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アジア・オセアニア決勝戦の巻

石田 博、ソムリエ世界一への道 Vol. 04

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戦い前夜

石田は香港に渡るまでの1カ月間、家の近くにウィークリーマンションを借り最後の調整に入った。おもに筆記試験の問題に取り組むためである。

朝5時半に起床して6時から勉強。それを19時まで続け、夕飯をとるためにだけ自宅に帰り、22時から翌0時半までまた勉強。テレビはNHKのニュースのみ。それだけの集中力を維持できたのは、高校まで続けた野球のおかげかもしれない。

アジア・オセアニア最優秀ソムリエコン・クールの公開決勝は、11月6日午後3時から、香港のコンベンション&エキシビジョン・センターで開催された。コンクールには 10カ国から18名のソムリエが出場。日本からは石田氏ともうひとり、昨年の全日本最優秀ソムリエ・コンクールで2位となった野坂昭彦氏が、福岡でのリベンジを果たすべく出場した。

18名は準々決勝で9名に絞られ、続く準決勝で公開決勝に出場する3名が選ばれる。準々決勝が終わった時点で石田は、今回の審査はかなりタフなものになる、と思った。

「筆記とブラインド・テイスティングの後、シャンパーニュを3分間でサービスする実技審査がありました。グラスを準備していたら、口紅のついてるグラスに気付いて、ああ、これがいつものトラップかなと、それを除けてテーブルまできれいなグラスを持って行ったんですね。ところが模擬客から口紅を指摘されたんです。おや、と見るとたしかについている。それでほかのグラスも確認すると、すべてに口紅が着けられていたんですよ」。

石田はそのやり取りで時間をロスしてしまい、シャンパーニュを注ぎ切れなかった。ところが思いのほか筆記試験がうまくいき、準決勝へとコマを進めた。

準決勝にもトラップが仕掛けられていた。

赤ワインのデカンティングで用意されたワインはラベルが下向きになっていた。ここで安易にボトルをひっくり返してはならない。デカンティングを指示されたということは、そのボトルの中に澱があることを想定しているからだ。

石田はそこでラベルが下向きのまま客にプレゼンし、パニエに移して抜栓、デカンティングという方法をとった。

ところがーー、この審査のトラップはラベルが下向きなだけではなかった。

「2011年のワインをデカンティングするよう指示されるのですが、ボトルは全部で4本あり、そのうち2本が2012年でした。私は運良く2011年を手に取りましたが、じつは2012年が混ざっていることに、最後まで気づいていなかったんです」。

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