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ヴィーニョ・ヴェルデ産地ツアー報告 2018 (その2)

海辺のレストランでキンタ・ダス・アルカスのテイスティングランチの巻

ポルトのCVRVV(ヴィーニョ・ヴェルデ地方ワイン生産者委員会)本部を出発したバスは、海辺の漁師町アンジェイラスへ。そこで魚介類をサカナにモンテイロ兄弟がつくるヴィーニョ・ヴェルデを6種類テイスティングした。ヴィーニョ・ヴェルデ産地ツアー報告2018(その1)のつづきです。

 

パーティにオススメのワイン

ヴィーニョ・ヴェルデの生産と販売を管理する団体、CVRVV本部を出た小型バスは高速道路を経由して1時間弱で大西洋に面したアンジェイラスという漁師町に到着した。ポルトガル第二の都市ポルトから北に20kmほどの距離にある小さな町だ。

バスを降りると、キンタ・ダス・アルカス(Quinta das Arcas)のアントーニオ・オリヴェイラ・モンテイロ(António Oliveira Monteiro)さんと彼の弟さんが出迎えてくれた。

アンジェイラスのフィッシュ・マーケット。

海辺のレストラン、“Tony de Angeiras”。

一緒にゾロゾロ歩いて小さな魚市場を見物した後、海辺のレストランでランチを兼ねての試飲会が開かれた。気分はリゾートである。

キンタ・ダス・アルカスはCVRVVでテイスティングした10本のなかで9本目に出てきたロゼのつくり手で、ということは注目の生産者ということである。じつは気がつかなかったけど。

ワインをつくり始めたのは彼らの父親で、1985年からだというから、それほど古い話ではない。といっても、かれこれ35年近い歳月が流れている。光陰矢のごとし。農園は、ポルトから30kmほど東の内陸にある。広さはヴィーニョ・ヴェルデ地方以外の農園も入れて200ヘクタールあるけれど、純然たる家族経営で、彼ら兄弟と父親の3人でワインづくりをしている。兄はマーケティングと輸出、弟はポルトガル国内を担当している。

まるで双子のようだけれど、そうではない。左がアントーニオさん。

そんなことを説明してから、兄のアントーニオさんが言った。

「クラシックなヴィーニョ・ヴェルデは夏に冷やして飲みます。アルコール度が低くて軽い、パーティにオススメのワインです」

漁師町の海辺のレストランらしく、テーブルには魚介類がどーんと並んだ。ゆでた大きなエビが象徴するように、料理自体はシンプルで素材の味をそのまま生かすものばかり。

最初にグラスに注がれたのはおよそ35年前に発売されたクラシックなヴィーニョ・ヴェルデの白で、彼らにとってもっとも重要な商品でもある。35年モノ、という意味ではもちろんない。ヴィーニョ・ヴェルデは基本的にリリースされてから2年以内に飲むものだからである。ブドウ品種は、ロウレイロ50%、アリント40%、トラジャドゥーラ10%のブレンドである。

アロマはフルーティでフレッシュ。ブーケとグリーン・アップルの香りが特徴で、アルコール度は10.5度と軽め。残糖は6g/dm3あるのに甘さを感じないのは、酸もまた6g/dm3あるのと、瓶詰めの前に0.5バール炭酸ガスを入れていて、微発泡だから、と説明される。

早速飲んでみると、香りの印象と同じようにフレッシュでさっぱりして余韻を残さない。これぞヴィーニョ・ヴェルデ、という感じのヴィーニョ・ヴェルデである。ラベルがグリーンなのも、ヴィーニョ・ヴェルデを意識しているからだろう(たぶん)。

瓶詰めする前に炭酸ガスを入れるなんて、昨今の自然醸造ブームからすれば邪道ではないか、と思われるけれど、それがスカッとさわやかなヴィーニョ・ヴェルデの伝統なのだ、ということをアントーニオさんは言った。

ヴィーニョ・ヴェルデに使われている固有品種、たとえばロウレイロは「フルーティでほどよい酸味」があり、アリントは「中度から高度なの糖度を持ち、有機酸の含有度も高め」、一方、トラジャドゥーラは「酸味が控えめ」とされる。その差は私には微妙だけれど、ブレンドしていることの意味がここにある。

