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    ワインを村ごと造っている

サルヴァトーレ・フェラガモは
ワインを村ごと造っている

エノテカによる「オンライン・ワイン テイスティング イベント」から

エノテカは、オンラインで生産者と消費者をつなぐワインイベント、「オンライン・ワイン テイスティング イベント」を2月からスタートした。
第1回目は、2月27日(土) に開催され、イタリアはトスカーナから、イタリアを代表す るファッションブランド「サルヴァトーレ フェラガモ」ファミリーが手がける「イル・ ボッロ」の最高責任者 サルヴァトーレ・フェラガモ氏が登場。参加者は事前に、参加資格を購入し、その後、手元に届く「イル・ボッロ」のワイン2種類を楽しみながら、サルヴァトーレ・フェラガモ氏直々の、リアルタイムの、ブドウ畑、ワイナリー案内を堪能する、というのがこのイベントのあらましだ。
ここでは、そのイベントにメディア枠で参加した筆者が、その内容を紹介する。

土曜日の朝のブドウ畑から

このハーフボトルのワイン2本と、ワイナリーツアー参加権つきで7,040円(税込み)

土曜日の17時。イタリア時間では朝の9時。事前にエノテカ・オンラインにて購入した、イル・ボッロの「イル・ボッロ」2016年と、「ラメッレ」2018年のハーフボトル2本とともに、指定されたオンラインミーティングに集まったワイン好きたちは、ホストをつとめるエノテカの宮嶋氏と通訳も兼任する笠原氏によるトークで、すっかりリラックスしていた。

笠原氏の機内アナウンス風のメッセージとともに、イタリアの小さな村、ボッロ村へ。

フィレンツェから南東に70kmほど、キャンティ・クラシコの地区よりちょっと北東にあるこの中世の城砦村は、おそらく日本では、イル・ボッロとして、その名のついたワインで知られているとおもう。

遠くから見るとこんな場所だそうです。

その、ボッロ村のワインを造っている人が、画面のなかのブドウ畑にあらわれた。1993年に、父親とともにワイナリー「イル・ボッロ」を設立したサルヴァトーレ・フェラガモ氏だ。ブランド「サルヴァトーレ フェラガモ」の創業者と同じ名前をもつ彼は、その孫であり、双子の兄弟のジェームズがファッション・ブランドのほうを担当する一方で、ワイナリーの指揮をとっている。

美しい青空が広がるものの、冬。葉が落ちたブドウ樹が立ち並ぶ。画像はオンライン動画をキャプチャーしたものです

ニューヨーク大学スタンレー校出身でMBA持ちのサルヴァトーレ氏は、自分は農民だ、といい、このときも、自己紹介よりもボッロ村が素晴らしいと語るのを優先し、続いてはワイナリーのメインゲートそばに広がる、自分がいま立っている畑についての話をした。

公式なキレイな写真はこちらです

「いまは一年のなかでも、とても大切な時。ブドウ栽培の始まりです。いま何をするかで、次の収穫がうまくいかなくなってしまうこともありうる、デリケートな時期です。ブドウの健康に気をつけながら、収穫量を多くしすぎないように、と準備をしていきます。」

「私たちはワイン造りにおいて、ナチュラルな選択をするようにしています。2つの大きな原則があって、ひとつがサステイナビリティ。私たちのワインはすべてオーガニック認証を取っています。もうひとつがテロワールを大切にすること。地所自体は非常に広いんです。山から谷まで、1100haもの敷地があります。その中から、どこにどのブドウを植えるかを、選んでいます。」

「見てください、こちら側が山です。山側の上の方は岩がちで乾燥している。サンジョヴェーゼに向きます。山からすこし降りてくると、土壌がかわり、カベルネ・ソーヴィニヨン向きになる。そして、私が立っているこの畑のあたりにくると、もっと砂っぽい。ここもカベルネ種に向いています。山の裾野は砂利っぽい土壌で、そこはシラーが素晴らしい。その先に粘土質の土壌があり、メルローにとって理想的です。」

