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シャンパーニュ アンリ・ジローの素顔を醸造責任者に聞く

テロワールを愛する建築的シャンパーニュ

Henri Giraud Maison

こちらがアイ村にあるアンリ・ジローのメゾンです

アンリ・ジローには2つのテロワールがある

ジロー家のファミリーツリーの話は、アンリ・ジローのワイン造りにもつながるようにおもえる。というのは、セバスチャンが中核となったアンリ・ジローの特徴は、歴史への敬意とその現代的な解釈にあるようにおもわれるからだ。サスティナビリティといってもいいかもしれない。たとえば、アイ村といえば、の、ピノ・ノワールであればこんな話になる。

「1625年からといっても、それはアンリ・ジローの原点をどこにおくかといえば、という話であって、アイ村のブドウ栽培は、すくなくとも9世紀にまで遡ることができます。アイはそのころから、ワインで有名だったんです。現在のアイを特徴づけるピノ・ノワールは、これは気象のいたずらからうまれた、といえるかとおもいます。16世紀にヨーロッパの気温が3-4度下がったときがあって、アイ自慢のブドウはほとんど全滅してしまいました。それで280kmくらい南方のブルゴーニュからピノ・ノワールの樹をもらってきたのです。もちろん、ではそのブルゴーニュのピノ・ノワールはどこから来たのか、といえば、ローマに起源があるわけで、シャンパーニュのピノ・ノワールには900年の歴史あり、といえるかもしれませんね」

アイのブドウが有名なのは、地表の20cm程度の豊かな土の下に200mにわたって石灰の土壌があることに、その理由のひとつがある。セバスチャンによれば「苦労せずによいものはできない」とのことだけれど、ブドウの樹は、痩せた石灰の土壌で、水をもとめて深く根をはり、親である樹自身よりも、子孫たる果実を残そうと必死になる。やや単純化しすぎかもしれないけれど、トマトに水をギリギリしか与えないと甘くなるのとおなじような理屈で、果実が凝縮する。

こういったことを、テロワールと呼ぶならば、「アイのほかに、アンリ・ジローにはもうひとつ、テロワールがあります」とセバスチャンはいう。このあたりから、セバスチャンの個性が発揮されてくる。

アルゴンヌの森

シャンパーニュがあるマルヌ県の東にはムーズ県という県があって、そこは、第一次世界大戦中、ドイツ軍と連合軍が激しく争った場所でもあるのだけれど、パリの方面でおきた地盤沈下のしわ寄せで、うねった地形をしている。

ここに生えているシェーヌ、英語でいうところのオークは、かつてはシャンパーニュにつかう樽の素材として重用され、1950年以前にはシャンパーニュに150軒以上の樽メーカーがあったそうだ。しかし、国際的なワイン市場における樽メーカーの寡頭化や、ワイン造りの変化など、理由はいろいろとあるのだろうけれど、いまはほとんど残っていない。しかし、アンリ・ジローでは、アルゴンヌの森のオークで樽を造って、それをつかっている。

「アルゴンヌの森の全体的な特徴は、湿った環境であることと、二酸化ケイ素が多く貧しい、ゲーズという土壌だということです。つまり、ここのオークも、アイのブドウとおなじく、苦労している。だからいいものなのだとおもいます。そして、地形が起伏に富む、複雑なこともあって、日のあたりかたや、空気の動き、水の溜まりかた、地質など、ブドウの場合とおなじく、マイクロクライメートがあります。ワイン造りにつかうと、アプリコットやミラベルの香りがでるオークもあるし、ワインを力強くするオークもあります」

セバスチャンはアルゴンヌの森で、興味をひかれる木をみつけたら、それで樽をつくるのだけれど、その木が生えていた座標を記録し、板にするときにも、いつ、加工したのか、木のときには東西南北、いずれの向きを向いていた面からできた板なのかを記録している。そして、樽を造るときには、木をまたがず、1つの樽は1本の木から造る。こうして、オークの特徴をつかんでゆき、いまやアルゴンヌの森のデータベースをもっているセバスチャンは、ワイン造りにあたっては、収穫の3週間前から、連日畑にかよい、果汁をテイスティングして、あわせるオークを選び、樽のトースト具合もアレンジするという。

特に、その名も「アルゴンヌ」というヴィンテージシャンパーニュ、そして、訳せばオークの酒樽となる、マルチヴィンテージシャンパーニュの「フュ・ド・シェーヌ」は、それぞれ新樽比率が90%と80%で、驚くほどに樽を使っている。

こちらはアルゴンヌ 2008年ヴィンテージ

こちら、フュ・ド・シェーヌ。マルチヴィンテージで2010年のもの

この2つのシャンパーニュの香りは、確かに木を感じさせる。ただ、フュ・ド・シェーヌは、多種多様な新鮮なフルーツをおもわせる複雑な香りと、アルゴンヌであれば、ヴィンテージシャンパーニュ特有の熟成香、そしてヴィンテージとはおもえないほどのはつらつとした酸味と、樽に由来するであろう木の香りとが、ともにワインをなす要素として一体化している。これがブドウ、これが樽、と分けて考えられない。

ちなみに、現在アンリ・ジローのドザージュが7g/リットルで固定されているのは、ブドウと樽の組み合わせだけでも、無限にもおもえるほどの選択肢があることも理由のひとつだという。歴史的にいってもシャンパーニュはドザージュありきである、という考えがセバスチャンにはあるため、ドザージュ自体は重視している。しかし、そのパーセンテージは定数にすることで、ドザージュによる操作を排し、ブドウとオークの魅力を存分に発揮させようというのだ。

セバスチャンの樽使いの巧みさは、ウイスキーメーカーも相談にくるほどで、さらに、富山の桝田酒造店の日本酒、満寿泉に、アンリ・ジローの樽をつかうものがある。

ただ、「樽にいれるのは強いワインです。繊細なワインはグレのタンクをつかいます」

これが、セバスチャンが愛してやまない、アルゴンヌのオーク

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