海苔や天ぷらばかりが蕎麦屋のツマミにあらず。
本格フレンチのテリーヌをツマミに、合わせる酒はもちろんワインをチョイス、シメには十割手打ち蕎麦を。そんなイレギュラーなスタイルもOKな「夕星(ゆうづつ)」の懐の深さに感激した写真家Kが、田原可南子ちゃんを誘って蕎麦屋デートを敢行。
事前に可南子ちゃんが蕎麦好きかどうかも確認せず……。
蕎麦屋でワインを飲んだことは?
可南子 「私、蕎麦にハマったのはここ2年くらいなんです。それまでは、家族と蕎麦屋へ行っても私ひとりだけ天丼やうどんを頼んでました」
K 「これまた、ずいぶんな蕎麦ビギナーだなぁ。なら、蕎麦屋で一杯やるなんて経験はしてこなかったでしょ」
可南子 「それがですねぇ、蕎麦がおいしいと思い始めたとたん、蕎麦屋でよく飲むようになりまして」
K 「ん、蕎麦デビューと同時に蕎麦飲みデビュー!? 20代女子にしては渋過ぎない?」
可南子 「私の友達や妹も、よく蕎麦飲みやってますよ。最後は腰のある蕎麦をいただいて、蕎麦湯もタップリ飲んじゃいます」
もしや可南子ちゃんはかなりの蕎麦飲み通なのか、とKはやや不安な表情に。
K 「……で、いつも何を飲んでるの?」
可南子 「レモンサワーです」
K 「蕎麦屋でワインを飲んだことは?」
可南子 「ないです」
Kの顔に余裕が戻った。よし、先輩風をビュンビュン吹かせていこう。乾杯用のグラス・シャンパーニュとともに運ばれてきたのは、テリーヌ2種。「夕星」では、ジャンル違いの姉妹店で、星付きフレンチの 「レザンファン ギャテ」が提供する特製テリーヌを味わえるのだ。
う〜ん、テリーヌがおいしい!
可南子 「こんなにキレイにいろんな食材が散りばめられたテリーヌを、蕎麦屋さんでいただけるなんて!」
K 「シャンパーニュの次は、キリッとしたタイプのシャブリを頼んでおいた。昔、このシャブリを造っているドメーヌ・セルヴァンを取材しに行ってきてね」
可南子 「Kさん、シャブリに行ったことあるの? いいなぁ」
可南子ちゃんのリアクションがうれしく、熱く語り始めるK。
K 「オーナーってのが料理好きで、日本好き。頻繁に来日してて、ちょっぴり日本語も話せるの。でね、カーヴ内にキッチンを備えていて、私たちが訪問した時にはおいしい料理をふるまってくれて……って可南子ちゃん、話聞いてくれてる?」
可南子 「う〜ん、テリーヌがおいしい! 素材の味がきちんと伝わってくるんです。とくに野菜のグリーンな香りが、辛口シャブリと合う感じがする」
K 「うんうん、そうだね。おいしく食べて飲んでくれれば、それだけでオジサンは満足よ。そして最後は、蕎麦と一緒にカルヴァドスをどうぞ」
可南子 「カルヴァドス?」
K 「フランスで蕎麦粉を使う料理が盛んなのはブルターニュ地方。蕎麦粉のクレープが有名だよね。同じブルターニュで有名な酒が、りんごから造られたカルヴァドス」
可南子 「んんん、この香りはアルコール度数が高そう」
K 「40度あるかなー」
可南子 「そんなに度数が高いお酒は私、まだムリかなー」
ブルターニュ地方にも行ったことがあって……と話を盛り上げるはずが、思わぬところでブッチ切られ、シュンとするKであった。
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