カメラが振り向くとそこは山で
サルヴァトーレ氏の足元は、やや砂質の土壌

このあたりはライブならでは。カメラがサルヴァトーレ氏の話を追従するから、どこに何があるのかを話者と同じ視点で見ている気持ちになる。

そして、そんな話をサルヴァトーレ氏がしているあいだも、参加者は次々とコメントしてく。

「いまそちらは何時?」「お天気がいいみたいだけれど、気温は?」「やはり畑で飲むワインは格別?」「なんで畑の畝に草が生えているの?」

それにサルヴァトーレさんは丁寧に返事をしていく。ちなみに、草が生えているのは、いわゆるカヴァークロップなどと呼ばれるもので、あえて雑草などを残すことで、土の栄養や水分のバランスをとり、土壌を柔らかくするといった効果がある。害虫よけになる場合もある。イル・ボッロのような自然なブドウ栽培をおこなう生産者にはいまや定番の手法だ。

畑の総面積は85haほどだという。一瞬、小さいように感じてしまったのは、筆者の画面の小ささゆえか、1100haの敷地、と聞いたあとだったからか……

宿泊施設はルレ・エ・シャトーです

「では次はこちらに」

サルヴァトーレ氏は、訪問客を案内するように、ゴルフカートのようなクルマにのって、ワイナリーへの移動を開始する。

ボッロ村では、村内の電力は太陽光発電で、必要量の3倍を生み出し、家畜の餌も、村内で手に入るもので用意されているそうだ。村で完結した環境を目指している、とのこと。ゆえの電動カート、という側面もあるのだろう。なにせ、ワイナリーのメインゲートこそ、先程の畑からそう遠くない場所にあるものの、そこからワイナリーまでが、通常の自動車の恩恵を感じられる程度には長いのだ。ちなみに、想像通り、ゲートの先には馬もいた。

畑からワイナリーがあるという門まではすぐ
その門にはルレ・エ・シャトーの紋章がある

メインゲートには「ルレ・エ・シャトー」のマークがある。つまりここには、世界最高峰のホテルとレストランもある、ということだ。

石畳の並木道を抜けて、パステルカラーの可愛らしい建物が点在する広場へ。ピンク色の建物はホテルで、10の客室がある、とのことだ。冬の朝。小鳥がさえずっている。

「トスカーナの宝石をお見せしましょう。私が、惚れ込んでいる景色です」

それは、高台から一望できるボッロ村だった。ワイン「イル・ボッロ」のラベルに描かれている風景だ。

「中世からある村。この村のなかにも、38の中世のヴィラを改装した宿泊施設があります。それらもルレ・エ・シャトーですよ。ほかではできない体験ができます。」

「今日はいいお天気で、これを見せられてよかった。この風景をみると、やっていてよかったとおもいます。私たちのワインは、たしかに、世界中で高い評価を獲得しています。自慢の、世界一のワインです。ただ、ワインだけではないんです。この場所の経験のすべてが私たちがやっていることです。中世の人の手によって建てられた建物がいま、宿泊施設となり、私たちのアンドレア・カンパーニ シェフがオーガニックガーデンで育てた野菜や小麦、ハーブで料理をつくるレストランがあり、庭があり、オリーブオイルがある。パスタ、トマトソース、ハチミツ……ここでできたものたち。それらが、ここを訪れてくれた方にとって、唯一無二の体験となる。ワインはそういったもののひとつなのです。」

と、ここで、村の教会の鐘が鳴り響く。なんて素晴らしい世界!  サルヴァトーレ氏がいま語ったことこそ、イタリアの贅沢だ。

このイル・ボッロは、ワインを造りを、村造りからやっているワイナリーとも言えまいか、と考える。いや、やっぱりもっとおおらかに捉えたほうが、きっと人生は楽しいだろう。

