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ワインの故郷、ブルゴーニュ その1-3

ドメーヌ ギャバン エ フェリックス・リシュー(Domaine Gabin et Félix Richoux)

イランシー Irancy
Domaine Gabin et Félix Richoux

ドメーヌ ギャバン エ フェリックス・リシュー
thierry richoux

ティエリー・リシューさん

ピノ・ノワールの名人

180haほどの小さなAOCイランシーは、AOCのルール上はピノ・ノワール、そしてそこにセザールという品種を10%混ぜてもいいことになっている。だけれど、基本的にピノ・ノワールの産地だとおもっていい。

「セザールは晩熟で、気候的に収穫がかなり遅くなり難しい。それにタンニンが強すぎる。ピノ・ノワールだけで十分」とはティエリー・リシューさん。すでに二人の息子にドメーヌの名前は譲っているけれど、この地で代々、赤ワインを造るベテランだ。

ティエリーさんの言うことはすぐに理解できた。最初に、イランシーの複数の畑のピノ・ノワールをアッサンブラージュした現行ヴィンテージ、2015年を飲んでみて、びっくりしたのだ。ブルゴーニュのピノ・ノワールに軽快で優美なイメージを勝手に抱いていた筆者には、その荒々しいとさえ言えるような、力強い酸味もタンニンも衝撃的だった。イランシーのピノ・ノワールとは、こういうものなのか。ティエリーさんに造り方を聞いてみると、詳細に説明をしてくれたのだけれど、結局、筆者の感じた味の理由はわからなかった。

ところが2014年のイランシー レ・カイユというワインを飲んだら、まるで違う。甘い香り、口当たりはまろやかで、最初にタンニンがきて、その後はスッキリとしながら複雑で、後味に酸がすーとつづく。うまい。イランシー レ・カイユというリュー・ディだけ違う? ヴィンテージの差? 筆者の感動と混乱は顔に出ていたのだろう。ティエリーさんは「ワインは同じように造っても毎年ちがうものができるから面白い」と満足そうに微笑む。そして「あと1年もしたらもっとまろやかになっていく」とも。

irancy

上から見るとクレーターのよう、というすり鉢状のイランシー

イランシーの町

ラベルにも描かれているイランシーの村

とはいえ、この2014年が、リシュー家の典型的なワインだそうだ。つづいておなじくイランシー レ・カイユの2012年。「強い味は強い料理にあうから、冬向け」というのだけれど、酸とタンニンが溶け合い、これも絶品。次がイランシー ヴォーペシオというリュー・ディの2012年。こちらは、まろやかで優しい。ちょっと、スモーキーさもある。

domaine richoux

ロゼも伝統。「パリから来て、すぐ飲みたいという人向け」という

以降、95年まで、各種を試したのだけれど、95年のアッサンブラージュは12年のイランシー レ・カイユに近いなど、年、単一畑かアッサンブラージュかによって、表情はことなれど、熟成してこそのワインと感じた。

予定時間を大幅にオーバーした取材の最後に、まだ手に入るという2012年ヴィンテージを、息子の生まれ年でもあるし、筆者が個人的に買って帰りたいと言うと、一本持っていっていいとプレゼントしてくれた。でも一本じゃ、我慢できずに飲んでしまうかも、と言うと「その時はまた来たらいい。あるいは、一緒にワインを造ろう。息子さんも一緒に」と笑う。そして

「こんな小さな村の代々つづく家族のワインが地球の反対側から来た人の感情を揺さぶる。ワインを造っていてよかったと心底おもうのはこんなときだ」

ぜひまた会いましょう。お互い、息子も一緒に!

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