実力伯仲! 僅差の戦い
野坂 まず今回のブラインドテイスティングでいえるのは、どれも素晴らしいワインであった、ということ。
全員 本当にそうですね。
太田 2004年のベルリン・テイスティングを思い出しました。
野坂 今回のブラインドテイスティングで私は、評価のポイントとして、現在のパフォーマンス、今後の将来性、そしてバリューというところに特に重点をおいて判断させて頂きました。しかし、対象となった6本はどれも僅差で、スコアをつけることが難しかったですね。
田邉 テーマがボルドーブレンドということだけれど、その中でもさらに方向性が全体的に似ていましたからね。
太田 やはりトップのワインは、志向するところも近似するのかもしれませんね。
田邉 まさに今回の6本には、「実力伯仲」という言葉が相応しい。
井黒 もし、5段階評価をしたなら、6アイテムすべてが、5だったでしょうね。
太田 本当に、点数の差をつけ辛かった。僕の場合、最高点と最低点が6点しか離れていないのですから。したがってこのブラインドテイスティングで重要なのは、「内容として意義がある」ということ。ナンバーワンでなくオンリーワンのワインたちでしたからね。
野坂 それは本当にそうでしたね。
田邉 僕は最高点と最低点が4点しか離れていない。それだけ、それぞれのワインの実力が差し迫っていたということでしょうね。
比べることで見えてくるワインの世界の「今」
井黒 今回はボルドーブレンドというテーマでしたが、こうして世界の産地を試飲して比べてみて、改めて、いろいろなことが見えてきたように思います。
野坂 まずボルドーからの2アイテムは、他のワインと比べてヴィンテージの影響から熟成感、複雑さがでていて「オールドスクール」的な要素も感じられました。
太田 僕は、イタリアのサッシカイアが、この中ではちょっと系統が違っていて、しかしそれは本当にささやかな違いなのですが、そこが面白かったですね。
野坂 ボルゲリの良いところは、旧大陸のボルドー的な良さを持っていながら、その一方でニューワールド的な良さも兼ね備えている、というところですかね。簡単にいえば、果実の熟度の高さと、酸の上品さのバランスがとれており、均整のとれたストラクチャーである。そう考えると、ボルゲリの産地の個性が見えてくるのかなと思います。
太田 ブラインドテイスティングにおいて、ボルゲリらしさ、というのはどういうところから窺えば解りやすいのでしょうか?
野坂 フルーツの熟度、タンニンと酸味の質、それらが形成するストラクチャー、バランスを1つの指標でとらえていますが、私も今までさんざん、ブラインドでは間違えてきましたよ(笑)
井黒 どちらかというと消去法なのでしょうね。「ボルドーではない」「ナパでもない」「では、ボルゲリだ」と。
田邉 全部がハイエンドでファインワイン。それらをあえて比較することで、それぞれの個性がさらに明確に見えてきた、というところが眼目です。『シャトー・ポンテ・カネ』からはボルドーにおける先進的な取り組みが窺えた……
井黒 『シャトー・モンローズ』も、そうでしたね。
太田 案外、現在の流れでは、ニューワールドのファインワインは抑制的な造りですから、かえってボルドーのワインを「チリの高級ワインかな?」などと思ってしまったりして(笑)
野坂 造り手が今の産地特性を熟知し、目指すワインの方向性が明確にできているんだと思います。
井黒 ともかくも、比較することで、それぞれの良さは際立ちます。その中でも、チリワインの上品な雰囲気とプライスの良さは、とても印象的でした。
チリの健闘が目立ったオンリーワンの戦い
田邉 たしかに、実力伯仲の戦いにおいて、「ヴィーニャ・エラスリス」の『ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・レゼルヴ』は、健闘しているな、という印象が強い。
太田 価格的にも、最も高いワインから比べてかなりの開きがありますよね。
井黒 要はバリューが高い、ということですね。僕は、グラスワインとしてチリワインをよく使うのですが、特にレストランでは、こういうファインワインの使い勝手がとても良いのです。価格帯に幅をもたせやすく、かつ高品質。ドン・マキシミアーノはそういった意味で、とても理想的なワインということができます。
太田 ことにチリワインは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでも買いやすく、裾野が広がっている。そうした廉価なものがある一方で、ハイエンドなセーニャや、それを追うドン・マキシミアーノなど、また違う世界観の表現も見られる。僕たちも、お客様へのご提案として、オプションとしてのハイエンドなチリワインを持っていないといけないな、と痛感しました。
編集部から
こうして常に世界のトップレベルにあるワインをブラインドテイスティングしてみると、最終的な点数は僅差であり、最初に書いたとおり、優劣をつけるためのものではない。各
コメントからもおわかりのように、ワインの個性「テロワール」の魅力に辿り着く。『サッシカイア』は「ボルゲリ」、『オーパス・ワン』は「オークヴィル」、そして『ドン・マキシミリアーノ・ファウンダーズ・レゼルヴ』『セーニャ』は「アコンカグア・ヴァレー」という素晴らしいテロワールから生まれている。カベルネ・ソーヴィニヨンという品種をもって、その土地の特性を十分に引き出し、それぞれのワインが独自の輝きと魅力を放っていることが、今回のテイステイングから導き出された一つの答えだったともいえるだろう。
採点表
2オーパス・ワンオーパス・ワン2016カベルネ・ソーヴィニヨン77%、プティ・ヴェルド8%、メルロ8%、カべルネ・フラン5%、マルベック2%アメリカカリフォルニア(ナパ/ オークヴィル)65,000円3742セーニャヴィーニャ・セーニャ2017カベルネ・ソーヴィニヨン52%、マルベック15%、カルメネール15%、カベルネ・フラン10%、プティ・ヴェルド8%チリアコンカグア・ヴァレー22,500円3744サッシカイアテヌータ・サン・グイド2017カベルネ・ソーヴィニヨン85% 、カベルネ・フラン15%イタリアボルゲリ25,000円3735ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・レゼルヴヴィーニャ・エラスリス2017カベルネ・ソーヴィニヨン67%、マルベック12%、カルメネール8%、プティ・ヴェルド7%、カベルネ・フラン6%チリアコンカグア・ヴァレー10,000円3726シャトー・ポンテ・カネシャトー・ポンテ・カネ2012カベルネ・ソーヴィニヨン65%、メルロ30%、カベルネ・フラン4%、プティ・ヴェルド1%フランスボルドー(ポイヤック)20,000円364
順位 | ワイン名 | 生産者名 | ヴィンテージ | 品種 | 生産国 | 生産地 | 参考上代(税別) | 総合点数 |
1 | シャトー・モンローズ | シャトー・モンローズ | 2013 | カベルネ・ソーヴィニヨン68%、メルロ29%、カベルネ・フラン3% | フランス | ボルドー(サン・テステフ) | 17,400円 | 376 |