務用として新たに発売したのでした。クラシックの2倍ほどの価格になるこれは、厳選したボタニカル(植物)と長期のマセレーレションから生まれるバランスの取れた味と長い余韻を特徴とする。

WINE-WHAT!?読者諸兄には蛇足ながら、マセレーションとは、果皮を果汁に漬けて、果皮のタンニンを溶け出させ、ワインの風味に独特の渋み加えることをいう。

ようするに、プレミアベルモットの1757はフォーミュラが違う。パッケージもクラフト感があるものに変えていて、その味わいはカンパリとパーフェクトマッチする。

スペインやアルゼンチンでは、ディナーの前にチンザノ・クラシックをオンザロックやソーダで割って飲むひとが多い。かの地では、タパス(前菜)をつまみながら、アイスキューブやソーダ、オレンジジュース等とのイージーミックスで一杯やりながらおしゃべりする。このひと時を、現地語で「ベルモットの時間」と呼ぶ。

アルゼンチンでは「スプモーニ」が人気で、これは「チンザノ ロッソ」にグレープフルーツ・ジュースを加えたもので、爽やかに楽しめる。

プレミアム・ベルモットの「1757 ロッソ」はプロフェッショナル・バーテンダーのいるバーで楽しんでもらいたい。

たとえば、カンパリとチンザノでつくるとクラシック・カクテル「ミト」。カンパリとチンザノを1:1でブレンドしたもので、ミはミラノのドゥオモ広場を発祥の地とするカンパリを、トはチンザノのホーム、トリノを表す。アルファ・ロメオにもMiToというクルマがありますが、このカクテルともかけていたのですね。20世紀初頭、氷もソーダもまだない時代に発明されたこのカクテルのグランドファーザーは、常温で飲まれていたという。

これにソーダと氷を加えてグッと飲みやすくしたのが「アメリカーノ」というカクテル。この名前の由来は、ヨーロッパにソーダマシンをもたらしたのがアメリカだったからという説と、一部にアメリカでボクシングの世界チャンピオンになったイタリア人、プリモ・カルネラがイタリアで「アメリカーノ」と呼ばれていたから、という説がある。

プリモ・カルネラといえば、力道山と戦った殺人パンチをもつプロレスラーで、「動くアルプス」として日本国民の間では知られているけれど、つまりこのアメリカーノのニックネームを持つイタリアのヒーロが好きだったベルモットのカクテルがこれだった、ということでしょうか。じつは記者はこの大事なところを聞き逃してしまいました(汗)。

BAR保志のネグローニは、1杯1700円。ベルモット30、カンパリ10、ジン20各ml。カンパリの爽やかさとベルモットの甘さのハーモニー。ベルモットの甘さはボタニカル由来で、砂糖は使っていない。

鮮やかな手つきでネグローニをつくるBAR保志のバーテンダーの高橋大輔さん。

「アメリカーノ」の後、1919年にフィレンツェで生まれたのが「ネグローニ」で、「アメリカーノ」は飽きたから、ソーダをジンに代えてくれ、とカミロ・ネグローニという伯爵が行きつけのバーだかカフェだかで頼んだことから、俺もそれを、と人気を呼んでクラシックカクテルにまで昇格した。

ソーダをジンに代えたらアルコールがメチャクチャ強くなるじゃん、とお酒の弱い日本人は思うけれど、さすがイタリア人貴族です。1919年、ヨーロッパを戦火に巻き込んだ第一次大戦がようやく終結し、やがて狂乱の20年代が幕を開ける。

ちなみに、1919年という「ネグローニ」の誕生年が聞き間違いでなければ(聞き間違いではないみたいですけど)、プリモ・カルネラがアメリカでチャンピオンを獲ったのは33年なので、カルネラ=「アメリカーノ」由来説はやっぱりマユツバということになる。あるいは、チンザノとカンパリのソーダ割自体はあったけれど、「アメリカーノ」という名前がついたのは「ネグローニ」の発明よりもあとだった、と考えるのが妥当だ。

というようなことは誰でもすぐわかるわけで、それでもネリさんがあえてカルネラ説をつけ加えたのは、プリモ・カルネラは今もイタリアの英雄だから、なのだろう。

グッと時代が降って、40年後の60年代のこと。ミラノにバルバッソというバーがあって、ここのバーテンダーがネグローニをつくろうとしていたんだけど、その時、ジンを入れなくちゃいけないのにスプマンテを間違えて入れてしまって生まれたのが「ネグローニ・ズバリアート」、イタリア語で「ネグローニ間違えた」という意味のこれは、結果として飲みやすいカクテルの王様になった。

ベルモット40、スロージン10、ウォッカ10各ml
に、フレッシュレモンジュースを1ティースプーン加えることで、スッキリ感を出すBAR保志のオリジナルカクテル。1杯1800円。今回は、1757 ロッソでつくったものをいただいた。甘さ控えめで、さわやか。

以上、ベルモットのウンチクだけで、ネリさんのお話はたいへんおもしろかったのですが、これに試飲でアルコールが加わってますますハッピー。ベルモットというのは浅草の「電気ブラン」にちょっと似ている、と密かに思ったけれど、あれより甘くなくて、スッキリしていることもまた確かである。

ネリさんによると、世界的に見て、ベルモットの販売量はフラットかもしれないけれど、高い製品の比率が増えているという。つまり、売り上げは伸びている。品質の悪いものは淘汰され、プレミアムブランドの価値がますます上がってきている。グローバルなトレンドとして、クオリティがますます問われている。チンザノが「1757」シリーズに力を入れる理由がここにある。伸び代がまだまだある、と考えているのだ。

昨今、インフルエンサーとしてネリさんたちが重視しているのがミクソロジスト=ミックスするひと、すなわちバーテンダーである。銀座のかっちょいいバーでネグローニを注文して飲むわたし、なんてのがインスタ映えするであろうことは容易に想像できる。

なにはともあれ、チンザノ ベルベットのカクテルにカンパイ!

Andrea NERI (アンドレア・ネリ)
マネージングディレクター  イタリアンアイコン/MANAGING DIRECTOR ITALIAN ICONS

2008年よりカンパリグループに参画。アペリティフブランドのグローバルマーケティング戦略及びイノベーションを担う。 2014年から3年間イタリア本社マーケティング本部長、2017年から現職マネージングディレクターとして、イタリアンブランドポートフォリオのグローバル展開の統括を行う。

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