イタリアの粋なワイン

さて、旅はこのあと、サルヴァトーレ氏がセラーへと案内してくれて、ワインのテイスティングへと向かっていく。

案内してくれたのは300年以上使われているというトンネル状のセラーだった。こちらには、中世の建物を改修したセラーが接続していて、サルヴァトーレ氏はテイスティングのため、そちらへと歩みを進めた。

そして、これとは別に、村の円形劇場の地下に、2020年のロックダウン中に完成したという新セラーがある。新セラーにはシャンパーニュ同様の動瓶台や、地元の職人が造ったというアンフォラもある。

トンネル状の旧セラーと
それに接続した、中世の建物を改修したセラー。テイスティングはこちらで行われた。

テイスティングしたワインは冒頭に記したとおり、2種類。

まずはラメッレ 2018年。シャルドネ100%の白ワインだ。

日本の日本料理店で飲んだ、シャブリのシャルドネ、いわゆる「寿司にシャブリ」に感動して、和食に合うワインを目指しているという、この、ラメッレ。

このときのシャブリ同様、樽を使わず、ブドウがもつミネラル感を重視しているとのことだ。

試してみると、香りは、柑橘よりも、リンゴやカリンなどバラ科の果実のイメージを筆者は感じた。サルヴァトーレ氏が言うように、パイナップルのような香りも感じられる。口当たりはとてもまろやかでなんとも優しいけれど、その実、アルコール度数は13.5%と、白ワインとしては、十分にしっかりとしており、余韻に至るまで、上質で、エレガンスもあるけれど、弱さがない。インナーマッスルがしっかりしている印象だ。

続くは、イル・ボッロのフラッグシップ イル・ボッロ 2016年。メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーのブレンド。グラスに注ぐと、まず、香りが魅力的だ。サンダルウッドやヒノキなど、木やハーブの香りがするオーデコロンのよう。口に含むとどきっとするほど優しい。きちっと目の揃った上質な布地、上等なウールのスーツ地のようなイメージだ。アルコール度数15%のこのワインは、ピリッと辛いほど芯がしっかりしているけれど、まろやかながら主張のある酸味のおかげか、さわやかさもある。タニック、ジャミーという印象はあたらない。

ラメッレでも感じたことだけれど、いい香りがして、身だしなみに清潔感があって、服装はこれみよがしではなく上質で、謙虚だけれど、頼りがいがある。男が憧れるかっこいい男性像が思い浮かぶ……

画面の向こうのサルヴァトーレ氏のようだ、というと、なんだか文章として作為的すぎる気がするので、そんな結論は持ってきたくないのだけれど、ファッションデザイナーの同名のおじいさんが、そして、サルヴァトーレ氏の一族が、いいとおもうことが、このワインにはしっかりと反映されているのだろう、とおもえて仕方ない。

参加者からのコメントや質問も殺到して、それにサルヴァトーレ氏が返事をしているうちに、1時間半の予定をちょっとオーバーしたイル・ボッロへの旅。

旅の終わりに「今日、参加してくれた皆さんにプレゼントで」とサルヴァトーレ氏が言っていた、フードペアリングと、先述の出来たばかりの新のセラーを紹介する動画が、イベント終了後、ほどなくしてエノテカを経由してやってきた。また、この連絡と合わせて、イベント内で返答できなかった質問への返答もなされ、この時の参加者限定で、イル・ボッロのワインがちょっと安く購入できるという、おまけもあるそうだ。

よいホテルは、予約するところから最高のおもてなしがはじまり、ゲストが家に帰ったあとまで、それは続く、という話を聞く。さすがは一流、といったところだろうか。ほんの少しの時間の、オンラインでの旅であっても、イル・ボッロにとっては、この程度のホスピタリティは、当然なのだろう。

エノテカによる「オンライン・ワイン テイスティング イベント」は今後も続くというけれど、初回がこれでは、ハードルが高くなりすぎではないか? と要らぬ心配をしてしまう筆者であった。

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