5種類のクリスタル
そんな話を聞いた場所は、東京タワーのふもとに位置する「とうふ屋うかい」。「クリスタル・ヴィノテック 1995」のお披露目のために用意された和食のフルコースに、5種類のクリスタルがふるまわれた。その5種類とは「クリスタル ブリュット 2009」、同「2004」、「クリスタル・ロゼ 2009」、そして「クリスタル・ヴィノテック 1995」と「クリスタル・ロゼ・ヴィノテック 1995」。
まず、2009年ヴィテージ。2009年はシャンパーニュ地方が夏に強烈な日照を経験した年。2009年のシャンパンは、しかし、それによって濃厚に熟したブドウの印象を抱かせるのでも、重たいシャンパンになっているのでもなく、むしろフレッシュで軽やかだ。これはルイ・ロデレールにあっても同じ。あるいはクリスタルの目指すシャンパンの性格とは非常によくあっている気候条件だった、といえるかもしれない。「クリスタルらしいヴィテージ」とレカイヨンもコメントし、「まだまだ若いけれど、熟成のポテンシャルも高く、ワイン好きには期待してほしい」とのことだ。将来の名ヴィンテージとして2009年は記憶にとどめていいだろう。
「クリスタル・ロゼ」は、「エレガントで繊細、なめらかで美しく、アロマは正確」なロゼ・シャンパンを目指し、そして実現している。美しいピンク色は、低温マセラシオンののち、セニエ法によって引き出す。2009年の「クリスタル・ロゼ」の基本的な性格は白とおなじで、クリスタルとしてエレガントなのはもちろんのこと、フレッシュで、レカイヨンは「すらっとしてる」とも形容した。
ここから遡って2004年ヴィンテージは、2010年にデゴルジュマンをしている。
「一般的にいって、7年から8年くらいデゴルシュマンから時間がたつと、味わいが非常に心地よいものになる。ワインがゆったりと落ち着いて、なめからな舌触りと、より繊細さやキメの細かさが出てくる。フレッシュさ、ミネラル感があり、食事とあわせたきには魅惑的だ」との言は、まさにそのとおり。
2004年を味わうと、なるほど2009年をして「若い」と評するのも頷ける。落ち着いた2004年、若くはつらつとした2009年。レカイヨンは2004年を語る際にチャーミングといったけれど、チャーミングさの方向性はちがえども、いずれもチャーミングではないか。