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イタリアワイン最高峰「アレグリーニ」からマリリーザ・アレグリーニがやってきた

最上のアマローネの造り手はアマローネだけを造っているわけではない

左から「ボッジョ・アル・デゾーロ・ソロソーレ」の2017年ヴィンテージ、同2010年ヴィンテージ、「ラ・グローラ・リミテッド・エディション」2016年ヴィンテージ、「サン・ポーロ・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」2013年ヴィンテージ、「フィエラモンテ・アマローネ・クラッシコ・リゼルヴァ」2011年ヴィンテージ

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノにはしつけが重要

バローロ、バルバレスコとともにイタリア三大赤ワインといわれるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。高級イタリアワインのパイオニアみたいな存在だ。その名はモンタルチーノのブルネッロ、つまり、イタリアはトスカーナ州のフィレンツェの南の街、シエナのさらに南にある、モンタルチーノという町の、その周囲で栽培され、収穫された、ブルネッロというブドウのみで造られるワインだ、ということを意味する。ブルネッロとは、サンジョヴェーゼの変異種で、サンジョヴェーゼ・グロッソなどとも呼ばれる皮の厚い黒ブドウ。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを名乗るには、ブルネッロのみで醸造し、最低でも収穫から50カ月後の熟成されたワインである必要がある。そのうちの24カ月は樽熟成をする必要があり、4ヶ月は瓶内熟成もしなくてはならない。ついでに言うと、熟成期間がさらに1年長い場合、リゼルヴァと、名乗ることが許される。

さてこの「サン・ポーロ・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2013」は、まろやかな舌触りで、コーンのような甘味と苦味があり、煮詰めたトマトのような酸味と香りがある、濃厚に凝縮し、熟成した赤ワインだ。このような素人っぽい評価ではどうにも安っぽくていけない、とあらば、「プラム、チェリー、ベリーの香りに、スミレ、スギ、わずかにバルサミコ酢が伴う。パレットには温かみがり、キメは細かく、フルボディであり、余韻は長く、整ったタンニン」という公式のテイスティングノートを引こう。まったくそのとおりだから。

マリリーザさんは、これを、先のラ・グローラとの比較でこう表現した。

「ブルネッロはサンジョヴェーゼだからもちろん、コルヴィーナとは全然違うのですが、チェリーを感じるところはおなじかもしれませんね。しかし、より厳格です。そしてサンジョヴェーゼのほうがタンニンはずっと強い。サンジョヴェーゼは力強く、力強いにもかかわらずエレガントな品種で、すさまじい潜在能力をもっています。ただし、それを引き出すためには、栽培も醸造もきちんとしていなければなりません」

サン・ポーロは歴史あるワイナリーで、モンタルチーノのなかでも、最上の地区の畑をもっていた。アレグリーニは、2007年に、これを買い取った。

「見捨てられていた畑、というわけではないのですが、きちんとしつけられていない子供、といいましょうか。サンジョヴェーゼは、しつけが肝心なんです。2007年から2010年までは、しつけに費やしました。そして、だいぶ良くなってきました」

「畑は素晴らしい畑です。それはグローラと似ているかもしれません。南西向きの斜面で、正面にあるアミアータ山が冷たい風をブロックしてくれるのと同時に、常に風が吹いています。日光は360度、どこからも当たります」

サン・ポーロの畑

しつけの一貫、なのかもしれないけれど、栽培は有機栽培である。もともと醸造所はエコ・フレンドリーなもので、栽培のほうにも、その考え方を広げている。2014年から、有機栽培の規定にのっとっているので、3年後の2017年から、認証を取得している。

さらに、2015年から、2つ、畑を増やしているという。

「リゼルヴァはよくても10年で3回くらいしか造れるような年はありません。3箇所畑があれば、リゼルヴァがない、ということは随分すくなくなるはずです。2015年が、実はよいヴィンテージだったのですが、まだ、あたらしい畑の調子が十分つかめていなかったのでリゼルヴァは見送り、2016年はリゼルヴァを造っています」

2019年の今で、2013年ヴィンテージが最新。サン・ポーロはアレグリーニにとって、まだまだこれから、なのだ。

頂点の上

最後は、とっておき中のとっておきがでてきた。これまで、アマローネ以外のアレグリーニが強調されてきたけれど、それはアレグリーニといえばアマローネの頂点の造り手である、という前提あってのこと。最後は、そのアマローネのとっておき「フィエラモンテ・アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・リゼルヴァ」というわけだ。お値段なんと39,000円。

これはもう、筆者は、これぞブドウ酒である、といいたい。ぎっしりとブドウの酸味と甘味がつまった酒である。とはいえ甘味を感じるけれど、実際、甘いわけではない。アマローネはむしろ、苦いという意味をもつイタリア語で、ワインは辛口なのだ。

アマローネとは、イタリアの最高級ワイン。ヴァルポリチェッラのブドウを遅摘みしたあと、陰干ししてから、発酵させる。フランス方面にヴァン・ド・パイユという干した白ブドウで造る甘いワインがあるけれど、アマローネはおなじような方法で辛口を造る。

陰干し(アパッシメント)している途中のブドウはこんな風になる。凝縮し濃厚に美味だが、果汁は減ってしまうし、状態のよいブドウを上手に乾燥させていかないと、こうはならない。1本のボトルを造るのに慎重に栽培され、収穫されたブドウが、通常より多く必要になるのは理の当然で、手間はかかるし生産効率は悪いのだ

フィエラモンテは畑の名前で、このワインがシングルヴィンヤードであることを意味し、位置づけとしてはアレグリーニのうちの最高のキュヴェ、ということになる。1985年まで、フィエラモンテはアレグリーニのトップキュヴェに使われるブドウの産地だった。しかし、エスカ病という病害の影響から、ブドウ樹の植え直しを強いられ、しばらく畑は回復につとめていた。2000年に土壌が回復して再植樹し、2011年ヴィンテージから復活させた畑なのだ。今回のこれが、その2011年ヴィンテージ。

再植樹から10年。復活を遂げたフィエラモンテの畑

ちなみに、醸造家をつとめる、マリリーザさんの兄弟フランコ・アレグリーニは、アマローネは一種類だけでいい、として、フィエラモンテの特別なアマローネをリリースすることをすぐには承服しなかったそうだ。つまることろ、アマローネ最高峰と称される「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ」がアレグリーニの最高のアマローネである、ということだ。「フィエラモンテ・アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・リゼルヴァ」は、最高を越えた最高、頂点の上の頂点、ということなのだろう。

アレグリーニ兄弟。左がマリリーザさんで、右がフランコさん。真ん中がシルヴィアさん

頂点の上、といえば、雲の上だろうか。イタリアの夜はきっと長い。北東、ヴェネト州の山のなか。ヴァルポリチェッラの雲の上。そこに、ふわふわと浮いているような、そんな土曜日の夜だった。

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