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「ショウ・アンド・スミス」のデイヴィッド・ルミアーMWによるセミナー「アデレード・ヒルズの魅力」

フライング・ワインメーカーとマスター・オブ・ワインがつくる冷涼なオーストラリアワイン

ショウ・アンド・スミスのソーヴィニヨン・ブランから

ジャンシス・ロビンソンのグラスに、実際は白ワインから注がれた。

この後、質疑応答を経て、デイヴィッドさんによるブドウ栽培に関するプレゼンテーションは終了。テーブルに4コずつ並べられたジャンシス・ロビンソンのグラスにワインが注がれ、アンバサダーのカヴィータ・フェイエーラさんによるワインそれ自体へのお話へと移った。カヴィータさんは2014年にアマン東京が開業したときのビバレッジマネージャーで、日本に住んでいたこともある。

カヴィータ「2018年のソーヴィニヨン・ブランから始めます。『ショウ・アンド・スミス ソーヴィニヨン・ブラン』です。この中でニュージーランド産のソーヴィニヨン・ブランを飲んだことのある人? では、ロワール産は? では、アデレード・ヒル産はどうでしょう? 半分ぐらいのひとが体験されていますね。まさにみなさんの目の前にあるのが、アデレード産のソーヴィニヨン・ブランになります。

ソーヴィニヨン・ブランは非常に多様性があります。では、アデレード・ヒル産はどこのスタイルに当てはまるか、ご紹介していきたいと思います。

まずはニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは刺激的で、トロピカル・フルーツの香りが特徴です。フランスのロワールは、より細く、長い線を描くスタイル。軽やかでミネラレル感が備わっています。われわれアデレード・ヒルズは、この両極端な産地の中間のスタイルになります。

みなさん手にとって香りを確かめてください。柑橘系、その中でもピンクグレープフルーツ。それとボタニックな要素を強く感じないでしょうか。ハーブ、とは違います、フェンネル(ウイキョウ)やキューカンバの要素があるのではないでしょうか。ジン・トニックのような要素も感じます。それに非常にフレッシュで美しい酸があります。このグラスで飲むと美味しさが倍増します。

このワインはいろんな畑のブドウでつくっています。ブドウ畑、それぞれの土地の要素を持っていて、それが複雑な味わいを与えてくれています。ソーヴィニヨン・ブランはほかの地区では機械摘みですが、われわれはすべてのブドウをすべて手で摘みとっています。これが結果的に繊細で美しいワインになっています。醸造はシンプルなプロセスで、低温で発酵させているだけです」

じつは記者は、この前夜、東京丸の内の新丸の内ビルディング6Fにあるオーストラリア料理のレストラン「Wattle Tokyo」で、今回のショウ・アンド・スミスとトルパドル、全部で8種類のワインを体験済みだった。どれもこれも、メチャクチャうまい! 驚愕、である。ものすごく洗練されている。雑味がなくて、クッキリしている。

ショウ・アンド・スミス ソーヴィニヨン・ブラン 2018
典型的なピンクグレープフルーツ・キャラクター。2018年は際立った年だった。バルハナとレンズウッドの自社畑のほか、少数の栽培農家のブドウを使っている。希望小売価格2800円(税別。以下同)。

ショウ・アンド・スミス リースリング 2018
カヴィータさんはライムと表現したけれど、記者はグレープフルーツのような香りだと思った。口に含むと痛快にして爽快な酸味を感じる。標高の高いレンズウッドの畑のなかでも高くてクールなサイトのブドウでつくられている。希望小売価格3200円。

カヴィータ「次はリースリングに移ります。南オーストラリアは有名な産地で、アドレード・ヒルズの隣のバロッサ・ヴァレー、クレア・ヴァレーのリースリングが有名です。ただ、こういった産地のワインは早い段階で飲みますと酸が強すぎる。辛すぎる。アグレシッブすぎる。私たちのリースリングは、リリースされたときから、少し残糖を感じます。酸は高く、肉づきがあって、全体のバランスがとれている。

