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ブドウ品種名を記載した ボルドーワイン……だと!?

ボルドーは古典ではない

ボルドーワインと言えばアッサンブラージュ。つまり複数のブドウ品種のブレンドが特徴。なのですが、単一品種のワインだってもちろんあります。ただ、品種名はラベルには書いていないもの。とおもったら、ありました。品種名の書かれているボルドーワイン。

しかもボルドーワイン委員会のお墨付き

ボルドーのワインは、使用したブドウ品種名をラベルに記載しないのがお約束。

ここに並ぶワインは3本が3本とも由緒正しきボルドーワイン、なのに「メルロー」「カルメネール」「プティ・ヴェルド」との表記が。あれれ??

左から「ヴィニョーブル・シオザール イプサム 2018」「シャトー・ルクーニュ キュヴェ・カルメネール 2014」「シャトー・ベルヴュ プティ・ヴェルド・バイ・ベルヴュ 2018」。どれもラベルに品種名が記載されており、その品種を100%使用。

気候と土壌に恵まれ、紀元前からブドウ栽培が行われていたボルドー。彼の地のワインは各国の王族たちの間で人気爆発、フランスとイギリスが激しく産地を獲り合った史実もある。

当然、ワイン界で昔も今も最高峰のワイン産地として君臨しているわけだが、当のボルドー人から「いやいや、伝統ってのは革新を続けている結果で」と説明されても、分かったような、分からないような。表向きはそう言いつつ、昔ながらの造りを変えない保守派が大多数では? そもそも革新を志す人は、伝統を守る人たちから疎まれるのが世の定番。品種名を記載しない慣習のあるボルドーにおいて、この3本のワインをリリースした人たちはさぞかし居心地が悪かろう、と勝手に心配していたらば、なんと、これらは御本家ボルドーワイン委員会のお墨付き。

「ボルドーにもモダン派ワインあり!」とのメッセージとともに委員会が推挙したアイテムなのであった。

思い返せば、自然環境へ配慮したワイン造りに着手するのも、ボルドーは他の産地に比べてひと際早かった。

20世紀末からボルドーワイン委員会が生物多様性の維持や廃棄物の再利用などに努め、現在はフランス農水省による環境価値重視認定(HVE)取得数1位、ボルドー全体のうち65%が何かしらの公的認証を取得している。

世界のトレンドにピタリとハマるボルドーワインも次々と登場。菜食主義者の増加を踏まえてビーガン・ワインを手掛ける生産者あり、そしてひと目で分かるラベルを目指してブドウ品種名記載に踏み切った生産者あり。

付け加えるならば、ここに紹介する3本は、ただ品種名を記載しただけに終わらず、どれもヒネリが効いている。

メルロー100%の「イプサム」はSO2無添加。「健全なブドウを選別して使用すれば、自然に発生するSO2のみでワインは完成します。まるで“砂糖を添加しないジャム”のように」と語る、ドメーヌ・シオザールのダヴィッド・シオザールさん。この喩え上手。

「そういえば、トヨタからイプサムという名前のクルマが出ていた」と伝えたら「えっ、知らなかった。なら、日本の皆さんにはクルマと一緒にうちのワインも楽しんでほしい。あ、大企業のトヨタと、うちみたいな小さい家族経営と一緒にしちゃ申し訳ないか(笑)」

「プティ・ヴェルド・バイ・ベルヴュ」は、樹齢80年のプティ・ヴェルドを使用し、一部がアンフォラ(粘土で作られた素焼きの大きな壺)熟成。

「果実味豊かなのは、ゆるやかに空気を通すアンフォラのおかげ。晩熟で敬遠されてきたプティ・ヴェルド種ですが、このボルドー系品種の価値を世界へあらためて発信したい」と、シャトー・ベルヴュのヤニック・レーレルさんは語る。

「キュヴェ・カルメネール」を手掛けるシャトー・ルクーニュの当主、マルク・ミラドさんは、カルメネール種の復旧に尽力した父親の志を継ぐ。

収穫時期の見極めが難しく収量も少ない品種だが、「チリのカルメネールとも、ボルドーのカベルネとも違う、よく熟した胡椒の香りが特長です」とミラドさん。飲み頃を迎えた2014年物は、胡椒のみならずグリオットのニュアンスすら感じさせる。ピノ……いや、ボルドーのカルメネールでグリオットとは。

さすがボルドー。いつでも新鮮な驚きを発見できる産地なのであった。

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