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アジア・オセアニア決勝戦の巻

石田 博、ソムリエ世界一への道 Vol. 04

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マグナムボトルのシャンパーニュを18コのグラスに均一に注いで空にするのが課題。

張り詰める緊張

公開決勝に挑む3人の名前は、決勝審査の直前に発表された。決勝に進む3人の選手のうち、石田の名前は真っ先に呼ばれた。ほかのふたりは、地元香港で活躍する中国代表のホー・ポン・ワレス・ロー、それにオーストラリア代表のバンジョ・ハヴィス・プレーンで、ふたりとも20代という若さだった。

審査を受ける順番はくじ引きで決める。ローが1番目、ハヴィス・プレーンが2番目、そして石田が最後となった。石田は福岡でもトリを務めた。この順番が吉と出るか、凶と出るか。

決勝の審査について説明しよう。まずはブラインド・テイスティングである。白ワイン1種類、赤ワイン1種類、それにワイン以外のアルコール飲料が6種類。ワインは普通のグラスだが、他のアルコール飲料は色がわからないよう黒いガラスに注がれている。

次の問題は、スクリーン上に現れるリストを見ての間違い探し。全部で8つのリストが掲示される。各リストには3つのワインがあり、そのうちの1つに誤りがある。

続いて実技審査。その1は、開催地の香港らしく点心のメニューに合わせて3種類のロゼワインを選ぶ。ただし、そのロゼワインの生産国が重複してはならない。またテーブルについた男性がロゼワインを好まないため、ビールを3種類挙げるように言われる。これまた生産国はバラバラに。

実技その2は、ドイツの白ワインのサービス。ワインはシュロスフォルラーツの2014年で、栓がコルクではなくヴィノロックと呼ばれるシリコンのパッキンが付いたガラス栓になっている。模擬客の女性が、そのヴィノロックについて質問するので、うまく対応しなくてはならない。

実技その3は、赤ワインのデカンティング。ホストの男性が、「到着の2時間前にデカンティングするようお願いしておいたのだが」という。しかし、ワインはデカンティングされていない。これにどう対応すべきかが問題だ。

審査で使用可能な言語は英語、フランス語、スペイン語の3つ。ただし、母国語を使ってはならない。英語が母国語のハヴィス・プレーンはフランス語、中国語のローは英語を選び、石田はフランス語を選択した。香港出身のローにとって英語は母国語同然だから、ここはローが有利だろう。

過去2回行われたアジア・オセアニア最優秀ソムリエ・コンクールの勝者は、第1回が日本の森 覚、第2回がオーストラリア在住のフランス人、フランク・モロー。決勝に進出したのも日本かオーストラリアの代表のいずれかで、他の国の代表が決勝まで残ったことはない。その意味でローは香港初の快挙である。

しかもローは、もっとも緊張するはずの1番手でありながら、見事なパフォーマンスを見せた。ホームという地の利はあったろうが、確実に点を取る方法を研究していた。

ハヴィス・プレーンはフランス語に手を焼いた。自分が決勝に残るとは夢にも思わず、フランス語の学習を積んでいなかったのだ。

彼らに較べ、ベテランの石田は流暢なフランス語でブラインド・テイスティングのコメントを述べ、模擬客の質問にもジョークを交えながらうまく対応した。しかし、会話のやり取りに時間を費やし、実技の最後、デカンティングの後にグラスに注ぐ段になりタイムアウトを喫した。

個別の審査終了後、3人揃って登壇。最後に2つの課題が待っていた。

ひとつはスクリーンに映し出されるワイン関連の人物や場所、物の名前を、手元の紙に書いて会場に見せる。もうひとつはマグナムボトルのシャンパーニュを18脚のグラスに均等に注ぐ、というものだった。この時、一度注いだグラスに戻って注ぎたすことは許されず、マグナムボトルは注ぎ切ることが課せられた。

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