もちろんライムが特徴です。それに白い花。ガルベニア(ガーベラ)、ジャスミン、私が思うにベビーパウダーのような香りを持っています。このワインは、たくさん生産していません。オーストラリアでも、セラーの直売所だけ。日本は唯一の輸出先です」

このリースリングのさわやかさは印象的で、個人的に大好きなグレープフルーツっぽい酸味がある。これはいま、絶対に試すべきリースリングである。と直感的に申し上げたい。

カヴィータ「3番目のシャルドネに移ります。シャルドネはオーストラリアを代表するワインで、20年ほどの歴史があります。

20年前のオーストラリアのシャルドネは、ビッグ&ファットで、非常にパワフルでした。10年前にはガリガリに痩せたシャルドネが流行りました。

時代の流れのなかで、ちょうどその中間にいるのが、われわれのスタイルになります。もちろんショウ・アンド・スミスは涼しいところでつくってきたのでフレッシュな酸があります。現在、オーストラリアでも卓越したシャルドネは、この中間ゾーンになります。もっとも卓越したシャルドネが飲める時代になっているのです。

醸造は、優しく抽出し、フレンチオーク樽で発酵します。私には、塩味がかかったカシューナッツのようなニュアンスがあると感じます。もちろん木樽を使うのは必要なことですが、ワインになったときに匂いや味に出てはいけません。テクスチャーで感じるだけでなければならない、と考えています」

蛇足ながら、このシャルドネもメチャクチャうまい! 

デイヴィッドさんの補足によれば、収穫は同じ地域のひとたちより若干早めで、それというのもアルコール度数が12度、高くても15度になるようするためだという。バトナージュは回数を減らすことで軽やかさを与えて、ブドウのフレッシュネスを保っている。また、オーク樽のサイズは、以前は228リットルを使っていたけれど、今は500リットルのパンチョン(ウィスキー貯蔵用の、ずんぐりした樽)とミックスしながら使っている。大きな樽のパンチョンを使うと、ワインと木樽との接触面積が少なくなり、木樽の要素を抽出しにくくなるのと、還元的な熟成を行うことができるからだ。

ショウ・アンド・スミス M3 シャルドネ 2017 
その洗練されたスタイルはオーストリアのシャルドネの革命児的存在。白い花とレモンの花を思わせる。2017年はちょっと寒い年で、それがシャルドネには適していた。レンズウッドの畑のブドウを手摘みで収穫。希望小売価格4000円。

ショウ・アンド・スミス ピノ・ノワール 2017
まるでブルゴーニュを思わせるピノ・ノワール。2018年は、ラズベリーやチェリーなど赤い果実の凝縮感をコアに持つ。レンズウッド畑のブドウを手で摘んで選別している。複雑さを出すため一部、全房発酵し、多くをフレンチオークのパンチョンで熟成。希望小売価格4000円。

カヴィータ「ではピノ・ノワールに移ります。2018年のショウ・アンド・スミスのピノ・ノワールです。ピノ・ノワールはオーストラリアに限っても色々なスタイルがあります。アデレード・ヒルズはどうかというと、もっとも軽やかなピノ・ノワールが生まれています。オーストラリアはフルーツのキャラクターを持ったワインをつくるのは簡単なんです。でも、それだけではダメで、複雑さ、バックボーンになるタンニンがちゃんと備わっていないといけません。

私たちがつくりたいワインは、複雑なレイヤーが重要だと考えています。エキゾチックなお香のようなアロマ、そしてしっかりとしたタンニン。それと、赤い果実ーーブラッドオレンジ、スパイス香も、ビターなアロマもあります。ビターなアロマというのはイタリアのスパイスですね。

こちらはフレンチオークだけで、30%の新樽、500リットルの大樽を使っています。すべて、より標高が高くて、より涼しくて、より雨の多いレンズウッドのブドウからつくられています」