CVRVVでのテイスティングで説明されたように、最近は単一品種もつくられており、2本目はロウレイロ100%、3本目はアルヴァリーリョとトラジャドゥーラのブレンドだけれど、4本目はアルバリーニョ100%で、1本目のブレンドより2本目のロウレイロ100%の方がいいブドウを選んでいるそうで、花の香りがして、こっち方がおいしいかも……と思ったけれど、3本目、4本目とグラスを重ねるにつれて、私にはその違いがよくわからなくなった。いずれも微発泡だし。

オーガニックで樽熟成!

新しい試みの白。「キンタ・ダス・アルカス・トラジャドゥーラ・イスコーリャ(Quinta das Arcas Trajadura Escolha)」。

5本目の説明を聞いたときは耳を疑った。2015年のトラジャドゥーラ100%、それも樹齢70年以上の老木のブドウを使ったオーガニックワインで、しかもステンレス発酵ではなくて樽を使い、3年間、樽熟成させている。アルコール度は12.5度と高めで、糖度は1.5g/dm3と少なく、酸は5.5g/dm3と高い。色はライトレモンで、それは熟成の色である、という。

ヴィーニョ・ヴェルデは早飲みのワインだからヴィーニョ・ヴェルデだと思っていたら、そう単純なものではなかった。

大きなエビが贅沢に入っている。

ランチのシメは、エビの雑炊で、これに合わせるべく赤が出された。それがこちらだ。

新しい試みの赤。「キンタ・ダス・アルカス・ヴィニャオン・イスコーリャ(Quinta das arcas Vinhão Escolha)」。Escolhaとは英語のchoiceに当たる。

アントーニオさんによると、2014年ヴィンテージのヴィニャオンからつくられたこれは、90%のフレンチ・オークと10%のアメリカン・オークの樽で6カ月寝かせてある。初めてつくったのは2007年で、よい年のよいブドウでしかつくらない。

アルコール度は12度、糖度は1.5g/dm3、酸は5.7d/dm3と、数値的には同じシリーズの前述の白に近い。もちろん赤なので、見た目も、味もぜんぜん違う。

彼らのHPのテイスティング・ノートには、「クリアで深紫色。香りは、強烈でフルーティーな赤い果実とグラス(草)、バニラとチョコレート。味はドライで、酸度とタンニンが強い。アルコールは12度と控えめで、ミディアムボディ。フルーツとスパイスと、樽とのバランスが取れている」とある。

今回試飲したワインの数々。逆光の補正ができてなく、すいません。

ある種のボルドーにちょっと似た、野生的な味わいがするのは気のせいか。酸味とタンニンは強いけれど、ヴィーニョ・ヴェルデは赤でも冷やして飲むのが伝統で、ヴィーニョ・ヴェルデのなかでは革新的に思えるこの赤もまた冷やしてあって、サラッと飲める。子ぶたの丸焼きや腸の煮物にピッタリだそうである。海辺のレストランでは出てこなったけれど。

持っているのが彼らのブランデー、Aguardente Conde Villar。ロウレイロ50%、アリント40%、トラジャデューラ10%のブレンド。アルコール度40度の8年熟成もの。

食後酒として、彼らがつくっているブランデーまで出た。ヴィーニョ・ヴェルデの! 

ヴィーニョ・ヴェルデの生産と販売を管理するCVRVVは、この地方のワイン、つまりヴィーニョ・ヴェルデを蒸留してつくるワイン系スピリッツ(ブランデー)と、ブドウの搾りかすを蒸留してつくるブドウ焼酎についても、決まりごとをあれこれ設けている。

かくして、ふたつのことが実感としてわかった。

仲のいいご兄弟。ちょっとピンボケ。

ひとつ。魚介類とヴィーニョ・ヴェルデはすばらしく相性がいい。

ふたつ。ヴィーニョ・ヴェルデは微発泡の白だけじゃない! オーガニックだとかフレンチ・オークだとか熟成だとかブランデーだとか、日本では(おそらく)知られていない別の面があるのだ。

ということで、私たちの旅は始まったばかり。次はどこへ。

その3につづく

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