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おいしさの秘密は〝デナミザシオン〟にあり!

シャトー ル・ピュイ13代目ジャン=ピエール&フランソワーズ・アモロー夫妻

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ジャン=ピエール・アモロー::シャトー ル・ピュイ13代目当主。ル・ピュイのあるサン・シバール村で生まれ育ち、学校卒業後、貿易業に従事。のちにシャトーに戻り、かつては父ロベールと、現在は息子パスカルと共にシャトーを運営する。

島から戻ったワイン

では、最も良いエネルギーを受け取れるタイミングは? 彼と息子のパスカルさんは10年かけて研究を重ね、独自のビオディナミ・カレンダーを作成した。カレンダーは1990年から使い始め、すべての作業に活用している。販売したら売れるに違いないが、残念ながら非公開だそうだ。

ル・ピュイは近年、新キュヴェを増やしている。従来からあり、2000年ヴィンテージから「エミリアン」と名付けられたものが、現在のメイン・キュヴェだ。1994年からは特別な区画のブドウを使用し、発酵および瓶詰め前も含めて亜硫酸を一切添加しない「バルテルミ」が、2000年から辛口白ワインの「マリーセシル」が、2011年からはロゼの「ローズ・マリー」が生産されている。「マリーセシル」も「ローズ・マリー」も亜硫酸無添加。他に、 複数のヴィンテージをアサンブラージュし、11年間熟成させる「ブレーズ・アルベール」、特別な年にしか生産されない希少な甘口白の「マリー・エルザ」などのキュヴェもある。ちなみに「エミリアン」以外は、すべてデナミザシオンが行なわれている。

さらに、ロマンあふれる新キュヴェが間もなく誕生する。動力源を積載しない昔ながらの帆船の船底にワイン4樽を載せ、波の揺れで9カ月間熟成させるというもの。2012年にスタートしたプロジェクトで、フランスを出発した船は、アフリカ大陸の南側、南米、カリブ、北欧を回り、今年(2014年)6月にフランスに戻る。樽には「バルテルミ」のキュヴェが詰められているが、「ルトゥール・デ・ジル(島から戻ったワイン)」という名前でリリース予定だ。

英国がフランス・ボルドーを統治した15世紀は、航海技術に優れた英国の船がフランスのワインを支配していた。のちの戦でフランスが勝利すると、フランスは英国の船をボルドーから追い出す。しかし当時のフランスには海運技術がなく、ワインは陸路で運ぶことに。すると運搬前後のワインの味の違い、陸路と海路とでの違いが見えてきた。つまり、船で運んだほうがワインはうまくなる、と。そこで、ボルドーの人々はワイン樽を船に載せ、2、3カ月回遊させた。彼らをこれを「ルトゥール・デ・ジル」と呼んだ。ル・ピュイはこの故事をヒントにしたのだ。

海での回遊と美味の関係を解くカギは、やはりデナミザシオン(活性化)にある。ル・ピュイの赤は基本的に2年熟成させ、その間は1週間に1~3回、10~15分ほどかき回す。船底に積んだ樽は波の動きで揺れ、渦がワインに自然発生する。波によるデナミザシオンだ。洋上では嵐もあれば、温度変化もある。すべては自然のカレンダーのまま。

「さまざまな環境の記憶が残ったワインは、この先は環境の影響を受けにくくなるんだ」。

海のエネルギーがワインを育み、鍛える。

「ル・ピュイは、何も加えない、本物で正しい定義のワイン。しなやかさ、エレガントさがあり、飲んでいやなものが残らない。どんなタイミングにも合い、気持ちよくなりたい時に飲んでいる。我々はワインを造っているのではなく、おいしくて、幸せな時間をつくっている。おいしいから飲む、幸せになるから飲む」。

幸福な無限ループ。

「わたしたちはワインを、仕事と思っていないの」。

ジャン=ピエールさんに寄り添い、微笑む奥様のフランソワーズさんの言葉が、すべてを包み込んでいく。

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