会場から「カンパリのような香りは何処から来るのでしょうか?」という質問が出た。言われてみれば確かにカンパリのような香りがする。

デイヴィッド「全房での発酵を15%行なっています。それによって、苦味が生まれている。醸造面から来るところもあります。カンパリの香りは非常にデリケートで、もともとブドウが持っているものです。房ごと発酵することによって生まれてくるものもあります。抽出も発酵も、優しく行なっています。発酵は、発酵温度が30〜32℃に上がってくると、温度を下げて、ゆっくり発酵するようにしています。こうすることで、もともとブドウが持っているフルーツの果実味が出るようにしているのです」

まるでブルゴーニュみたい。でも、ブルゴーニュよりも香りや果実味が控えめなように思えた。もちろんそれは、カヴィータさんも語っているように、あえてそうしているのだった。

ショウ・アンド・スミス シラーズ 2016
ミディアム・ボディの冷涼地のシラーズ。力強さよりもバランスを重視している。とはいえ、口に含めば、わかりやすいシラーズの味わい。2016年は暖かい年を反映して黒い果実の印象を与える。主にバルハナのブドウを手で摘んで選別。希望小売価格4000円。

ショウ・アンド・スミス バルハナ ヴィンヤード シラーズ 2016
バルハナのブドウのみでつくられているため、年による違いが表現される。14カ月の樽熟成は通常のシラーズと同じだけれど、さらに14カ月ボトルで熟成している。希望小売価格8300円。

カヴィータ「次はシラーズです。オーストラリアといえば、ビッグでジャミーなシラーズが知られています。シャルドネのスタイルはパワフルなものから変貌を遂げてきましたが、シラーズはいまも、強いシラーズがオーストラリアではつくられています。冷涼な産地では、かなりスタイルが異なっていて、香りが豊かでストラクチャーが整っていて、酸があります。

まずは2016年の通常ラインのシラーズ。次は、2016年の単一ブドウ畑のバルハナ・シラーズです。同じヴィンテージですが、異なるワインです。通常ラインは、アデレード・ヒルズの3つの畑から収穫してブレンドしています。バルハナはシングル・ヴィンヤードです。

どうでしょう、今までのオーストラリアのシラーズとは異なるインプレッションではないでしょうか。料理に合わせて行きたいようなシラーズがオーストラリアの中でも浸透していってくれれば、と思っています」

どちらもピノ・ノワールに較べれば、味が濃ゆい。スパイシーさがちょっとあって、喉越しにちょいと刺激がある。アルコール度数がちょっと高いらしい。少し甘くて、南国系の黒っぽい果実ーーブルーベリー、クランベリー、プラムなどのタッチがある。シングル・ヴィンヤードのほうが味わいの凹凸がなだらかでエレガントである、と記者は個人的に思った。

「いま、オーストラリアに限らず、エレガントなシラーが出てきている。過去のフルボディのジャミーなシラーとはまた別のシラーとして確立するにはどういった活動が重要だと思いますか?」という質問が会場から出た。

デイヴィッド「イメージを変えていくのには時間がかかる。オーストラリアはこういうシラーズがつくれる、ということを知っていただく活動が大切です。クール・クライメット・シラーズをつくり始めた最初の頃、マーティンさんは『ちょっと待って、アデレード・ヒルズでは寒すぎるんじゃないか』と心配していた。ところが地球温暖化ということもあって、熟成度が上がっている。いまでは、オーストラリアのなかで、もっとも卓越したシラーズがつくれるところであると信じています」

カヴィータ「味覚のトレンドは世代によって変わってきている。オーストラリアでも、世代によって好みが違います。年をとった人たちはジャミーなワインを、若いひとたちはフレッシュな酸のあるワインを求める。オーストラリアで、パワフルでジャミーなワインをつくり続けることは間違いないですが、よりフレッシュなものを求めるひとたちも出てきているので、パワフルなワインは減って、フレッシュな酸のあるワインが人気を博していくだろうと思っています」

2種類のシラーズ、なかでもバルハナのシングル・ヴィンヤードこそ、オーストラリアならではの、誇るべきワインであるのかもしれない……と思ったら、一番高いのがコレだった。

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